【観劇レポ】演劇女子部『気絶するほど愛してる!』 in 池袋グリーンシアター ~ハロプロの層の厚さとプロフェッショナルとしてのガチさ~

はじめに

池袋グリーンシアターで上演されていた演劇女子部『気絶するほど愛してる!』が、2016年4月3日の日曜日にて、ひとまず東京公演の千秋楽を迎えました。
こちら、順調に鑑賞してまいりましたので、ご報告。5月の後半には大阪のABCホールでも上演されます(公式日程:演劇女子部「気絶するほど愛してる!」)もんですから、当然ネタバレはなしってことで。
しかし千秋楽だけハイタッチ会があるだなんて(演劇女子部 「気絶するほど愛してる!」千秋楽スペシャル!)、それ、もっと早く言っておいて欲しいですよね。いえ、別に悔し涙を流してるわけではありませんが。だから流してないってば!

今般の舞台で特筆すべきこと キャストよりもテーマよりも

この演劇女子部の舞台、実際に観に行く前から、それはもう、見所満載すぎて舞台に集中できるかどうか自分を疑うほど。
先の舞台『サンクユーベリーベリー』で、その再演という前提を越えて先輩たちのファンに対しても自分たちの透明感を刻みつけた つばきファクトリーが、今また演劇女子部の舞台に上がるということ。新メンバーを迎えて新しい一歩を踏み出したカントリー・ガールズが初の主演舞台に挑むということ。何人かのメンバーが男役に挑むということ。そして、投稿者個人として注目しないではいられない、初めての女性役の つばきファクトリー小片リサさんの様子など、など、観に行く前から見所満載すぎてワクワクがとまらない始末でありました。

実際に鑑賞しても、男役に挑んだ つばきファクトリー岸本ゆめのさんのスタイルの良さだったり、不安定なメンタルの人気ボーカリストの戸惑いを演じ切るところだったり、同じく男役に挑んだカントリー・ガールズ山木梨沙さんの隠しきれない端正さだったり、いちばんにたくさんの役柄を演じ別けた つばきファクトリー新沼希空ちゃんの愛らしさだったり、いろいろ観察した結果、意外と実は腹黒かったり毒舌だったりするのではないかと思わせる小片リサさんの様子だったり、何より、どこで何をしていようが、どうしたって目立つ我らが須藤茉麻の存在感だったりと、事前の期待を上回るその舞台に、大満足して帰ってきたという次第。

上述のようなメンバーに焦点を合わせた見所だけじゃなく、今般のお芝居は、ステージ上のアイドルとファンの関係、ファンの側の揺れ動き、推し変、そして、ステージ上での自分と生身の自分との違いに自分で戸惑うアイドルや、そうしたアイドルを愛するということの一つの形など、(まあ、ちょっとタイミング的に微妙な話題ではあれ)ハロプロを愛するからこそ劇場に足を運ぶ私たちファンにとって他人事ではないテーマが扱われており、この意味でも、いろいろ刺さる舞台でした。

と、いろいろ駆け足で書いてきましたが、上述の一切をまるっと捨て去って、とりわけ須藤茉麻さんと小片リサさんより先に特筆することは自分としても忸怩たるものがありつつ、今般の舞台は、カントリー・ガールズの稲場愛香さんが、全部かっさらっていったと、そう断言したい。
稲場愛香さん、すごかった。

主演女優 稲場愛香

最初に投稿者は謝っておかねばなりません。
これまで稲場愛香さん(いや漢字は違うけど「稲場さん」って書いちゃうと、音の響きから別の人を思い浮かべてしまうのでフルネームで)の魅力と才能を過小評価してきたことを。

いや、もちろん、カントリー・ガールズに加入早々からハロ!ステ ダンス部に抜擢されていた、そのダンスの冴えは目にとまっていました。清水佐紀さんが(本人の選択もあってか)表に出てきてくれないからには、今現在のハローのダンス的フィジカルの3トップは、中島早貴(℃-ute)、石田亜佑美(モーニング娘。’16)と、そして稲場愛香さんだとは思っていました(トップ5にするなら、ここに舞美ちゃんと、アンジュルムの佐々木さんを入れたいところ)。
もちろん、「劇団ももち」のキーパーソンとして、上手にお約束のきっかけを作り、ももち先輩だけではなく、山木さんへのナイスパスを出したり、森戸知沙希さんや小関舞さんの面白いところを上手に引き出したり、新人メンバーをフォローしたりと、劇団内において八面六臂の大活躍であることも、知ってました。

