モーニング娘。’17、10期メンバーである工藤遥が、モーニング娘。およびハロー!プロジェクトを卒業する。
列島を揺るがせた衝撃のお知らせの震源地は、2017年4月29日、ロームシアター京都 メインホール。この日、モーニング娘。’17 は、2017年の春ツアーである『モーニング娘。’17コンサートツアー春〜THE INSPIRATION !〜』の京都公演の日程を順調に消化していたところだった。
このロームシアター京都 メインホールの昼公演にて、2017年の秋ツアーをもって、工藤遥がモーニング娘。およびハロー!プロジェクトを卒業することがアナウンスされ、この告知と同期するかのように、公式サイトにもお知らせが掲示された。
モーニング娘。’17の工藤遥が2017年の秋ツアーをもってモーニング娘。’17、
そしてハロー!プロジェクトを卒業することになりました。
オフィシャルサイト ニュース モーニング娘。’17 工藤遥に関するお知らせ より
モーニング娘。は、いわゆるプラチナ期とされる時期にしばらくメンバー構成が安定していたようでいながら、2010年に6期メンバー亀井絵里、8期メンバー、ジュンジュンとリンリンの3名が卒業するや、以降、毎年卒業者を出していた(2011年 高橋愛{5期}; 2012年 新垣里沙{5期}、光井愛佳{8期}; 2013年 田中れいな{6期}; 2014年 道重さゆみ{6期}; 2015年 鞘師里保{9期}; 2016年 鈴木香音{9期})。
13期メンバーを迎えた2017年も、誰かが卒業するのではないかと多くのファンは無意識に身構えていただろう。
しかし、先輩である9期メンバー(譜久村聖、生田衣梨奈)や、最年長メンバー(飯窪春菜)を飛び越えて、工藤遥が卒業するというお知らせには、まったく予想外だったファンも多く、衝撃のアナウンスとなったようだ。
しかし、モーニング娘。の正規メンバーとして抜擢されてからでも5年半、エッグ時代を考慮に入れるなら、すでに8年に近い芸能人生を送っている工藤遥。普通の少女では経験できない濃密な時間であってみれば、多くのファンが「まだ若いのに」と感じる年齢ではあっても、率直に、自分の人生をふり返るだけの内実を保った時間を積み重ね来たと言って良いだろう。
だからこそ、当人の次の言葉も、深刻に響くし、真摯に受け止めるべきだろう。
「モーニング娘。という将来の夢を叶えた後は何がしたいのか?」という悩みが生まれました。
オフィシャルサイト ニュース モーニング娘。’17 工藤遥に関するお知らせ より
工藤遥といえば、そのボーイッシュなイメージや愛らしい顔立ち、ぐんぐん伸びた身長、加入時から大幅に体格が変化しているにも拘わらず、グループのパフォーマンスを乱さぬステージスキル、そして「喧嘩が強い」幼少期からの「イキっていた黒歴史」など、多彩な魅力に溢れたメンバーだが、何より、バックステージのモーニング娘。の状況を適切に言葉にしてくれる “語り部” として得難いメンバーであった。
道重さゆみが卒業して、初めて9期、10期がトップになって迎える2015年の春ツアーで、初日を迎えて涙するメンバーたちを指して「みんな不安だった。道重さん、いなくなっちゃったから」と述べていたり、リーダーになった譜久村を評して「譜久村さん、恐くなった。きっと、言わなきゃいけないことを言おうとしてるんだと思う」と語ったり、「まーちゃん、なんか機嫌悪いなと思ったら、嫉妬してた(笑)」と、映像では表現しにくいメンバーたちの微妙な機微を伝えてくれたりと、工藤遥はバックステージの DVD Magazine での貴重な語り部であった。
また、天真爛漫すぎる「まーちゃん」こと佐藤優樹に嫉妬されるほど、相方として慕われ信頼されてもおり、そんな工藤遥が卒業することによって、残された佐藤優樹がどうなっていくのか心配されてもいる。さらには、そのボーイッシュなイメージからか、ハロメンの中でも工藤遥推しのメンバーが多いことでも知られており、モーニング娘。だけではなく、ハロー!プロジェクトからも卒業してしまうことによって、ハロプロ内に走る動揺も大きそうだ。
そう、語り部を失ってモーニングのDマガはどうなってしまうのか、大事な相方を失って「まーちゃん」はどうなってしまうのか、ハロメン随一のイケメンを失って、ハロプロ内に走る動揺をどう鎮めるのか……すでに、斯界の懸念の焦点は、「工藤遥の卒業」そのものではなく、「工藤遥の卒業以後」に移行している。
それは、初撃の動揺から立ち直ってみれば、工藤遥が「モーニングの次の夢」として「お芝居」の世界を見据えていることについて、多くのファンは、「それなら、大丈夫だ」と、工藤遥を信頼しているからだろう。
あの、黒歴史の時代を乗り越えて自分を客観視できる工藤遥ならば、着実に「次の夢」に向って歩んでいくだろう、と。
事務所の代表も「卒業後もできるだけサポートしていければと思っています。」と明記してくれているように。
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語り部としての工藤遥について、モーニングのバックステージのDマガに触れた。
この、モーニングのバックステージのDマガが、やや雰囲気を変化させていることに、気がついているだろうか。
従来、ツアーのバックステージを追ったDマガでは、それこそ工藤遥が「語り部」であったように、視聴しているファンが、あたかもその場に同席しているかのようなリアルさと「そのまんま」感があって、それがバックステージの「幸せの風景」を効果的に演出していた。
しかるに、2016年の秋ツアーを追った、Vol.92、93 にあっては、こうした臨場感による「幸せの風景」は後景に引いて、どことなくスタイリッシュで映像的な実験が多用され、視聴しているファンが臨在できないように、いわばカメラフレームに「収められた」遠い風景が演出されている。
モーニングのバックステージのDマガのテイストが変化していることは、やがて工藤遥が去って行くことと無関係ではあるまい。それこそ、「幸せの風景」を効果的に演出していた映像マンが編集しているのだから、こうした機微に無頓着であるはずもなかろう。
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