つんく♂が救っていたスマイレージの危機 衝撃告白から3カ月…つんく♂とハロプロらしさの謎を紐解く

つんく♂の声帯切除発表から、早いもので3カ月が経った。発表直後から今に至るまで、声帯を失ったつんく♂がどのような形でHello!Projectに携わっていくのかという問題には多くの関心が寄せられている。現状として、ハロプロに関することでのメディア出演回数、ハロプロユニットへ提供する楽曲数は減っているものの、引き続きハロプロには関わっていくようで、私としては一安心している。これに加え、つい先日のことになるが、7月3日東京ドームの楽天―日本ハム戦の始球式にも登場。ノーバウンドの剛速球を披露し、“体は元気”なことを証明してくれた。これにも一安心、私を含むつんく♂ファンにとってはうれしい限りだ。

他方ハロプロに目をやると2015年上半期はつんく♂不在の中、様々な出来事があった。つんく♂の体調が全快したとしても、ハロプロにおけるプレゼンスは低くなってゆくものとみられる。ハロプロ全体がつんく♂一人に依存しない仕組みに移行する必要があること、体調を考え仕事の量はセーブしつつになること、この二つを考えれば妥当だろう。

つんく♂の病気など誰も予想しなかった頃は、つんく♂とハロプロは表裏一体だと信じて疑わなかったが、ハロプロが続く限りつんく♂が居るという前提はいとも簡単に覆った。そして3か月という短い期間ではあったが、私たちは“つんく♂不在を前提としたハロプロ”を見てきた。これらを踏まえ、本記事ではつんく♂とハロプロらしさの謎を紐解いていく。ついては、ハロプロらしさとは何か?つんく♂が居なくなってもハロプロなのか?という曖昧でありながら、避けることのできない問題にヒントを与えてくれる、ある一連の出来事を振り返りたい。

 

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スマイレージの2期オーディションの前後の流れを再検証したい。早速その流れを追っていこう。

スマイレージ2期オーディション開催の発表があったのはメジャーデビュー1周年イベント(2011年5月29日@ヴィーナスフォート)であった。ビデオレターで、勿論つんく♂直々にである。そのビデオレター中で当時やたらとひっかかったのは「スマイレージには何かが足りない」というイマイチ釈然としない理由であった。「このままで充分魅力的なグループなのに・・・」と首をかしげるファンは多かった。当時からスマイレージのファンであった私も、突然の発表に戸惑った数多くのファンのひとりであった。それでも、あらゆる感情を“棚上げ”し、前を向くのである。このような急なメンバー追加や脱退はハロプロのファンにとっては洗礼のようなものであり、ファンは新しいメンバーに対する期待を胸に再び前を向くものなのだと。かくして、モヤモヤする気持ちはつんく♂の謎の説得力により一旦“棚上げ”された状態となった。

その後2期オーディションが予定通り行われた。その過程はテレビでも放映されたが、結果として、現在のアンジュルムを牽引する素敵な4人が加入してくれたのである。(あの時“棚上げ”された気持ちは消え、2期が加入してくれて本当によかったと思っていた。気付かぬうちに。)ところが、衝撃的な発表があったのは2期メンバー発表直後(正式にはサブメンバーとして)であった。小川紗季(元スマイレージ 2011年8月27日 同グループを卒業)のスマイレージ卒業が発表されたのだ。

同じ日に、驚きの本質こそ違えど、さらに衝撃的な出来事があった(注目したいのは寧ろこちらである。)。つんく♂がブログにて、2期オーディションの発表の前に、既に小川紗季からの脱退の申し出を受け、了承していたことを明かしたのだ。

