演劇女子部 ミュージカル「 TRIANGLE -トライアングル-」
出演:譜久村聖・鞘師里保・石田亜佑美・佐藤優樹・工藤遥・小田さくら・尾形春水・野中美希・牧野真莉愛・羽賀朱音(モーニング娘。’15)
石井杏奈・小野田暖優 (演劇女子部)小片リサ ・高瀬くるみ (ハロプロ研修生)
須藤茉麻(α編・β編、両公演に出演致します)
モーニング娘。’15:コンサート&イベント|ハロー!プロジェクト オフィシャルサイト
演劇女子部の公演も、これで7回目。前回の『LILIUM-少女純潔歌劇-』が好評を博したことから、今回は早々に全公演チケットが完売している。
『ステーシーズ』から続いたモーニング娘。の「歌劇」だが、今回は前回までのような過激さは鳴りを潜め、少女漫画原作らしい、ファンタジックな異世界ロマンスが展開されている。
舞台は争いのない星、惑星アルファ。この星のエネルギー源は「スワスワ」と呼ばれる妖精のような亜人種から集める「エネル」というもの。彼らが電気クラゲのように発する「エネル」というエネルギーを集めて、照明や兵器などに利用している。(よって資源を求めて争う歴史がなかった、という設定か)
多数のアルファ人が暮らす中には、オメガ星、ヴィータ星からの移住者もいる。オメガ人はスワスワに触っても感電しないという特異体質を元に、スワスワを牧童のように操る「スワスワ使い」をしており、ヴィータ人は手に触れると心を読むことができるという特殊能力をもって、外交や軍事の要職に付いている。
物語は、アルファ星の王女、サクラ姫(石田亜佑美)に対し、女王イオタ(譜久村聖)から結婚の御託宣が下されるところから始まる。果たしてサクラ姫の相手は、ヴィータ人のキリ中尉か、それともオメガ人でスワスワ使いのアサダ(工藤遥)か? アサダにはサクラ姫の侍女、ローズウッド(小田さくら)が思いを寄せており、アルファ・オメガ・ヴィータの3種族に渡る三角関係[トライアングル]は、時として入れ替わり立ち代わりしながら、微妙に揺らいでいく…。
役者陣の好演
ヒロインのサクラ姫を演じるのは石田亜佑美。前作『LILIUM』では「あんたバカァ!?」の決め台詞に象徴されるように、基本的に騒いで走り回っている役だったが、本作では純朴で可愛らしい姫を好演している。得意のダンスの見せ所は舞台の構成上あまりなく、歌の面では少し曲のキーが音域とあっていない印象を受けたが、その分演技力の向上が見られた。最後の切ない告白には胸が震えた。
気になった点としては、石田本人の問題ではないが、サクラ姫が「そ、そんな…」と階段でたじろぐシーンがあり、少しよろけて階段を一歩下がった時に、会場中に盛大なクスクス笑いが広がったのが残念だった。アクシデントでもリアルな演技でもどっちにしても笑うところではなかったと思う。(この点だけではないが、どうもちょっとセリフをつかえた時など、些細な所で観客が笑いすぎのような気はした)
ファンの間では、石田亜佑美の愛嬌のある部分を愛でる「だーいし感」という表現がある。この言葉と概念が広まった事には功罪両面があって、もちろんファン層の拡大という「功」の面は計り知れないほど大きいが、こうして特におかしくないところでも笑われてしまうのは「罪」の一面ではないだろうか。
(とは言え石田さんってシリアスにしててもどことなく可笑しみが出ちゃうのも確か。コメディエンヌ的というか。そういう意味でも今回の「純真すぎて”天然”に近いお姫様役」というのはハマっていた。)
石田とは対照的に、鞘師里保にはシリアスな役がとことん似合う。今回のキリ中尉もβ編では途中まで全く心の中を見せないクールな役柄で、心の声でだけ恋敵に見せる熱い想いのギャップが実に格好良かった。(あえてこの「キリ中尉」という役に難点を言うなら、軍の指揮に加えて国家の外交まで担う最高位の軍人にしては「中尉」て階級低過ぎない?)
そしてβ編の主演、工藤遥asアサダ。『LILIUM』のファルス役で得た自信と実力が存分に開花。歌声も力強く、演技での表情や台詞一つ一つの説得力が半端じゃない。好きな人に秘密を持つ後ろめたさに悩む、少年らしい恋心の演技が素晴らしかった。 見ていて女性アイドルが少年役を演じている、というのを忘れるくらい、完全に少年だった。「演劇女子部」というプロジェクトである限り、工藤が女性役を演じる日は来ないだろう。
ポスターに提示されている主演の3人ではないが、準メインキャストとして特筆すべきは小田さくらだろう。サクラに仕える訳あり侍女、ローズウッドを演じているが、主人公のアサダとも深い関係があるため、時にはこのローズウッドとサクラ、アサダを交えた「トライアングル」が成立する場面もある。
「侍女」というポジションでもあるため、控えめなキャラクターなのだが、歌唱力はもちろんのこと、感情が高ぶる場面で毎回本当に涙を流して役に入り込む演技力が光っていた。まさに「控えめな怪物」である。
歌と脚本について
あえて難点を言うならば、β編にはやや唐突感を感じる部分もあったが、これは「α→β」の順で両方見ることを前提とした舞台なので、β編しか見ていない筆者の問題ではある。ただ、α編(おそらく)、β編、それぞれ単体で見てもちゃんと成立するように脚本を工夫して作ってあるのだろう、ということは十分に伺えた。
歌については、全体的にファルセット(裏声)が多めで、それも字の声と裏声を行ったり来たりするような音域の曲が多く、主演陣を含む少なからぬ出演者が音程や発声に苦戦しているようだった。筆者が見たのは最初のβ舞台だったので、その後回を重ねていくごとに演者がどれだけ成長していっているのかに期待したい。
ミュージカルにおいて「歌」に次いで重要な「踊り」については、市場で踊る露天商ダイス(佐藤優樹)のダンスや、サクラ(石田亜佑美)とキリ(鞘師里保)のダンスツートップによる情熱的なペアダンスのシーンなどは特に見応えがあった。今回は「演劇」の方に比重が置かれていたようで、ダンスシーン自体がそれほど多くなかった。その分、セリフ劇とキャストの内面の演技にスポットがあたっているわけでもあり、ラブロマンスをテーマにした今作ではそれはそれでひとつの正解なのではないだろうか。
トライアングル、残すは28日(日)の千秋楽のみ。
なお、9月2日にはイベント「『TRIANGLE』感謝祭」が、9月9日にはDVD(CD付)が発売される予定だ。
モーニング娘。’15 : 演劇女子部 ミュージカル「TRIANGLE -トライアングル-」オリジナルサウンドトラック
価格: ¥ 1,500
発売予定日:2015年7月15日
演劇女子部ミュージカル「TRIANGLE-トライアングル-」 DVD・ブルーレイ - モーニング娘。’15
¥ 6,999
発売予定日:2015年9月9日
Sorry, the comment form is closed at this time.