最後にファンの幸せを祈ってステージを降りた嗣永桃子 ~ラストライブ ありがとう♡おとももち in 青海野外特設会場~

天気予報は雨。実際に昼前までは小雨でした。
雨具を準備するには微妙な程度の小雨とはいえ地味に大粒で降り続いていた雨も、開場時間前後には止んだけど、雲は低く垂れ込めていて、気温が高いこともあって、まー蒸すこと蒸すこと。蒸す上に海浜ってことで水場が近いからか、蚊などの虫も飛んでくるので、微妙に不快指数上昇中ってところ。
それが、海に近いおかげか、ときおり、とっても爽やかな風が吹き抜けて、オープニング・アクトが終了する頃には、晴れやかな感じで雲が散っていきます。とっぷり日が落ちるまでに間があったおかげで、爽やかで涼やかな黄昏時を背景にメインのライブが展開することになって、それはもう絶好の野外ライブでした。

2017年6月30日、お台場は青海の野外特設ステージにて、「ももち先輩」でお馴染みのハロプロが誇るプロフェッショナル・アイドル嗣永桃子さんの、芸能生活15周年を記念し、同時に、15年の芸能生活を締め括るラストの引退コンサートが開催されました。

低く垂れ込めた雲は爽やかに散っていき、雨上がりの蒸した空気は涼しげな海風が散らしてくれて、野外ライブの醍醐味が絶妙な感じで現出した特設ステージにて、とっぷり日が沈む前のセピア色な感じの夕暮れ時を背景に、嗣永桃子さんと、嗣永桃子さんがその芸能生活の最後の日々を共に過ごした愛しい後輩たちの歌声が響きます。

これに与っては、同期の龍神様のご加護もあったのかも。

嗣永桃子 ラストライブ in 青海野外特設会場

終演後も座席ブロック毎に規制退場となったくらい、周辺を含めた大人数の動線に配慮しなければならなかった野外での特設ライブ。これは嗣永桃子さん本人によるたっての希望で実現したものであるらしく、雨が降ったらどうするんだというツッコミに「それならそれで伝説になる」と返したとか(しばらく真偽不明の伝聞情報だったけれど、一夜限りの復活版である6月29日放送の文化放送「嗣永桃子のぷりぷりプリンセス~ももちフォーエバー~」にて本人の証言あり)。
冒頭でも述べたとおり、むしろお天気に恵まれつつ、おそらくは、その「人出」の捌きに配慮する一環として少しでも当日の物販をスムーズにすべく、浅草橋のヒューリックホールで物販が前日にも実施されたわけですが、この事前の物販で、諸々めちゃくちゃ売り切れが続出して、平日の夕方から浅草橋に延々数時間並びながら、それでも何も買えないファン続出ということで、こっちも伝説になりました。

そんな具合に、周到に参加者の動線に配慮したせいか、今回、開演時間からの入場列の流れはスムーズだったかと。

「ももち」による「ももち」のためのラストライブ

15年の “ももち” としての疾走のラストとなるこの日、たくさんの後輩たちだけでなくOGから同期まで、多くの仲間が嗣永さんのラストステージに参加していたようです。すでに、このライブに訪れたハロメンやOGについて、道重さゆみさんの年齢を感じさせない愛らしさも、夏焼雅さんの「いや、雅ちゃん、ももちのこと好きすぎでしょ」とか、「ある意味、ネタ化しつつある」とまで言われる、その弾けっぷりも、あちこちで話題です。
何より、これまで、こうした場面には頑なに姿を見せてこなかった、あの末っ子メンバーも、この日は青海特設会場の関係者席に登場。菅谷梨沙子さんの降臨については伝聞情報の域を超えていなかったところ、翌日になって須藤茉麻さんのブログ雅ちゃんのインスタで、確かに梨沙子さんも参加していたことが明らかになりました。とか言ってるうちに、本人のブログまで更新されたり。

それでも、一部のファンが事前に期待していたような “一夜限りの Berryz工房復活” はありませんでした。

後述するように、この15周年を記念するにあたって、その歩みをふり返るといった演出もあったけれど、Berryz工房メンバーの登壇どころか、OG によるお手紙読み上げの式典すらありませんでした。

同様に、『ギャグ100回分愛してください』のMVが特別にフィーチャーされたりしてましたが、ビジネス・パートナー徳永千奈美さんの登壇も、VTR による登場さえも、ありませんでした。

℃-ute の解散ライブが、あくまでも15年間走り続けた5人による5人のためのライブであって、かつてのメンバーやベリキュー合同の登壇がなかったように、今回の嗣永桃子さん15周年記念の引退ライブには、Berryz工房メンバーの登壇や Buono!関係者の登場はありませんでした。
なくて、よかったと思っています。

いろいろと意見のあるところで、従って文字通りの意味で「異論は認める」といったところですが、先の℃-ute のさいたいまスーパーアリーナ同様、このライブが、徹頭徹尾、嗣永桃子による嗣永桃子の15年を記念するためのライブであったことは、正解だと思っています。良いライブでした。

そして、「悲しい」とか、「寂しい」といった印象が強く残ることのない、あくまでも「楽しい」ライブでした。
ほんとに、良いライブでした。

6人体制ラストのカントリー・ガールズ

そんな、”ももち” による “ももち” のためだけのラストライブには、その “ももち” が「ももち先輩」として愛を注いだ後輩たちが大きな花を添えてくれました。
オープニングの演出の他、ライブ本編後半パートは、あたかもカントリーのライブに参加しているよう。

そんなカントリー・ガールズに触れて、簡単にいくつか。

上記、チラっと触れた物販のことですが、今般販売された「Country Girls DVD MAGAZINE Vol.8」と、「嗣永桃子♡ 卒業メモリアル」DVDは、ワンセットとなっております(もちろん別々に購入するんですが、内容的に合わせ鏡的な感じでお互いを補い合っている DVD となっています)。
まだ通販で購入できるのでネタバレ厳禁につき、詳しい内容は避けますが、「嗣永桃子♡ 卒業メモリアル」DVDで、あんなに「私、演じてますよ」が明らかだったお嬢様、山木梨沙さんが大きくそのスタンスを崩す場面があります。それに続けて、Berryz工房の活動停止発表(2014.8.2 中野サンプラザ)や Berryz工房ラスト(2015.3.3 武道館)を除いて、基本的には、どんな場面でも涙は見せなかった嗣永桃子さんも、大きく調子を崩してしまう場面が見られます。

投稿者は、浅草橋の事前物販でこれらを購入し、この日のラストライブの予習のつもりで、この DVD を見ちