【楽曲レビュー】『次々続々』~和田彩花は「守る」ために「壊す」~

アンジュルムのリーダー和田彩花は、2016年のカウントダウンコンサートの場で、矢島舞美からハロー!プロジェクトのリーダーのバトンを受け取った。

「私は……、私ですよ?こんな私が、ハロー!プロジェクトのリーダーだなんて、もう、なんか、考えられないっていうか、私は普段あの、変な人たちを連れているんです。この人たちのリーダーなんですけど、そんな私がやっていいのかって不安はありますけど、でも、私はハロー!プロジェクトが大好きなんですよ!だし、ずっとずっと小さいころから見てきて、今でも憧れなので、やっぱり先輩方がこうやって繋いで来て下さったハロー!プロジェクトを守っていきたいと思いますし、守るだけじゃなく、あたらしい形として、ハロー!プロジェクトをアンジュルムで引っ張っていきたいなと思います。いい意味で、アンジュルムがハロー!プロジェクトの枠を壊していけたらいいなと思います。みなさん、応援よろしくお願いします。」(以上書き起こし)

「ハロー!プロジェクトが大好き」と口にした瞬間、矢島舞美の紹介を受けて不安げだった表情は一転、キラリとほころんだ。ファンとして新たなハロプロリーダーについていきたい理由としては、これだけで充分だが、実は言葉の端々には大きな、そして考えに考え抜かれたビジョンが見え隠れしていたりして。今でこそ、さほど注目度の高くないスピーチもといMCでの一幕だが、実は今後のハロー!プロジェクト史に語り継がれうる場面ではなかろうか。

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書き起こしの一部を太字にして強調してみたが、和田彩花の言っていることは、1.ハロプロが大好き、2.ハロプロを守る、3.ハロプロを壊す。2と3は「守る」と「壊す」の二律背反である。「守る」ために「壊す」ということであろう。そして和田彩花自身、難解なことを言っているとは承知のはずだ。

ハロー!プロジェクトはまもなく20周年の節目を迎える。蓄積された膨大な楽曲群は、ゆうに2000曲を超えるし、歴代メンバーを数えてみれば100人以上が在籍していたことになる。いつしか、ハロプロを知らない人が聞けば、尻込みするような数字が出てくるようになってしまっていた。ここで、それじゃあ大好きなものだけど、思い切って壊してみようという発想に行き着くわけだ。つまり発言の意図は、アンジュルムがハロプロの新しい顔としてトップに躍り出て、もう一度ハロプロ内外に訴えかけてみようという覚悟の表れで、その命題のためなら、和田彩花の知る従来のハロプロの姿を変化させることも厭わない。ここまで考えに考え抜いたビジョンを念頭に、発言したに違いない。

そして、おそらくはスマイレージからアンジュルムへの改名・増員という経験に裏打ちされた発言とも言えよう。逆に言えば、この改名・増員の過程で主体的に舵を切ったのは、和田彩花本人だった、本人の意思がしっかり介在していた、とも察せられる。その後のアンジュルムが『大器晩成』に代表された秀逸な楽曲を帆として、風をめいっぱい受けて力強く進んでいるのことは、ご存知の通り。そして生まれたハロプロリーダー就任のスピーチ。経験上、大好きなものでも「壊さ」なければ「守れ」ないと知っているのだろう。弱冠22才にしてこの胆力。ファンとして、ますます信頼してついていきたい。

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横一列に整然と並んだフォーメーションに、一定の間隔を保ちつつ踏み鳴らされる足音。一切の昂揚を見せぬほど統率されたその姿は、戦いに向かう戦士さながら。そして音楽によって解きほぐされるように、抑圧されていた昂揚は、闘志あふれるパフォーマンスへと昇華される。『次々続々』は、敵などどこにもいないのに、あたかも見えない敵と闘っているようである。(余談だが筆者は、必ずと言っていいほど、ゲキハロ第13回公演「我らジャンヌ~少女聖戦歌劇~」で和田彩花の演じたジャンヌ・ダルクが自然と思い出される。和田彩花は集団を率いる姿が似合うのだ。)

『次々続々』の見えない敵と戦っている感が、和田彩花の「守る」ために「壊す」という持論とどこか通底しているモノがある気がして、最後に触れた。

アンジュルムは、和田彩花のハロプロリーダー就任後の一発目の曲として、アンジュルムがハロプロの枠をぶっ壊す大義名分はそろったとばかりに、この『次々続々』を選んだ。そして「変わり続けられるような勇気 変わらぬままそこにある真理」と歌った。

(敬称略)

(文=puke)

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