つばきファクトリー主演「演劇女子部ミュージカル 『サンク ユー ベリー ベリー』」初日公演レポート〜未来へと踏み出した一歩は力強く〜

10月8日に東京・池袋にある「シアターグリーン BIG TREE THEATER」にて行われた、ゲキハロ第7回公演「演劇女子部ミュージカル 『サンク ユー ベリー ベリー』 」の初日公演を観に行ってきた。過去にBerryz工房が主演を務めた『サンク ユー ベリー ベリー』をミュージカル作品に完全リメイクした今回の舞台の主役は、つばきファクトリー。 本記事では、つばきファクトリーのメンバーを中心に、その公演の模様をお届けする。

なお、公演期間は10月8日(木)~10月18日(日)で、当日券も出ている模様。この記事を読んでちょっとでも気になった方で、お時間ある方は足を運んでみては?

(以下ネタばれ注意。ストーリーがぜんぶわかっちゃうようなものではありませんが。)

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非常に楽しく、ハロプロを様々な角度で捉えたい私にとって貴重な場であった。おまけにおはなしも感動的で、心もホカホカのまま、寝床まで持って帰らせていただいた。

第一に、しっかり伝わるということ。新人のつばきファクトリーもしっかりと他のキャストさんに負けないように、腹から声を出し、滑舌よく発声していた。いわば、しっかりミュージカル仕様にカスタマイズされていた。私はBerryz工房主演のものをDVDで観ていたが、そうでないお客さんもストーリーを理解して楽しめるものだったはず。

第二に、笑いが多く、楽しい舞台であったこと。序盤こそ、ここは笑っていいのかな、と探りを入れながらの鑑賞態度であったが、「もっと面白いところでは笑っていいんだよ!」と出演者の面々がそれとなくリードしてくれたため、安心して楽しむことができた。出演者が伝えたいものを確実に観客が受け取るための鑑賞態度を即座に取るため、ステージと客席で心のキャッチボールをするような演劇の面白さが大いに感じられた。

そして、つばきファクトリーの熱演もさることながら、その脇を固めてくれたキャストさんのすばらしさ、とりわけ客席の雰囲気を読む力に、触れないわけにはいかない。終演直後の興奮した私は、ぜひハイタッチ会で素敵な体験にお礼を言おうとの心づもりでいたが、冷静になればいらっしゃるはずもなく。出口付近のアンケート回収箱にありったけの感謝の思いを綴った。この公演の成功は彼女たちの貢献あってのものだと。

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続いてはメンバーそれぞれについて。

 

谷本安美 as 前嶋今日花

YouTubeで配信されるハロー!プロジェクトのオリジナル番組で、緊張すると顔の筋肉がこわばって表情が出にくい子なのかな、と思わせるような場面があったが、この日は表情豊かに溌剌と今日花を演じていた。いや、確かに真顔もあったんだけど、全然気にならなかったどころか、全編を通して良い方に転んでいる。笑顔や泣き顔が表情と呼べるのであれば、真顔も表情。“丸富高校”の3人の中で、オチ的なセリフが多めに与えられており、それをあんみぃーが真顔で言い放つの面白さといったらもう。「そこでそうくるか!」という絶妙なキャラが育っていきそうな雰囲気があり、うまいことグループの隙間にハマれば、爆発力のを生むこと間違いナシ。

小片リサ as 夏川未知男

今年6月に行われた、演劇女子部ミュージカル「TRIANGLE-トライアングル-」に続き、二回連続での男役となった。茉麻という最高の男役のお手本が居るのも大きいが、違和感なく男になりきっていた。足がスラッと長く、鼻が高い、「我らジャンヌ~少女聖戦歌劇~」でジジを演じた菅谷梨沙子さんのようなエレガントな雰囲気のイケメンであった。他のメンバーが最後にちょこんと足を閉じている中、ひとりだけ最後まで気を抜かず肩幅に足を開いて客席に対面していたのが印象的。2時間弱と言う長丁場の中で、ホントに最後まで男役の意識が途切れない集中力はプロだなと、そう感じた。

新沼希空 as 安彦怜

いわゆるヤンキー言葉を使う希空ちゃんがホントにかわいい。落ち着いた性格なのは本人も認めるところだが、普段使わないであろう「~~~つってんだよ!」とか「~~~じゃねえよ!」というセリフでさえ、お上品さがにじみ出てしまっている。「~~~つってんだよぉ!」と小さい「お」を勝手に頭の中で付け足したくなるようなかわいさだ。こんな希空ちゃん、二度と見られないかもしれない。

また、ステージにキャストが密集する中で客席に顔を向けながら、後ろを見ずにバックステップですばやく移動するシーンもあった希空ちゃん。舞台の距離の感覚を自分の歩幅で記憶しているのだろうか。人とぶつかることもなく、スムーズに場所を移動していた。派手さはなくともネコちゃんのような笑顔を崩さず移動できるのは、体が覚えるほど練習した成果だろう。最後までネコちゃんのような笑顔でケガなくがんばってください!