この“タネあかし”によって、2期オーディション開催が告げられたビデオレターで不可解であった「スマイレージには何かが足りない」の本当のイミが浮かび上がったのである。言い方は悪いが、小川が辞めるのでオーディション開催します、とは表立っては言えないため建前として用意した理由であったということを認めたとも言える。つまりは、2期オーディションと小川の卒業が結び付いたときに予想されるあらゆる批判から彼女を守るため、グループ内部の事情を自分のつんく♂イズムの中に閉じ込めてしまったのである。この見方にしたがえば、つんく♂は、スマイレージ(現アンジュルム)に訪れた存続の危機から、自らのキャラクターを巧妙に活かしたカラクリでグループを救っていることになるのだ。

 

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“独特の感性を持ったカリスマ的存在”というつんく♂像は、メディアの見せ方が一役買ったこともあり、その言動には謎の説得力があった。何が飛び出すかわからない、中身がどうなっているかもわからない、まるで“つんく♂ブラックボックス”である。特にそれがオーディションなど重要な場面で発揮されると、あまりの独特さゆえにファンはハラハラドキドキさせられるが、おもしろい結果に転がることが多く、それがハロプロらしさの一つの側面であったのは確かだ。見逃されがちではあるものの、それと同時に “ハロプロメンバーを守る傘”として機能していたのも既に述べたエピソードが証明している。

これまでの話を踏まえ、さらに論を展開しよう。この“つんく♂ブラックボックス”の二次的な産物が、プレイヤーファーストの環境であると私は推測する。直訳すれば“プレイヤー=演じる人”、“ファースト=第一に”となる。つまりは、ハロプロメンバーが演じることを第一に考える環境が整っているということだ。ハロプロメンバーのステージに対する情熱、そのひたむきさ、潔さは、これもまたハロプロらしさである。ただ実情は、ステージで表現する難しさと、それ以外の様々な難しさ(詳しくは書かないが)、両方あるだろう。ハロプロメンバー自身は前者に注力し、後者は“つんく♂ブラックボックス”が何とかしてくれる、そういった分業がプレイヤーファーストの環境を整えていた側面も少なからずあるのではないか?私たちファンが極めてピュアな手法によって表現されるステージに心動かされていたのは、この謎の説得力のおかげではあるまいか?振り返れば、ちょっと懐かしいあのCMも深読みすると、こういうハロプロっぽさネタに作られていた。

“伊達じゃないよ 「大人の事情や!」は”である。

 

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さて、つんく♂とハロプロらしさについての考察を進めてきた。非常に掴みどころのない“ハロプロらしさ”というものをつんく♂のキャラクターを軸とした要素に還元することで、ちょっとだけ、その本質を捉えられたのではないだろうか。ファンの愛するハロプロらしさが完成する過程には、つんく♂の存在が大きかったのは間違いないようだが、つんく♂不在が予想される今後も継続しそうな点、継続してほしい点を明らかにできたことはポジティブだ。

書き出してみて気付くのは、独特で予測しがたいつんく♂の言動も、ある程度の計算に基づいているのではないかということだ(どこまでかはわからないが)。計算とはいえイヤな感じのするものでは断じてない。これにより自らが傘になり、頑張れよとハロプロメンバーをステージに送りだしていたのだ。そしてやはり、ステージに集中できる環境があり、そこで輝いてこそハロプロ。そこだけはつんく♂が居ようが居まいがブレずにいてほしいなと思うのである。

 

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最後にあとがきを。

ハロプロメンバーで初めて“分業”ではなく“兼業”に挑むのが、カントリー・ガールズPMのももち。その難しさに今ちょうど直面しているところであろう。偉大なチャレンジを選んだ彼女をこれまで同様に応援したい。彼女のキャラクターを考えれば、“ももちブラックボックス”・・・いや、“ももち♡ピンクボックス”も作れそうなものである。ところでつい先日YouTubeにアップされた「わかっているのにごめんね」を視聴した。カントリー・ガールズのとってもとってもかわいい後輩メンバーに囲まれながら、その中でもとびっきりかわいいももち先輩、最高でした!

わかっているのにごめんね/カントリー・ガールズ(Promotion Edit.)

(文=puke)

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