ISEKI『街 feat.矢島舞美』ミュージックビデオが名作だと話題

元キマグレン ISEKI のアルバム『AOR FLAVA -silky red-』(10/25 リリース)に収録されている新曲『街 feat.矢島舞美』のMVに、その曲名のとおり元℃-ute の矢島舞美が出演し、話題になっている。あまりにも名作であると、コアで気難しいアイドルファンにも大評判なのだ。

このアルバムに収録されるコラボ曲に矢島舞美が出演することは比較的早い時期から告知されていたが、「どうせメインのアーティストと恋人同士の役なんでしょ?」とか、「どうせ、ちょっとだけしか出てこないチョイ役でしょ?」と、この情報をフォローしていた一部のファンからは微妙な反応が出ていたが、いざ公開されてみると、こうした熱心な「アイドル」ファンの身構えた予測は、意外な方向に裏切られていた。

新曲『街 feat.矢島舞美』のMVに登場する矢島は、「チョイ役」どころか、ほとんどのシーンで登場している。加えて、MV上では、確かに恋人役としての登場だが、上記の繊細なファン目線に配慮した(従って、今後の矢島の活動にも配慮した)というわけでもないだろうが、恋人然として男性とツーショットで登場する場面は1カットもなく、カメラのフレーム越しに、MVを見ている視聴者の主観シーンとして撮影されている。

このように、事前に抱かれた懸念材料が、綺麗に嬉しい方向で裏切られただけではない。MVで描かれる矢島が、いかにもファンが愛した矢島のエッセンスに満ちている上に、この『街 feat.矢島舞美』そのものが、ファンが矢島に託す「これから」をも象徴しているかのようで、とりわけ「ハロプロのファン」目線に立った上でも、「あまりにも名作」であると評判なのだ。

登場する矢島は、帰宅途中の待ち合わせと思しきシーンや、夕食の買出しシーン、楽しみにしている旅行の準備をいかにも嬉しそうにしているシーン、掃除や調理や自家用車の洗車など恋人と過ごした日常のシーンなど、幸せな毎日を送り、最愛の恋人と共にあって、自らの幸せを微塵も疑っていないような、あのファンから「天女の笑顔」と称された笑顔に満ちている。自らの幸せを疑っていないことに加え、ファンに言わせれば、愛する恋人(ファインダー越しの、フレーム越しの、こちら側)を信頼し気遣うことが基調となった慈母のような矢島の満面の笑みが、その魅力を隠しようもなく全開であることに、まずは多くのファンが、久しぶりの矢島の微笑みとの再会を喜んだようだ。

しかし、画面上の幸せそうな矢島の姿から一転、切なげに歌う歌詞に注目するや、この幸せ一色な矢島の笑顔のシーンは、歌い手の “回想” だということがわかる。一人でコインランドリーで洗濯している場面なども併せ、矢島との幸せな場面は過去のものであること、今現在は、この幸せなカップルは別れてしまっていることがわかるのだ。

この、”幸せそうな笑顔がすでに過去のものであること” に、矢島舞美との出会いのきっかけであった「℃-ute の解散」という経緯を重ねる者も多いが、何よりも、今となっては過去のこととして回想される ”昔日の、在りし日の矢島” が、幸せそうな笑顔ばかりであることに大きな意味を見出す向きもある。
カップルの別れがどのようなものであるかは不明だが、お互いのすれ違いに怒り悲しむ矢島でもなく、あるいは病み疲れていく矢島でもなく、どのような別れであろうが、懐かしく思い出されるのは ”笑顔の矢島【だけ】” であるということに、MV製作者への共感を示すファンは多く、このMVに寄せられる賞賛の声には「作り物の虚構作品だって、わかってるけど。でも、この人には幸せになって欲しいと心から思う」というものが見られるほど、ファンが矢島舞美の幸せを願う気持ちが、MVの中の虚構のストーリーと、実に見事に共振しているようだ。

思えば、小学校5年生でオーディションに挑んでより此の方、細くて痩せっぽちだった小さい女の子が、美しい女性に成長するまでの15年に及ぶ道程そのものを「作品」としてファンに提示してくれた矢島舞美。その「アイドル」を卒業してからの「これから」を、あたかも象徴として見せてくれたかのような作品に仕上がっているというわけだ。

元キマグレンの ISEKI のアルバム『AOR FLAVA -silky red-』収録の、『街 feat.矢島舞美』のMVが、矢島舞美というタレントの来歴と内面を見事に描いて、名作だと話題だ。

(文=椿道茂高)

 

エンタメアライブでは、皆様からの投稿を募集しています。
詳しくはこちらを御覧ください『寄稿について

Sorry, the comment form is closed at this time.