TV 朝日『関ジャム』によって示されたハロプロ20年目の到達点

地上波の番組に登場してパフォーマンスする場合、ライブ現場の圧倒的臨場感とはほど遠く、液晶越しに “なんか違うんだよな” と、ファンですら思うのが常だった。

ところが、モーニング娘。’18 に混じって『関ジャニ∞』の村上信五丸山隆平が緊張した面持ちでスタンバイしている様子が画面に抜かれ、モーニングメドレーにのせてパフォーマンスが実演されようとする、まさにその瞬間に、まもなく卒業していく尾形春水のワンショットが抜かれる…この演出だけで感涙にむせぶファンも多かったという。
番組も終わりにさしかかる頃、モーニング娘。スペシャルメドレー、モーニング娘。’18 と『関ジャニ∞』の村上信五、丸山隆平によって、それまで番組内で散々語られてきたフォーメーションダンスが実際にパフォーマンスされる場面である。

番組を視聴していたファンは語る。
「それまで、散々モーニング娘。とハロプロについて熱く語ってきた上での、言ってみれば、期待を高めるだけ高めておいての、その上での、実際のパフォーマンス披露というわけで、この展開、演出には、やられました。
って、ちょっとイントロが流れてきただけで、うっかりすると泣けました。」

「自分たちだって積み重ねてきた歴史があって、最高のエンターテイナーでもあるのに。丸山さんなんて、個人的には、あの実写化された『ワイルド7』の名演技は今でも脳裏に焼き付いています。それなのに『モーニングのダンスが難しくて、しんどくて、ちゃんとできるか心配だ』なんて言ってくれて、ありがたくて嬉しかったです。」

「散々これまでのモーニングの歴史を語ってきて、これまでの歴史を担ってきたメンバーを延々持ち上げておいて、その上で、これまで名前が出たメンバーが誰一人いない現在のモーニングを、現在のメンバーを改めて紹介するでもなく、そのパフォーマンスを実演するって、これまでの語りで “鞘師がアップさせたレベルを、今では全員が踊る” とか言っておいて、あたかも現在の到達点を示すような形でのフォーメーションダンスの実演ですから…これは、ファンであっても、いやファンだからこそ痺れました。」

「ああ、はいはい、知ってる知ってる…って思って見てました。それでも、その “知ってる” はずのことが熱く語られた後で、実際に現役のメンバーたちが、実際に実演するって流れは、やられました。語られる内容を知っているはずのファンですらこうなのですから、紆余曲折あった歴史を熱く語られた上での現役の登場と実演というこの演出は、知らなかった・離れていた視聴者の心にも十分届いたのではないでしょうか。」

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それは、2018年6月17日に放送された TV 朝日の『関ジャム』でのこと。
ハロプロに楽曲提供するだけではなく濃いめのファンとしても知られるヒャダイン大森靖子に加え、かつて2016年の ひなフェス で、モーニング娘。と同じステージに登った名誉モーニング娘。メンバーでもあり、いわばファン筆頭、女優松岡茉優をゲストに迎えて、『ハロー!プロジェクト20周年~なぜ長く愛されるの?歴史と変化に迫る~』と題し、ハロプロとモーニング娘。の20年の歴史が語られた。

その “音楽性” が分析されるという触れ込みながら、ヒャダインも大森靖子も、そして当然、松岡茉優も、ファンとして熱くモーニング娘。を語った。
番組の視聴者の代わり身となって、その “熱い語り” を “ほぉ~、そうなんですねぇ” と、知らない前提で聴く役割としてひな壇に控える出演者も、いわば “我が軍” だらけ。支配人である古田新太は「いや~鞘師さんがいる時代を見てみたかった」と言いつつ、’14時代にCMで共演しているし、関ジャニ∞ が モーニング娘。のダンスをコピーしたのは今回が初めてではない。そして、全盛期のVTRを見ながら「いやあ、この辺の時代で知識がとまってますね」と述べるサバンナ高橋茂雄は、『ハロモニ』から『ベリキュー』まで、プラチナ期にさしかかる頃までのハロプロの番組の常連出演者でもあった。

そんな出演者たちによって、『ハロー!プロジェクト20周年~なぜ長く愛されるの?歴史と変化に迫る~』として、熱く激しく語られたモーニング娘。20年の歴史。
その内容は多岐に渡り、歌唱法についてだけでも、”後藤真希(3期)の登場で明るくかわった“、”16ビートを刻む歌唱法はシャ乱Qの歌唱法“、”音楽ソフト プロ・ツールスの導入でシャ乱Qの歌唱法が前面に“、”高橋愛(5期)のプラチナ期によってアイドルからプロ集団へ“…など、など、など、駆け足ながら要領よく20年の歴史が語られていった。

それは、松岡茉優という生粋のファンによる熱い語りというだけでなく、幅広く松浦亜弥や Berryz工房への言及もあって、限られた短い放送時間であったり必ずしもファンではない視聴者を前提にしていたりといった制約の中で、”(隠れ)我が軍” のリアクションも含め、それでも最大限、ハロプロに好意的な取り上げ方・編集の仕方・語り方であったようだ。
さらには、個々の時期の紹介・音楽性の分析が、松岡茉優、ヒャダイン、大森靖子によって語られた後、つんく♂のコメントが挿入されて、紹介された音楽性の分析が検証・裏付けられるところも(同時に、つんく♂の回顧が挿入されることも)見所だった。
ハロプロの20年を良く知るファンにとっては、つんく♂のコメントこそ、知らなかったことも多かった得難いコンテンツとなったのではないだろうか。

また、高橋愛による「アイドルからプロ集団へ」を経て、”EDM路線とフォーメーションダンスの完成へ” として鞘師里保(9期)が大きくフィーチャーされるや、先日の騒動もあって、”やはり鞘師の復帰が近いのではないか” と、ネットの一部が騒然となるという一幕もあった。

このように、下手に取り上げようものなら、むしろ味方であるファンから真っ先にそっぽを向かれかねない危ういコンテンツを扱いながら、そんなファンにとってこそ、かなり満足度の高い内容となったTV 朝日『関ジャム』2018年6月17日放送だが、冒頭でも述べたとおり、出演者による語りと予定調和的に視聴者の代役となる ひな壇との、定型的なやり取りだけでは終わらなかった。

繰り返し、番組の最後で、そのように熱く深く語ってきた20年の歴史が今につながっていることが示された。後藤真希、高橋愛、鞘師里保と、それぞれの時代毎に、パフォーマンスの質を変え、レベルアップを続けてきたと語られた20年の歴史の現在の到達点が、番組の最後で開示された。卒業が相次いだことにも正しく触れられた上で(名前を挙げられたメンバーはもう誰も残っていない)現在の編成によって、現在のメンバーについては個別に紹介されることもなく、あくまで “モーニング娘。” としてのパフォーマンスが、番組の締めに、大きく披露された。
自分たちだって短くない歴史があって最高のエンターテイナーでもある関ジャニ∞のメンバーたちとコラボして。

今回の『関ジャム』の放送によって、番組内で語られてきた “歴史を紡いできたグループの現在の到達点” が、番組の最後に “実際に” 示された。この流れ、演出は、すでにファンであった者にとって心の深いところに刺さる演出であったと同時に、広く一般にも強く訴えかける優れた演出だったのではないだろうか。

(文=椿道茂高)

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