鞘師里保はなぜ「カリスマ」だったのか ~衝撃のニュースから一夜明けて~

衝撃のお知らせが飛び込んできてから一夜明けて。

もちろん、現在も、最初のニュースが飛び込んできてから、新しい情報があるわけでもなく、この段階では、憶測に憶測を重ねることしかできないことは、なんら変わらないけれども。

それでも現時点で言い得ることは、いくつかあると思う。
投稿者は、モーニング娘。’15 の秋ツアーについては、今後、横浜パシフィコも、武道館も、チケットは確保できているし、カウントダウンライブも通しのSS席が確保できている。このため、この衝撃のニュースに関連したことを、しっかりこの眼に焼き付けてくるつもりだし、お知らせすべきことがあると思えば、エンタメアライブにレポすると思う。
そのためもあって、今、それでも言い得ることを書き記しておこうと思う。

異例尽くしだから、かえってわかること

今回の衝撃のお知らせは、いろいろと異例尽くしだ。
いかにも急な告知であること、最後のステージにまで間がなさ過ぎること、その一ヶ月前に卒業を予定している先輩のセレモニーに話題が集中しなくなること、その最後を飾る大舞台が特別に設えられることもないだろうこと…など、すでにこのお知らせに接した多くのファンが、従来のものとは異なる雰囲気を様々に感じ取っている。

でも、だからこそ、かえってわかることがある。

もしアップフロントが、いわゆる「卒業商法」といったことを念頭に置いて、これを大きな花火として、しっかりした利益を出そうと目論んでいるなら、すでにあちこちで指摘されている上述のような異例さは、あり得ないところだ。
きちんと話題を分散し、しっかりソロイベントを入れ込み、大きな舞台でのセレモニーを演出して、それ専用のグッズなども準備し、おおいに集金のためのフックを、ファンが最後に想いを込められるだけの花道を、しっかり準備しただろう。
しかし、それらは準備されていない。
メンバーたちのブログなどからも、戸惑いが見て取れる。

これらのことから、実際に今回のことは、いかにも「急な決定」であったことがわかる。

と、いうことは、むしろ、目の前の集金機会をおおいに犠牲にしてであっても、この事務所は、メンバーの意向を最大限に尊重してくれたのだ、ということでもある。

その「意向」が、実際はどういう背景のものであるか、当人としてはどういう理路を通って、そうした結論に至ったものか、それはわからないし、何を考えても憶測にしかならないし、それは場合によっては当人も、その周辺の誰かをも傷つけるものになるだろう。
それでも、少なくとも、最終的な当人の「意向」を、様々な段取りや軋轢や、ファンを含めた周辺への影響や、何よりも営利企業としての集金機会をも、うっちゃって、優先してくれた、ということでもある。

このお知らせに受けた衝撃は(私は彼女推しではないとはいえ)大きなものがある。が、最後の最後のところで、モーニング娘。を初めとするハロー!プロジェクトを擁し、その運営にあたっている事務所は、最優先事項として、所属メンバーの意向を尊重してくれたということは大事なところだと思う。

カリスマをカリスマとするもの

そうであるならば、さらなる飛躍のために「留学」するのだという件を、信じて、一回り大きくなった帰還を、楽しみにして待ちたいと思う。

事実、過去の先輩で「留学」という理由で卒業した者は、みな、何らかの形で帰ってきたということもある。だが、それ以上に。

「永遠と思っていた 時間 永遠じゃないから」と歌い、多くの観覧者の涙を誘ったことも記憶に新しい演劇女子部ミュージカル『サンクユーベリーベリー』において、次のようなシーンがある。
どうしょうもない俺らを、美稲崇は、大事に大事に宝石のようにあつかった、と。
大事に大事にあつかわれて、どうしょうもなかったはずの俺らが変わった、と。
大切に扱われて、大事にされたことで、丸富高校のメンバーは、自分たちを変えてくれた合唱部の先生に感謝を述べる。そう扱われたから、そう思われたから、扱われたとおりに、思われたとおりに、自分たちが変わったと。

とある社会学者の有名な古典に、支配の正統性を分類したものがある。
支配される側が、自分たちに対する支配を正当なものとして受け入れるその仕方には、3つの類型があるという。それは、「合法的支配」「伝統的支配」そして「カリスマ的支配」だという。
この類型が、実際の政治学上の位置づけであったり、実際の歴史的状況をどこまで分析できるものであるのかであったり、それを提唱した社会学者がやりたかった大枠のお話しに、どの程度貢献できた概念なのかといったことは、大事ななことじゃないので、うっちゃって。
大事なことは、「カリスマ的支配」が、カリスマである卓越した個人の側が備えている属性としてではなく、支配される側が、自分たちに対する支配を正当なものとして受け入れるものとして、支配される側の視線として挙げられていることだ。

カリスマは、その個人に何らかの卓越した能力なり属性があるから「カリスマ」になるのではない。カリスマが、自らの「カリスマ」を根拠に、他者に服従を強いるのではない。
そうではなく、カリスマに従う者が、従っている側が、カリスマに「カリスマ」を認めるから、「この人はすごい!」と、周囲がそう認めるから、カリスマは「カリスマ」として君臨できるのだ、という理路が重要だ(そう述べた者は、繰り返し「社会」学者である)。

彼女が、彼女自身をふり返って、たとえ不器用であっても、一回り大きくなって帰ってくると言うのなら、それを真に受けて、信じて待つ者がいなければならない。

私は、さらなる飛躍のために「留学」するのだという件を、信じて、一回り大きくなった帰還を、楽しみにして待ちたいと思う。

衝撃のお知らせから一夜明けて

この週末も、モーニング娘。’15 は、秋ツアーを継続している。
そして、このお知らせをもたらしたエースメンバーの地元凱旋公演が行われた。
その会場では、衝撃のお知らせに受けた混乱も落ち着かせられないまま、たくさんのファンが詰めかけたかと思われるも、それでも、自分を待ち受けるファンの前に屹立した17歳の少女に向って、割れんばかりの声援が飛んだという。

その広島会場のマイクロファイバータオルには、堂々とした決意がしたためられていたともいう。

レギュラーで参加しているラジオでは、常日頃、やさしく接してくれた芸能界の大先輩も、真っ正面からのエールを送ってくれたようだ。

引き続き、横浜パシフィコも、武道館も、カウントダウンライブも、投稿者自身、しっかりこの眼に焼き付けてこようと思う。繰り返し、みなさんにお知らせしたいことがあれば、レポを投稿するなり、何らかの形で共有したいと、強く思う。
そして、なにより。

繰り返し、彼女が、一回り大きくなって帰ってくると言うのなら、それを真に受けて、信じて待つ者がいなければならない。

(文=kogonil)

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