『Berryz工房 ラストコンサート2015 Berryz工房行くべぇ~!』のDVD鑑賞のお供にどうぞ あの日の彼女たちの心境を探る深読み3選

「解散」ではなく、「活動停止」。

現在活動停止中のBerryz工房メンバーが様々なシーンで活躍していることが多方面から伝わってくるのは非常にうれしい。彼女たちが、ソロで活躍する仲間を応援しに行ったり、これまでと変わらぬ笑顔でブログの写真に写ったりしているのは、なんかホッコリする。かつて見せてくれた阿吽の呼吸もいまだに健在のようで、ファンはそういった“つながり”を見つけては、やっぱりBerryz工房はまだ“ある”んだと思えるからだろう。「活動停止」は素敵なワードチョイスだと、多くの人が噛みしめている。

さて、モーニング娘。を例に出せば、道重さゆみさんの卒業もそうだったようにグループ自体が活動を続けていく中で、DVD magazineなどで卒業前後のエピソードが語られる。しかしながら、Berryz工房に関しては今年の3月3日にグループ自体が活動停止したため、活動停止に関して語る後輩もいなければ、語られたとしてもそれが世に出る機会も限られている。それならば想像でもいいから、ラストライブのDVDをヒントに、ファンである私なりに考えてみようと思った(そのためフィクション含む)。それがこの記事を書いた動機である。

そこで本記事では、「Berryz工房ラストコンサート2015 Berryz工房行くべぇ~!」より、筆者が独断と偏見で選んだ3曲のパフォーマンスについて、熱く語らせていただく。あの日、彼女たちはなにを思っていたのだろうか?

深読み①あなたなしでは生きてゆけない

押しも押されもせぬBerryz工房の代表曲をセレクトした。というのも、楽曲としてのすばらしさは勿論、曲の解釈に関してちょっと奇妙にすら感じてしまう点があったので。

“あなた=音楽”という解釈が成り立つことが、つんく♂本人によってネタばらしされていることを知っている人は意外と少ない。当然、何百回とこの歌を歌っている彼女たちがこの解釈を知らないハズがないので、ここをスタート地点としよう。なお、つんく♂が補足して言うには、この解釈から現代を生きる女の子の強い精神が浮かびあがってくるとのことだが、もう一歩踏み込んであの日に思いを馳せてみよう。深読みなので。

歌詞を引用する。

初恋を 最後の恋として

一生あなたの事

愛したい

 

思い出を更新したい EVERYDAY

一生あなたの事

愛したい

不確定な未来に対する不安の中にあっても、一生“音楽”を愛すること、“音楽”と共に思い出を更新することを誓っている。“音楽”に対して立てた誓いを“音楽”によって「更新」するという奇妙な二重構造である。したがって、「あなたなしでは生きてゆけない」という曲を歌うことが、いかに奇妙でセレモニアルな行為かがわかる。一回一回が、今までずっと音楽を愛していたことの確認、誓いを新たにこれからも音楽を愛し続けることを誓うこと、この二つを一挙に行う重要な“儀式”だったのだ。

実際にライブ中では「まっすぐな私」の後、キャプテンから「私たちBerryz工房の歴史、そして皆さんとの思い出は、この曲から始まりました。」と曲に関してコメントが入ることからも、この曲に対する思い入れの強さが窺える。「思い出」という歌詞にも登場する言葉も、あえて使ったんじゃないだろうか?

誓いを守り続けてきた自負とともに、武道館でこの曲が力強く歌われた瞬間は、かつて幼気な少女たちが打ち立てた「一生“あなた”のこと愛したい」という誓いを、とうとう貫き通した瞬間だったのだ。

深読み②行け 行け モンキーダンス

「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」を歌い終えたメンバーが舞台袖にはけると同時にスクリーンに写された映像は、結成から現在までのBerryz工房の姿を歴史を追って収めた映像で、涙なしでは見られないものだった。その映像の最後にトドメとばかりに挿入されていたのは、中野サンプラザにて“無期限の活動休止”が告げられたまさにその瞬間の映像であった。少しこの映像に触れさせていただく。電車で、自宅で、あるいは現場で。このニュースに接した状況は様々かと思うが、みなさんはどのように感じられただろうか。

映像中ではキャプテン清水佐紀より、「私たちBerryz工房は来年の春を持ちまして無期限の活動停止に入ることとなりました。」と告げられると、すかさず客席より「えぇ~!」と悲鳴に近いレスポンスが。いや、確かに「えぇ~!」なんだけどれも、そうじゃないんだよなぁ。言葉にならなかったし、「その時が今なんだ」と受け身でいるしかない。不思議とすぐには悲しいという感情は湧いてこなかった。私は、そう感じた。