しかるに、今般の舞台に接するに、上述のようなことが、実に皮相で、私はいかにも稲場愛香さんを過小評価してきたのだなと気付かざるを得ないところ。

稲場愛香さんの感情を揺さぶる演技は、すさまじかったです。
いや、ハロプロ、どんだけ層が厚いんだと。

登場してすぐの、セーラー服姿、そのスカート丈も長い ”昭和” なテイストながら、稲場愛香さん、めっちゃ可愛くてビックリしたことも併せてお伝えしつつ。

脚本の説得力を凌駕する、感情を揺さぶる見せ場

稲場愛香さんが演じるヒロが、大演説をぶちまけるシーンがありましてね。

そのシーンに至るまでのストーリィの展開も、ヒロにそうさせるだけのビリー(岸本ゆめの)側の苦悩や葛藤も、実は、それほど脚本上説得力があるものではありませんでした。ってか、お話しそのものは、いろいろ詰め込んであって、しっかりストーリィが展開し出すまでの前提的な紹介部分も非常に駆け足だったり、ヒロの立ち位置(ファン仲間内部でも、ステージに上がることになってからも)も素直に納得できない無理矢理な部分も多く、大枠の設定はすんなり理解できても、「お芝居」として、説得力のある形で積み重ねられる部分は、若干弱いかなと思ったり思わなかったり。
全般的にキャストのファインプレー(茉麻の偽ラーメン屋の割烹着姿だったり、小片リサさんの「ファンの掟」ダンスの半眼な感じだったり、そのまんまと言っても良い森戸ちゃんの世間知らずな様子だったり)に助けられ、お芝居としての構成上の無理が目立たない感じ。

ここ大事なところだと思います。率直に言って、「お芝居の構成」としては、流れるような説得力があったわけではない。だから、稲場愛香さんの大きな見せ場も、そこに至るまでに脚本上積み上げてきた物語が前提として効いているわけではない(と、投稿者には感じられた)。
にもかかわらず、この場面での稲場愛香さんの大演説には、うっかりこちらも感情を動かされて、危うく涙腺が決壊するところでした。
ってか、稲場愛香さん、ちょっと泣いてません?

テーマを際立たせる演出の構図とセリフの抑揚

稲場愛香さんが演じるヒロが、客席に降臨して、客席からステージをみつめて独白するシーンがありましてね。

物語が一応の結末を迎えてから「その数年後」みたいな場面。
これも、実際、稲場愛香さん演じるヒロは、愛する妹が「ビリー星野とガラパゴスキング」のファンだったわけで、ヒロ本人が「ガラパゴスキング」にハマったことは、あんまり説得的に描かれていなかったわけですし、「ガラパゴスキング」にある事情から深入りすることになってからも、むしろ劇中で明示された限りでは、ヒロは、うんざりして「ガラパゴスキング」のことが嫌いになってしまうほうが納得できるかもしれないような展開だったりします。ですから、ここでも、舞台の上で積み重ねられてきた物語上の説得力が背景となって、その場面のセリフの前提をしっかり準備してくれているというわけではないように投稿者は思っています。

それでも、この独白は、ひどく刺さります。
独白の内容だけではなく、そのトーン、抑揚、セリフ回しと表情までも

そして、散々 ”お芝居としては弱い” などと言いながら、このシーンでのヒロの登場の仕方から、ステージに対面しながら、ステージには現われないところ、明るいステージを暗い客席側から見つめている、その対比の構図など、その独白の内容と相俟って、この場面の演出は(おなじファンとして)胸に刺さりました。
ここは、私たちファンにとって他人事ではないテーマが実に明瞭に表現されていて、そして稲場愛香さんは、その演出の構図を、これ以上ないくらい見事に表現していたように思いました。
稲場さんが独白している客席は、明るいステージと比べて暗く、ステージ上のキャストの顔が明るく照明に照らされる一方で、客席からステージを見つめるファンに照明が当たることはない…そういったことを全部含めて。

*****

いや、カントリー・ガールズ稲場愛香さん、すばらしかった
観ているこちらの感情がずいぶん揺さぶられました。投稿者は、お察しの通り、この『気絶するほど愛してる!』には、もちろんのことに、須藤茉麻さんや小片リサさんを絶讃するレポを書くつもりで出向いたというのが正直なところです。しかし、稲場愛香さんを後回しにはできませんでした
すばらしかった。ってか、むしろ凄かった

キャストのナイスプレー 演劇女子部の層の厚さ

上述のとおり、個人的には、物語そのものの説得力はあんまり感じなかった投稿者です(申し訳ない)が、むしろ、だからこそ、キャストの個々のナイスプレーというか、キャスト側の個別の振る舞いが際立っている部分もよくわかる舞台でした。

