2025年6月、日本武道館での公演をもってハロー!プロジェクトを卒業した島倉りかが、早くも卒業後の第一歩を示した。
「一緒に時を遡る旅へ出かけましょう」とのコメントも印象深いその動画で島倉が歌うのは『カナダからの手紙』。なんと今から半世紀近く前(1978年)の楽曲で、平尾昌晃と畑中葉子によるデュエットソングだ。SNS全盛の令和の時代に聴くと、当時との時代背景の違いも含めて多様な受け取り方が可能で、ファンの間でも早くも話題を呼んでいる。

卒業公演のステージで「卒業後も歩みを止めず、メンバーに誇れる活動をしていきます」と力強く語った島倉。その言葉を裏付けるかのように、ファンが予想しなかったような映像を披露した。動画は単なるスタジオ収録ではなく、衣装やロケーションに細かな演出が施されており、作品全体に “昭和の空気” が漂う。
映像に登場する島倉は、アイドル時代から変わらぬ可憐さを保ちながらも、落ち着きと大人の雰囲気を漂わせ、新しいステージへの覚悟を感じさせる仕上がりだ。公開された動画チャンネルに添えられた「一緒に時を遡る旅へ出かけましょう」というコメントからは、昭和の名曲を通じて、当時を知らない世代には新鮮な魅力を、リアルタイムで聴いてきた世代には懐かしさを届けるといった意図が伝わってくるようだ。
島倉はハロプロ在籍中から、恐竜や甲虫、さらにはMCUといった独特の趣味でファンに強い印象を残してきた一方で、ステージ裏では控えめで落ち着いた姿が目立つ存在でもあった。メンバーたちの陽気な騒ぎを、輪の外から微笑んで見守るような姿や、穏やかで端正な言葉遣いは “おっとりとした育ちの良さ” を感じさせ、グループ内でも異彩を放っていた。そうした彼女の人柄が、昭和歌謡という “温故知新” の世界観に自然に重なっているのも見逃せない。
ハロプロ卒業生がその後にカバー曲やソロ活動を展開する例は少なくない。しかし、島倉は現在もアップフロント・プロモーションに所属しており、今回のカバーは、往時にあってはビクター(現JVCケンウッド)からのリリースだった。著作権やレーベル間の調整が必要となるこうした取り組みは、彼女個人の挑戦である以上に、アップフロントとしての新たな展開を示すものとみられる。
アイドル事務所として知られる一方、数多くのシンガーやアーティストを輩出してきた音楽事務所でもあるアップフロント。自社の持つ音楽的資産や業界ネットワークを活用し、ハロプロOGの活躍を後押しする戦略の一環とも考えられる。島倉の挑戦は、島倉りかという一人のOGの活動であるという以上に、アップフロントの新たなる活動の、その第一歩である可能性もある。
アイドルからアーティストへ。島倉りかが歩み出した新たな道のりは、ファンにとって懐かしさと新鮮さを同時に味わえる “旅” になるのかもしれない。
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