さて本筋に戻ろう。そんなエモーショナルな映像から急転直下、お城のセットからおさるのコスプレをしたBerryz工房が登場し、「行け 行け モンキーダンス」に突入。楽しい時間はまだ終わらないとばかりに、幸せの満ち満ちた空間にファンを連れ戻してくれたのは彼女たち自身だったのだ!着替え中のMCでも熊井ちゃんによって語られる、当日の朝に「まだ泣かないよ!」と母に言い残して颯爽と家を出てきたエピソードからもわかるように、最後まで楽しいステージにするというテーマはあったと言って間違い無いだろう。

おさるのコスプレに身を包み披露された三曲(「行け 行け モンキーダンス」、「I’m so cool!」、「cha cha sing」)は、まじめにふざけるBerryz工房の魅力が存分に発揮されていた。慣れたものとばかりに「カモォン!」と軽快に合いの手を入れるおさるキャプテンに乗せられ、ファンもおふざけのスイッチをオンにする。ファンを味方につけた彼女たちのおふざけは、手がつけられないのだ。そんな三曲の中からBerryzらしさが出たシーンをいくつか。

まずお城のセットから登場して目を引くのがももち。ももち結びの上からおさるの耳をつけた無理やり感満載のももちのシルエットには笑ってしまう。角度によってはおさるの耳から直接ももち結びが生えているようにも見える。笑いの感覚に人一倍敏感なももちのことなので、確信犯である可能性が拭いきれない。

そして雅ちゃん。おさるの衣装で歌われた三曲の間は、全員のマイクに20cmはあろうバナナのフィギュアがくっついていたが、唯一雅ちゃんだけがそのバナナをマイクから外して見事に使いこなし、パフォーマンスする姿が見られるのだ。見事に雅ちゃんだけ・・・?そこで、今でもファンの間ではまことしやかに語られる、「雅ちゃんのバナナだけ取り外し式説」についても検証した。結論から言ってしまえば、「cha cha sing」のイントロで雅ちゃんが下を向いていて、次のシーンではしゃがんで回収しているのが確認できるので、これは“アクシデント”の部類である。けれどもそんな“アクシデント”にも動じず、かわいくバナナを使ってパフォーマンスを続けた雅ちゃんに最大限の賛辞を贈りたい。(もう戻らないと思いきや元のようにマイクにくっついていたり、かと思えばまた外れて雅ちゃんが拾ったり。あのバナナがマイクにくっつく仕組みの方にもちょっと興味がわいている)

あと、梨沙子についても。「I’m so cool!」のセリフのかわいさに対しファンから発せられる歓声に対して、照れくさそうに自分の表情を制御しきれず(?)笑顔になってしまうシーンや、着替え中のおさるMCでもキャプテンからかわいいと言われると、強めに「どこが!?」と否定するシーンもそうだけど、異性か同性かを問わず通算何万人にカワイイと言われても、いまだにつれない反応がやっぱり魅力。ファンも、キャプテンも、別に他意なくカワイイとほめているのに、やっぱりつれない。どうも素直に受け止めてくれない。でもそこが彼女だけに許された“らしさ”だし、魅力なんだよなぁ。最後の最後までスタンスを貫いてくれて良かった。そこも含めて、やっぱりカワイイですよ梨沙子さん。

深読み③Bye Bye またね

「Bye Bye またね」 の本当のメッセージを探ろう。

一回目のアンコール前の最後、つまり本編最後の曲が「Bye Bye またね」である。映像でも確認できるのだが、このお別れソングを歌うBerryz工房の面々に、思いのほか笑顔が見られる。千奈美やももちを筆頭に、笑顔で客席に手を振ってくれている。なぜだろう。

ついつい、曲中の“わたし”と“あなた”との別れを、Berryz工房とファンとの別れに重ねてしまうが、この曲にはもっと大事なエッセンスがある。別れを歌った曲であることは間違いないが、惜別の情の裏側にひょっこりと顔を出す、もっと前向きなメッセージが込められている。それは、二番の歌詞より、雅ちゃんによって歌われるパートに突如として現れる。

また 会いたい 今日より長く

毎日をしっかり生きるわ

少し言葉のつながりに飛躍があるが、この行間にこそ、この曲のエッセンスが凝縮されている。いうなればキモだ。曲中のストーリーに出て来る“わたし”は一貫して“あなた”と再び会える瞬間を、目標を立てるかのように述べている。例えば、“元気な顔で”というふうに。また会えるから、その時は堂々とした自分で会いたいんだ、そんな決心が読み取れる。

