都営大江戸線の六本木駅よりも深いBEYOOOOONDSを巡るナゾ

2019年9月1日、東京・中野サンプラザ、Hello! Project 2019 SUMMER harmony公演。日本全国7大都市を巡る夏のハロコンの千秋楽である。

例年であれば、夏のハロコンは7月中旬の大阪公演を皮切りに、地方都市を数カ所周り、8月の第1週から第3週という夏の盛りに中野を経て、再び地方へと赴く。だから関東組のファンにとっては、夏のハロコンは一番暑い時期にやってくるもの。そんな肌感覚からしてみると、中野サンプラザ公演が9月にかかっているのは珍しく、日陰にいれば、ちょっぴり涼しさを感じる夏のハロコンを迎えたのだった。

今夏のハロコンは、BEYOOOOONDSがアツイ。メジャーデビューシングルがオリコン週間ランキング1位を獲得するという快挙を成し遂げた彼女たちのパフォーマンスは間違いなくハロコンの目玉である。練度が高いし、曲目も増え、だれの目から見ても、活動は軌道に乗った。それなのに、まだまだBEYOOOOONDSをかたどる輪郭がはっきり見えないのも、さもありなん。形を変幻自在にビヨーンびよーんと変貌させる、 スライムのようなグループを目指しているのだから。

BEYOOOOONDSは捕らえ難く、疑問は尽きない。里吉おもち君はなんであんなにかわいいの?どうやったら平井美葉さんみたくオーラのある人になれるの?前田こころさんはいつからなっきぃに「まえだまえだ」って呼ばれているの?大人もみんなに聞きたいことがあるの。

で、ハロコンに足を運び、生でBEYOOOOONDSをみる。恥ずかしいことに、「ガラスのベール」が眼鏡を表現していることに気づいたのも、つい最近のことだ。ボーっとしてちゃいけない。スライムのようなBEYOOOOONDSをつかまえられるか。

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『アツイ!』。みんなが待ってた夏の『アツイ!』。

“ONLY YOU”オーディション合格組の3人が躍動するハードロック。BEYOOOOONDS、CHICA#TETSU、雨ノ森川海という3つのグループの包含関係(公式の図「BEYOOOOONDSの形」を参照)における、小林さん、里吉さん、平井さんの立ち位置から、失礼を承知で、ひっそりと「補集合ズ」と呼んでいるんだけれども、3人の精鋭っぷりに免じて、そろそろ正式なチーム名が欲しいところ(そもそも3人を括って「チーム」とする気はないのか??)。

「補集合ズ」が情感たっぷりにプレリュード。電子ピアノを離れ、本隊に合流する小林さん。あれ、小林萌花さんは、ピアノを弾いてるときは、マイクをどうしてるんだっけ?誰かにパスして持ってもらってるんだっけ。案外、そんな単純なこともわからない。小林さんピアノ復帰。背伸びをしても、後ろの方からじゃ小林さんの手元って意外と見えないね。

答えはステージ中央のスクリーンが、映し出した。ピアノ真上からのアングル。鍵盤を躍動するほのぴフィンガー。なるほど、電子ピアノの筐体の右手側、白く区切られた一角が、マイクを置く場所になっている。白いのは、なにか滑り止め的なものを敷いているんだろう。

BEYOOOOONDSの疑問が、一つ解消。

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怪曲(?)、『Go Waist』。

途中、「ビリーズブートキャンプ」のパロディとして「サヤーズブートキャンプ」が挿入されるこの曲。『1億3千万総ダイエット王国/Berryz工房』がリリースされた当時は、同じダイエット系の歌を、プロおふざけ集団(褒めてます)の彼女たちが歌うとあって、「次はBerryzブートキャンプだね」なんて飛ばしていた冗談が、思わぬ形で現実のものとなってしまった未来予知系ベリヲタもいるとかいないとか。

余談だがこの曲、筋トレ好き界隈での受け止められ方が面白いのでご紹介。曰く、「ダイエット器具や会員制のジム、ダイエット効果を謳ったサプリメントの広告はバッキバキに割れたシックスパックやぶっとい上腕の写真ばっかり。キレキレのマッチョになることと、痩せることって、混同されてるんだよね。商品広告が音楽になっても、それは変わらないね笑」と。たしかに納得。この曲も、「痩せたい」と「マッチョになりたい」の2つの願望がざっくりとした認識の下で、ないまぜに歌われる。

「今日から当分 NO 糖分」は、大会を控えたボディービルダーの仕上げとして王道のメソッド。「1・2・3・パンプアップ!」。パンプアップは、辞書よると、筋力トレーニングなどで、筋肉に負荷を与え続けた場合に、筋肉中の血液やリンパ液が増加することによって膨らむ現象を意味する語とある。「鍛えろ マッスル」は直接的で潔い! 結論、こういった歌詞がフックとなり、筋トレ好きの心をくすぐり、曲の評価としては「最高」であるとのことだ。

「痩せる」と「マッチョになる」の混同がどこまで意図されたものなのかはわからないけれども、曲全体として、人間の理性と野性の相克のようなものを描いているといったら言い過ぎか。「痩せたい」と願望を持っていただけのハズだったのに、ちょっとやってみたら、やるならとことん!という潜在性マッチョ的発想に目覚めてしまった江口沙耶さんにビリー隊長が憑依して・・・そんなストーリーと、その気になれば読めなくもない。

さて本題。2000人の サヤーズブートキャンプ@中野サンプラザ に参加し、思う。なんで江口沙耶さんは、サヤー隊長に選ばれたんだっけ?

一応、自薦の線も検討しよう。本家ビリー隊長のDVDのブームが2006年だから、サヤー隊長は当時3才。したがって、”元ネタ”を知らない。知らないがゆえに、本人はなんの疑いもなく受け入れているのかと思いきや、後日YouTubeに上がったMV鑑賞会で”ちゃんと”恥ずかしがっている様子を見てファンは謎の安心。普通そうだよね。江口さん、プロだよね、尊敬です。

てなわけで、恥ずかしがっていた様子からして、自薦の線は消えた。となると、どんな理由で選ばれたんだろう。

その1.メンバーカラー被ったから説。サヤー隊長のメンバーカラーはデイジー。ビリー隊長も作中、デイジーのタンクトップだった。色が同じという、シンプルな理由を提唱。

その2.「○○ー隊長」にした時の収まりがいいから説。他のBEYOOOOONDSメンバーで名前が二文字のひとに限定すると、ミヨー隊長、もしくは、リカー隊長。声に出してみたけど、サヤー隊長の方が、バツグンに収まりがいいってこともなさそう。この説は苦しいか。

どの説も決め手に欠くかなぁ、BEYOOOOONDSの疑問は解消せず・・・。

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ハロコンはラスト一曲を残し、シャ乱QドラムスまことさんのMC。

「70名近くのメンバーとスタッフも合わせると総勢100名を超えるハロー!プロジェクト。みなさんの人生に寄り添って、彩りを与えていきたい。今後ともよろしくお願いします。」

心にしみる。こちらこそ。客席から思いを伝えようと、心を込めて拍手する。

今年も、少し遅れて中野にやってきた夏のハロコンが、幕を閉じた。BEYOOOOONDSはスライムのようで、まだまだつかまえられそうにない。

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最後に一句。

ちどりあし 令和の風は 秋めいて

次はお正月に、この通りゃんせ流れる交差点を渡ろう。

(文=puke)

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