カントリー・ガールズ 森戸知沙希さんは、病弱ながらお金持ちな「ビリー星野とガラパゴスキング」の親衛隊メンバー。この、「病弱ながらお金持ち」な微妙に世間知らずでお人好しな感じが(そのまんまかも知れないけれど)とてもストレートに表現されていました。
疑おうと思えば疑えることがあっても、ファンとして、一途に、愚直なまでに信じているところも、そうして信じ続けた結果、それなりにラストで報われているけれど、その報われ方もまた節度あるところも。森戸ちゃんそのままというか、森戸ちゃんに、実にピッタリというか。
ってか、森戸ちゃん、60年代風のワンピースが可愛いすぎますよね。

つばきファクトリーの岸本ゆめのさんは、「ビリー星野とガラパゴスキング」のメインボーカルであるビリー星野役。やんちゃで悪そうな男役が実に映えます。悪そうっす、きしもっちゃん。
しかも、ひょろっと長身なところも、実はメンタルが不安定なビリー星野の揺れる気持ちを表現するのに、実にピッタリでした。

熱狂的な「ビリー星野とガラパゴスキング」親衛隊の隊長役の小片リサさんは、これは投稿者本人の思い入れがあるので8割引きで聴いてもらってちょうど良いわけですが、赤地に水玉のワンピースにデニムを羽織った姿が美しすぎました。刊行がスタートした つばき のDマガの体力測定企画でも、「その足、ちがくない?」とか、「膝が曲がってる」とか、細かいところにうるさい小片さんですが、なんだか、本気になったら、それこそ道重さゆみさん並に毒舌だったりするんじゃないでしょうか。
親衛隊の掟をミュージカル仕立てで歌うところ、あえて半眼の表情を作っているのは、あれは演出なのか、それとも「薄い」自分を自覚した上でのアドリブなのか。

アドリブなのか迷うのは、同じく親衛隊員役の つばきファクトリー山岸理子ちゃん。
とある事情から親衛隊活動に穴を空けることが多くなった稲場愛香さん扮するヒロを問い詰める場面で、稲場さんの背後から肩にアゴを乗せる様子を披露。めっちゃ面白かったんですが、ほわほわして可愛いばっかりの理子ちゃんだけど、きっと数年後、めちゃくちゃ美人になると、その横顔から予測中の投稿者です。

美人といえば、演劇女子部の石井杏奈さん、冒頭でいきなりキャスター風に登場して、うわっ何だこの美少女は!とか思いましたよね。思いませんでした?

我らが須藤茉麻は、劇中、ラーメン屋さんに扮して割烹着を着用したり、何かとオーバーアクション気味の演技も、なんだか楽しそうで、もはや何をどうしたって目立ちます。他にも劇中、自身が経営するライブハウスに大物プロデューサーがやってきたという体裁で、客席に降臨してお客さんを巻き込む場面も。あれは、巻き込まれたお客さん、うらやましかったな。「誰のファン?」って聴かれたら、私なら迷わず「茉麻!」って答えたのに。

劇の本編終了後は、カントリー・ガールズが楽曲を披露してくれます。
カントリー・ガールズのメンバーの、腰を落とした低い位置でのツイスト、投稿者はステージと同じくらいの目線になるD列から見たんですが、ビビるくらい腰が低いのね。山木さんも森戸ちゃんも。
上述の演技などの一切を含めて、軽く自然にやりこなしているようでいて、どんだけレベル高いことをやってるんだと。

他にも親衛隊を演じる つばきファクトリーによる日替わりの漢字クイズ(この場面はアドリブにて)など、楽しい趣向が盛りだくさんのサービス満点の舞台でした。「楽しい趣向が盛りだくさんのサービス満点の舞台」とか書いて締めようとしつつ、やっぱり、メンバーたちのファインプレーのあれこれを再度強調しておきたいところです。軽く自然にやりこなしているようでいて、どんだけレベル高いことをやってるんだと。
まったくハロプロって、層が厚いというか、育成がしっかりしてるというか、メンバーたちが真面目に取組みまくってるというか、そのエンタメとしての「ガチさ」に、改めて感じ入った次第です。

気絶するほど愛していた そのガチさを込みで

今般の舞台、散々「お芝居としては弱い」みたいなことも書いちゃいましたけれども、それでも、テーマとして取り上げられたものが、私たちファンにとって他人事ではない点は、いろいろ刺さりました。親衛隊たちの「推し変」などは、まだ微笑ましい方で、ステージ上の自分と生身の自分の違いに自分で戸惑うアイドルだったり、私たちファンが、どういった形でアイドルを愛しているのかといった、なかなか重いテーマが取り上げられています。
それはネタバレを回避するため詳述できませんが、ハロプロを愛するからこそ劇場に足を運んだファンに、それぞれ大事に持ち帰る何かを残したのではないでしょうか。

