モーニング娘。’21 野中美希Presents『SONGS FOR YOU』が思い出させてくれるハロプロの魅力

単独ライブとバックステージへの渇望を刺激した特番

この野中さんプロデュースの特番が配信された2021年、ハロプロは、コロナ禍対策として(誰か感染者が出てもグループ全体、ハロプロ全体が一網打尽に活動停止に追い込まれぬよう)グループシャッフルでのライブツアーを敢行し、個々のグループ単独でのライブは非常に抑制されていました。
そんなところに降ってきた特番ってわけで、そりゃ、モーニング娘。単独のライブを待ち焦がれていたファンには刺さりますよね。

上(前ページ)にはDVDマガジンにも触れましたけど、オープニングのメンバー紹介風のエフェクトも、単独ライブのバックステージを追ったDVDマガジンを彷彿させるものがあって(これも素材は野中さんが準備したっていう風に取れるトークもあったけど、ちょっと自信なし)、干天の慈雨となったどころか、ますます単独ライブとバックステージDVDが渇望されることになります。

むしろ、それほど(ファンの渇望を亢進させるほど)しっかり造り上げられていた配信特番だったってわけで、その意味で、改めてプロデュースした野中さんの有能さに触れないわけには行かないですよね。

野中美希プロデューサーの驚くべき有能さ

アフタートークでは、ところどころメンバーの口を借りて、今回の特番に向けた野中さんの奮闘が語られます。
ってわけで、ここでライブの選曲を再掲。

Miki Nonaka presents モーニング娘。’21 ~SONGS FOR YOU~
01.『独占欲』(モーニング娘。 2004年)|全員
02.『女と男のララバイゲーム』(モーニング娘。 2010年)|全員
03.『青春時代 1,2,3!』(プッチモニ 2000年)|生田、石田、小田(でんでんでん)
04.『I&YOU&I&YOU&I』(タンポポ 2002年)|羽賀、横山
05.『印象派 ルノアールのように』(エレジーズ 2005年)|譜久村、北川
06.『恋のヌケガラ』(美勇伝 2004年)|牧野、森戸
07.『壊れない愛が欲しいの』(7AIR 2003年)|佐藤、野中、加賀
08.『ロボキッス』(W(ダブルユー) 2004年)|岡村、山﨑
09.『Wonderful World(English Ver.)』(Juice=Juice 2015年)|野中美希
10.『Swing Town』(野中美希オリジナル)|野中美希
11.『メッセージ』(野中美希オリジナル)|野中美希
12.『Give me 愛』(モーニング娘。 2011年)|野中、牧野、羽賀
13.『晴れ 雨 のち スキ♡』(モーニング娘。さくら組 2003年)
   |生田、佐藤、羽賀、加賀、岡村、山﨑
14.『愛の園~Touch My Heart!~』(モーニング娘。おとめ組 2003年)
   |譜久村、石田、小田、野中、牧野、横山、森戸、北川
15.『Happy大作戦』(モーニング娘。 2013年)|全員

セットリストを決めただけじゃなく、メンバーの衣装やスタジオセットまで、野中さんが決めたようです。
全体的な演出も、テレビで映えるようにしたんだとかで、確かに某地上波深夜番組のライブパートでは、現場であれほど魅力的なメンバーのパフォーマンスが、なんか色褪せて見えたりしていたことに比べたら、今回の特番はその点でも出色だったわけですけど、そこいらへんの演出にも野中さん絡んでいたようです。すげえな。

アフタートークの司会が飯窪さんだって知らなかったと証言した森戸ちゃんの発言からは、衣装やセットなどの進捗についても、細かくメンバーへ連絡していたようで、こうなると野中さん、プロデューサーどころかマネージャーまで兼任しているようです。

トップの『独占欲』は、小田さくら先輩の提案だったようですが、そこで、最近やってない楽曲だからって以上に、ソロパートを勘定して「7人歌える!」ってことに着目した野中さん、できるだけみんなにソロを割り振りたかったって言います。『青春時代 1,2,3!』については、生田衣梨奈さん、石田亜佑美さん、小田さんが担当しますが、当の生田さんが「強めなメンバーに、この楽曲を当ててくれて」感謝を述べる場面すら。そのメンバーのシャッフルについては、野中さんが独断で決めたんだそうで(一方、衣装などはメンバーに希望を聴いたようです|それでもその場でメンバーの希望を絵に起こしてスタッフさんに伝達するといった有能さ!)続く『I&YOU&I&YOU&I』の、羽賀朱音ちゃん、横山玲奈さんという可愛さの自作自演・自画自賛が甚だしい2人の組み合わせも見事です。ちらっと、衣装の希望に触れましたけど『ロボキッス』では、山﨑愛生ちゃんのスカートに正しくパンダさんの刺繍が縫い付けられていたりして。