浅倉樹々 as 長雲学子

今回の舞台が演劇初挑戦だなんて信じられないほど、主役である長雲学子を立派に務めあげていた。樹々ちゃんのすごいところは、舞台度胸だ。舞台と客席の構造上、そしてストーリーの構成上、普段のライブとは違う生の歌声を、近い距離で聴くことができるのも今回の舞台の魅力。歌を聴こうと静まり返ったある意味では不慣れな状況の中、音程もリズムも完璧に取り、かわいらしくも芯の通った声を劇場中に響き渡らせた。一発で百点満点の回答を出す樹々ちゃん!ロックやでぇ樹々ちゃん!

岸本ゆめの as 服部葉子

凛とした空手少女の配役が見事的中。あるワンシーンでは、ステージが狭くすら感じる手足の長さを披露しており、今回の舞台の見どころの一つ。抜群のプロポーションを活かしたアクションは矢島舞美さんのようであり、芯の強さから来る安心感は須藤茉麻さんのよう(実際に須藤茉麻さんを重ね合わせて鑑賞することを観客に明らかに要求するシーンも)。

きしもんの雰囲気を語るにあたり、欠かせないキーワードとしては「和」なのかな。感覚的で申し訳ないが、日々自己鍛錬に精進した末の精神的タフさを秘め、朗らかに笑っている感じ。本当の意味で強いから、人に優しくできる感じ。笑っているときはキラキラとしているのに、真剣な場面では口元も目もきりりと引き締まる表情が大好きです。それに柔道着とかハチマキとか似合いそうだもんね。

山岸理子 as 小西眞佳

ごにょごにょと自信なさそうにしゃべっていたりこりこが、今やつばきファクトリーのリーダーとして堂々たる演技を見せている。それだけで感慨もひとしおだ。はて、私がその健気さに胸を締め付けられたのは、苦学生風の衣装に身を包み(しかもそれが似合ってしまい)ミュージカルを成功に導かんと一所懸命に演技する山岸理子か?それとも、オシャレや遊びにわき目も振らず、家族を支えようと学生でありながらアルバイトに精を出す小西眞佳か?“ニワトリとたまご、どっちが先か?”じゃないけど、ハロプロの演劇を見ているとこういうことってしょっちゅうある。

あともう一つ。まばゆい照明の中まばたきもほとんどせず、くりっとした目でセリフを言い終え、横を向いたかかと思うとやっとまばたきをしたシーンがあった。自分も無意識に、まばたきなんてしてないでメッセージを受け取らねば、と言う気持ちにさせられた。まばたきをせずにセリフを伝えるテクニックをひょっとしてりこりこが、あえて使っている・・・?演じることについてこれだけ考えさせてくれる演劇女子部のレベルの高さを改めて実感。

 

須藤茉麻 as 六日坊主

演劇女子部ミュージカルの公演初日に緊張しているのはメンバーだけでない。なぜか観客として観に来ている私も、漠然とした不安と期待の入り混じった感情で、ソワソワしてしまった。上手く言えないが演劇独特の緊張感があるのだ。そんな緊張感も茉麻の手にかかれば一瞬で消し去られる。なんといってもハロプロのファンが喜ぶ掛け合いの絶妙なラインをわかっていらっしゃる。冒頭の数十分は茉麻オンステージで、客席との掛け合いで場を温め、つばきファクトリー後輩たちがリラックスしてステージに出られるようにアシストした。また、演出という立場だった今回、出来上がってきた台本に対し、それをどういったテンポ、スピード、身振り、場位置、表情をつけて演劇として具現化するかを決めたのが茉麻だということを考えると、Berryz工房の演じた「サンクユーベリーベリー」を思い出すような懐かしのシーンがちらほらとあったのも納得。

想像するに、今回茉麻の引きうけた仕事の量はものすごい量だったんじゃないかと。後輩の手本として指導し、自分でも役をもらって演じ、ひいては演劇全体の演出を考えること。二足のわらじなんてもんじゃない、スゴ腕のプレイングマネージャーだ。

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ミュージカルもクライマックスを迎えようかという場面、舞台上で躍動するメンバーを見て、この子たちが作り上げた舞台が無事に完成を迎えようとしているんだなと思うと、なんだか胸がいっぱいになった。自分が何か成し遂げたわけでもないハズなのに、あたかも自分も舞台に参加していたかのような達成感に浸り、ひとまず無事に初日の舞台が成功した安堵感に包まれた私は、おせっかいで厚かましいだろうか。

決して、落ち着いて見られないとか、そういうことが言いたいんじゃないけれど。いつもだしてるおでこがかわいいあんみぃーも、男装してもやっぱり優しそうな目をしている小片さんも、時々ちょっぴり猫背で自信なさげにみえる希空ちゃんも、一番若いのに主役を張る樹々ちゃんも、お風呂のドアが壊れっぱなしのきしもんも、ようやくリーダーが板についてきたりこりこも。

つばきファクトリーのことだけは自分のことのように嬉しくて、なんでだろうな、どうしても他人事だと思えないんです。

(文=puke)

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