些細なことだけれど、自分も似た考え方をしたことがあるなと、ふと思い出す。旅行先でお土産を買おうと思うのだろう?友人からお土産を貰うとうれしいのはなぜか?それは、旅先で感動した景色や体験を大切な誰かと共有したいと思うから。その場にいない大切な誰かに思いを馳せ行動するからだろう。その大切な誰かが自分であれば、なおうれしいというわけだ。

離れていても大切な誰かを思うイマジネーション。そして一見矛盾しているようだが、離れていても、ではなく、離れているからこそ“毎日をしっかり生きる”ことを自ら選択し、宣言する。それはどこまでも人間らしい高貴な宣言なのである。

Berryz工房からファンへ、という解釈は言うまでもなくすんなりと通る。と同時に、Berryz工房の最近の個人での力強い進歩を見ていると、メンバー同士が交換したエールなんじゃないか、とも思えてきてしまうのだ。“毎日をしっかり生きる”という宣言通り、彼女たちは新しい道を堂々と歩み始めているのだ、また会う日のために。

最後に

ライブはなまもの、とはよく言ったもので、「しまった!今の千奈美の表情見逃した!」といったような後悔を誰もが一度は経験しているはハズだろう。ましてや活動停止ライブなんて1グループにつき一度しか訪れない大事なライブなわけだから、どのシーンも見逃したくないのがファン心理というもの。Berryz工房に関して個人的に言えば、常に画面を七分割してひとりひとりの表情と動きを追っていてほしいと思うくらい見どころが多いので、編集するスタッフさんは何度、苦渋の決断を強いられたことか。私たちの手に届くのは、編集の手によってどこを切り取るかを恣意的に取捨選択された結果ということになる。

ではこのDVDはどうだったかというと、Berryz工房のライブのキラキラした雰囲気が画面越しにしっかりと伝わってくる見応えのある映像だった。ファンが見たいであろう見どころを的確な角度から、的確なタイミングで押さえてくれているので、文句なしに楽しい映像だった。加えて、熊井ちゃんが楽しそうに踊っているそのステージの逆サイドでは茉麻も楽しそうに踊ってるとか、佐紀ちゃんが涙を流すその横で画面には映っていないももちはケロッとしてるんだろうとか、そういった想像(妄想)に耐えうるほど丁寧に作りこまれ、懐の深い映像だったことも指摘しておこう。

私たちファンを強烈に引き付けたBerryz工房のライブの、残る部分と残らない部分。残る部分は、見どころはキマっていて何度見ても迫力満点だし、何よりもじっくり見ることができる。残らない部分は、ライブにきたファンだけが目に焼き付けて持ち帰ることを許される宝物だ。それを知っているから、彼女たちはステージのどこにいても気を抜かない(ここらへんがBerryz工房特有のハッピーなライブのカギだったのかも)。おみやげをたくさん用意してくれていて、好きなのを取っていきな、という感じ。さすがプロフェッショナル、隙がない!と、これが自分の想像(妄想)をこれでもかと書き散らかした末の結論である。やっぱり凄かったんだなBerryz工房、と思ったら口を衝いて出るこのセリフを久しぶりに。

ベリヲタでよかった!

あとがき

そうそう、一部では早速「みやびファクトリー」とも言われている雅ちゃんの新ユニットですが、その特設サイトを見ると「ファッションに興味がある女の子」「歌とダンスが大好き」との文言が。これって雅ちゃんのイメージそのものじゃないでしょうか。なるほど、ここから第二、第三の雅ちゃんが誕生するんですね。これぞまさに文字通りの「みやびファクトリー」・・・なんてくだらないことを考えていたのは私だけでしょうか。

ただ、最近のGREEN ROOMを見ていると、雅ちゃんの“らしさ”はマネしてできるものじゃないぞと思ってしまいますね。長年培ってきた千奈美とのコンビネーションを差し引いても、キャピキャピとした笑いを生みだす腕には相当のモノがあります。お笑いの世界で言う“イジる”も“イジられる”もできるので、どのゲストの回も笑いが生まれ、終始楽しい雰囲気で番組が進行していきます(最近のハロプロは、年上グループでがっつり後輩をイジるタイプの先輩が減ってきているかも知れません。新たなキャラクターの登場に期待ですね。)。時には自分の失敗談さえも引き出してコメントをする余裕も、“らしさ”ですよね。ホントに雅ちゃんはマルチプレーヤーですよ、本業ではないはずの“笑いを起こす”という分野でさえも。今後の雅ちゃんの活動に、ますます期待ですね。

最後に雅ちゃんのInstagramを見て一句。

長袖を  着る雅ちゃん  秋来る


(文=puke)

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