リーダーで9期の譜久村聖さんと15期の北川莉央さんの組み合わせとなった『印象派 ルノアールのように』については、組み合わせのギャップに驚くリーダー譜久村さんに対し、野中さんは15期のオフィシャル本を読んで、北川さんが譜久村さんをライバル視していることを把握した上での組み合わせであることを述べています。資料的な下調べもぬかりないってことです。続く『恋のヌケガラ』は、牧野真莉愛さん、森戸知沙希さんという、現役屈指のビジュアルメンバーが担当しますが、野中さん曰く、声質も低いキーの曲が似合うと思ったとのこと。事実、担当したメンバーからは歌いやすかったとの声も。
いや、野中さん、どんだけ有能なのかと。

作詞作曲のオリジナルソングについては、なかなか自分の心情を表に出すことが上手じゃないので『メッセージ』という楽曲にすべてを託したと言う野中さんです。一方の『Swing Town』については、あれほど音楽については野性的な勘も鋭いだけでなく、専門的に学んでもいる佐藤優樹さんが、バックダンサーをやりたいと言うほど。これらのオリジナルソングについては、なんと加賀楓さんが、これまたオリジナルな振り付けを担当したんだとか。

また、現在そういう具合に分割されることはないけれど、それでも一応は「おとめ組/さくら組」って振り分けはあるんだってことで、その割り振りとは逆の楽曲を割り当ててみたという『晴れ 雨 のち スキ♡』と『愛の園~Touch My Heart!~』でしたが、これがきっかけとなって、まだ「おとめ組/さくら組」の割り振りが未定だった15期が、急遽、スタッフさんによって割り振られることになったとも。

この特番の配信のせいで、ますますモーニングの単独ライブと、そのバックステージを追ったDVDマガジンへの焦燥が駆られると、そう述べましたが、この先に予定される(コロナ収束後の)単独ツアーは、ぶっちゃけ野中美希プロデュースで良いのではないかと、そう思えるくらい、どこまで有能さを発揮するんだ野中ちゃん!って感じですよね。

メンバーの魅力のフックとして

そんな有能さも、やっぱり内部でメンバーを見続けているから、メンバーのことが良くわかっているからこそという側面も大きいんでしょうね。

牧野さんと森戸ちぃちゃんに割り振られた『恋のヌケガラ』は、メンバーの声質から低いキーの曲が似合うと思ったからだと言いますし、メンバーも歌いやすかったと言います。そして、改めて美勇伝の良曲を再認識することにも繫がります。メンバーの特徴がわかってるって言うなら、オリジナル曲のコレオグラファーをお願いした加賀ちゃんなんて『壊れない愛が欲しいの』では最初っから最後まで動きっぱなしです。

あの高橋愛さんのタメこそ見所だった(そして2015年のカウントダウンでは音響さんのミス{← たぶん}により鞘師里保さんのタメが中途半端になってしまった|参考→https://www.entamealive.com/report/629/)『女と男のララバイゲーム』は、今般、タメが控えめで、だからかえって小田ちゃんの歌詞の抑揚が明瞭だったり。『青春時代 1,2,3!』で、軽くやってるように見える生田さんの身体の横側面に真っすぐな蹴りが、実に綺麗だったり、『印象派 ルノアールのように』の衣装から生足がチラ見えしてる譜久村さんが妖艶だったり。

そして、牧野ラブリン真莉愛さんと岡村ほまれちゃんの、抜群のスタイルとステージ映えする肢体に見惚れます。

これらの一切について、個々の特徴的なポイントが大事なわけでないことは、言うまでもなくて。
例えば動きっぱなしで素晴らしい身体能力だから加賀ちゃんが凄いのではなく、加賀ちゃんが(言葉に出来ないレベルで)魅力的だからこそ、そのこと(加賀ちゃんが魅力的だってこと)を言いたいがために、その身体能力がピックアップされているように。抜群のルックスだから牧野ラブリンとほまれちゃんが素晴らしいのではなく、もう、どうしたって真莉愛さんとほまれちゃんに魅せられるから、その抜群のルックスに触れないではいられないように。生足がチラ見えしてるから譜久村さんが魅力的なんじゃなくて、フクちゃんがあまりにも愛らしくて可愛らしいからこそ、そんな衣装にも注目しちゃうわけで。スカートにパンダさんが刺繍されてるからメイちゃんが可愛いんじゃなくて、もうメイちゃんが愛らしくてたまらないから、メイちゃんのパンダさん愛に託さざるを得ないように。

ええ、ほんとに、単独のライブと、そのバックステージを追ったDVDマガジンが楽しみですよね。

そして繰り返し、今般、MVPに輝いたことや、特番のプロデュースにあたって、その有能さと誠実さを随所に発揮したから、だから凄いのではなくて(いや、凄いんだけども)。そうではなくて、ふと気が付いたら、時に “こわばっていた” 笑顔が、あまりにも素直に眩しく魅力的な笑顔になっていたから、だからこそ、野中美希さん、ほんとに素晴らしい仕事をしたかと思います。

野中さん、おつかれさまでした。そして、ありがとう。
さらに、そして、次のライブツアー、楽しみにしていますね。

(文=kogonil)

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