そして、それ以上に。
稲場愛香さんを始め、白熱の演技で舞台を務めたメンバーたち。彼女たちが演じたお芝居では、自分たちが当のアイドルとして日々接している「業務」や「ファンの想い」が舞台の演目として取り上げられ、そうしたテーマに沿って、脚本を掘り下げ、セリフを解釈することが要求されたわけですね。
私たちファンにとって他人事ではないように、ファンに愛されるアイドルとして、メンバーたちも当然、生身の自分たちと重ねる部分があったであろうお芝居です。

それは、「ステージの上のアイドルと客席のファン」という図式だけに留まるものではありません。上に「エンタメとしてのガチさ」と書きました。それはもちろん、今般の舞台で、とりわけ稲場愛香さんの感情を揺さぶる演技とすべてのキャストの「まんますぎる」ほど的確な役柄へのハマリ具合についても、ラストに演じられたカントリー・ガールズの楽曲披露についても、そして、それらが(Web番組で配信されたバックステージでの様子に明らかなように)厳しいスケジュールを縫って短い練習時間の中で創り上げられていることも、さほど人生経験が豊富ではないはずの少女たちが(専門家の力を借りながら)自分たちで手探りでステージを創り上げているところも、そうした一切の「エンタメとしてのガチさ」もまた、それらガチな営為によって創り上げられる舞台の演目そのものに、再帰的に響いて、生身の自分たちと重ねる部分があったであろう今般の演劇女子部です。

ファンに愛される自分たちであること、そんな自分たちがファン側の気持ちを掘り下げ解釈して舞台に望むこと、そうしたプロセスの一切に、ガチンコで取り組んでいること、そうして創り上げられたステージに、ファンのみなさんは足を運んでくれること。
これらの一切が、そのように毎日の営為にガチに取り組んでいる彼女たちの今後のパフォーマンスに、どんな影響を及ぼすことか、ファンとしては楽しみでなりません。

こぶしファクトリーも、つばきファクトリーも、結成して早々に舞台を踏んでいます。投稿者が思うには、これは、結成間もない頃に、まとまった期間の共同作業をさせて別人格を演じる経験をさせることで、グループの結束を本人たちに実感させようと、ちゃんと意図された采配だろうと見ています。そして、この舞台『気絶するほど愛してる!』もまた、お芝居そのもののすばらしさ以上に、演じるメンバーたちへの教育効果も視野に入っているのではないかとすら、思っています。

可愛らしいルックス、愛らしい振る舞いや言動、つんく♂さんを初めとするプロによる心に染みるサウンド、メンバーたちの物語…と、ファンにはそれぞれメンバーたちを愛するポイントがあるでしょう。でも、最初の入り口がどのようであったとしても、長くハロプロのファンを続けて行くうちに、やがて、そうしたポイントに加えて、エンタメとしての、ステージとしての、プロフェッショナルなガチさにもまた魅入られることになるのだから。

というわけで、こればっかりは、後日発売されるであろうDVDに、バックステージの模様も特典映像として追加して欲しいんです。誰か読んでないかな、ここ。(← なぞの呼び掛けということで、熊井ちゃんのマネをしてみました)

*****

Berryz工房の「おふざけ」もまた、プロフェッショナルなガチの技でした。

池袋から帰ってきて、2015年の3月1日に放送された『BZS1422最終回特番~いつかまたやりましょうねスッペシャル!~』の音源なんかを聴き直して、その番組中にお送りされた『永久の歌』で、また泣いたりして。
ええ、カントリー・ガールズ稲場愛香さんの劇中セリフ通りに、気絶するほど愛していましたからね。

(文=kogonil)

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コメント一覧

1 : avatarpuke:2016/04/04(月)13:16:38

ミュージカルとしてストーリーを伝えようとする都合上、「お芝居としての弱さ」は致し方ないかなと自分は納得していますが、それと引き換えに、あんな近くでハロプロメンバーのダンスと歌を見ることができ、気絶しそうでした。つばきファクトリーのききちゃんは真っ赤なヒールで、よくまぁあんなにキュインキュインとひざから下を回せるもんです。個人的MVPです。

帰りしなに、ききちゃんの写真を衝動買いしてしまい、お財布の中身が危機ちゃんでした。

2 : avatarkogonil:2016/04/04(月)13:31:29

「にもかかわらず」の稲場さんの迫真さを伝えたかったので、お芝居の弱さをことさらに論っているわけではありません。
なかなか達意のものが書けず、恐縮です。

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>みなさま

>pukeさん
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「〇〇がりさまる」と言えるフレーズを探す旅に出ます。探さないでください。

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