やはり去り際というのは本人の性格が色濃く反映されるのだろうか。
2018年6月20日水曜日、モーニング娘。’18 の12期メンバーである尾形春水が、武道館のステージを最後に、モーニング娘。とハロー!プロジェクトから卒業した。
それは、目撃した多くのファンによって評されるとおり、落ち着いた、控えめな、ほっこりした、やさしい去り際だった。「しめっぽくなりすぎず、いい卒コン」とのコメントもあるとおり。
卒業セレモニーに先だって手紙を朗読する尾形春水について、あるファンはこう述べる。
「マイクに向って発言する前の “ひとニコり” が可愛かったですね。手紙を読みながら、一拍入れて、舞台袖の向こうをチラ見して、”ひとニコり” する様子も可愛かったですね。
定められたプロトコルに差し挟まれる “ひとニコり” が、徹しきれない はーちん の気持ちのやさしさを現しているようで、一番泣きそうになったところです」と。
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この尾形卒業の20日に先立って、19日の武道館には大きなサプライズがあるのではないかと見られていた。20周年を記念するメモリアルブックにも名前が出ている9期メンバーの鞘師里保が帰国してアップフロント本社を訪れていることもあり、この武道館に先立つ特番でも盛んにフィーチャーされていたことから、電撃的なサプライズ登場があるのではないかと。
20日は尾形の卒業セレモニーであるからには、サプライズがあるとしたら19日だろうと見られていた。しかし、そうした一部の期待は大きく肩透かしを食らうことになる。
この2Days の武道館は一切サプライズなし。ステージ構成・演出の全般を通じて、尾形春水をやさしく送り出すことに、アップフロントは集中したかのようでもあると評されてすらいる。
ネットでは「正直あそこまでちゃんとした卒コンを用意してくれると思ってなかった」とのコメントさえも。
思えば、2017年、℃-ute のファイナルは、卒業したメンバーの呼び込みもなくサプライズのスペシャルゲストもなく、15年を疾走した5人による5人だけのためのステージに終始したのだったし、嗣永桃子のファイナルも、その現場に揃っていたはずの Berryz工房メンバーによる一曲だけの復活といった趣向もなく、あくまで嗣永桃子による、カントリー・ガールズのメンバーを従えた ももち先輩のための青海野外特設ステージであった。
モーニング娘。’18 12期メンバー尾形春水を送る卒業ライブも、なんらサプライズを必要としない、やさしい、落ち着いた、尾形らしい卒業セレモニーとなった。
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そう、尾形春水はやさしい女の子であった。当サイトでも何度か言及しているように、一人だけジップスライダーに参加しなかったり、ロケ先でミツバチを異様に怖がったり(『ナルチカ日帰り里山旅2017』)、バイクレースに参加しないで最初っからスタートフラッグ役だったり(『MORNING MUSUME。’18 DVD MAGAZINE Vol.106』)、尾形春水は、その “気持ちのやさしさ” が目立っていた。加入当初の握手対応の良さも、その気持ちの柔らかさの表れだったのかもしれない。ファンからは「人が良すぎてやっぱこういう業界っぽさは全然無い」とまで言われるほどに。
一方、その “やさしさ” が、気持ちの弱さとして現われることになって、一時は激やせが心配されることもあった。
そんな尾形だから、卒業が明らかにされたときも、残念がって惜しむ声と同じくらいには、尾形のためにこそ安堵するファンの声もまた聞えたてきたことは、驚くにはあたるまい。
このように、尾形に “気持ちのやさしさ” を見て取り、だからこそ、むしろ卒業に安堵するほど、裏でいろいろと苦闘もしていたであろう姿を想像していたファンの見方は、卒業セレモニーでのメンバーのコメントによっても裏付けられたようだ。
ダンスを絵に描いて覚えると暴露しながら、思った以上に尾形が好きだったと述べたのはリーダー譜久村聖。また、生田衣梨奈のコメントは、モーニング加入当初のリハほどキツイものはないのだからと、これまでの尾形の苦闘を想像させるものでもあった。挙句に「食生活に気をつけて」とも。
あの進行達者の飯窪春菜がいきなり乱れて、後ろで石田亜佑美が「写ってるから飯窪さん!」と慌てていたのも、尾形の飯窪との関係の持ち方を想わせて、セレモニー屈指の名場面となった。レコーディングの再RECのとき思わず歌割りをばらしてしまったエピソードを上手に落着させられず「良くも悪くもアンポンタン」だのと口走りつつも「尾形が一番落ちてる時期を知ってるから、よく立ち直った」と泣きそうになってる佐藤優樹のメッセージこそは、ファンの目が届かないところでの尾形春水の刻苦と努力を物語るものだった。
そして「アンポンタンじゃないよ」とフォローしながら、「モーニングで過ごした4年間を はーちんの青春として覚えておいてね」と述べる小田さくらのメッセージもまた、2014年9月30日に加入してからの月日が順風ばかりでなかったことを伝えて余りある。
どんな馬鹿話にも突っ込んでくれて嬉しかったと語る横山玲奈も、ツンデレでツンばかりであったことを謝る加賀楓も、尾形を評して「やさしすぎる」と述べる森戸知沙希も、尾形の “気持ちのやさしさ” をファンに伝えてくれている。
とりわけ森戸の「これからは一人の友達として私と仲良くして下さい。…って、してくんないの!?」と最後に若干キレたような締めのセリフは、モーニング娘。のセレモニー史に残ったのではないだろうか。
まだ年若い横山が、この武道館ライブで示した態度もセレモニー史に残ることになった。
もちろん同期のメッセージも。
借りたメガネを壊してしまったと言う野中美希も、真剣な話をしていてもずっとニコニコしてると述べる羽賀朱音も。そして何より、気持ちの動揺を隠すためか、こうした場合に常に朗読調を貫く牧野真莉愛の、「いつもはーちんは『春水はどっちでもいいよ』って」「いつも想いを飲み込ませてしまって、ごめんね」というメッセージもまたセレモニー史に刻まれた。
何より、こうした卒業セレモニーにあって、だんだん奥に下がっていくのも、前に出ようとしない尾形春水の気持ちのやさしさが現われたところだったし、メンバーによるメッセージの順番(先輩{9期→10期→11期}→後輩{13期→14期}→同期)もまた、そんな “やさしい” 尾形を、サプライズなく、やさしく送りだそうとする思いやりに溢れていたと言って良さそうだ。
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気持ちがやさしくて、時にその “やさしさ” に足を取られることもあったであろう尾形春水の卒業コンサートは、先に「しめっぽくなりすぎず、いい卒コン」とのコメントを紹介した通り、落ち着いた、やさしい、思いやりに満ちた、卒業コンサートだった。
その “やさしさ” に足を取られることもあったであろうと述べた尾形春水、その最後のステージを評するファンの声を最後に紹介しよう。
「はーちん歌上手くなっててびっくり」
「最後の衣装がすごい似合っててかわいかった」
そう、モーニングで4年過ごした尾形春水は、歌がうまくなって、可愛かった。
「モーニングで過ごした4年間を はーちんの青春として覚えておいてね」と述べる小田さくらのメッセージどおりに。
やはり去り際というのは本人の性格が色濃く反映されるのだろう。それは、控えめな、ほっこりした、やさしいラストコンサートだった。
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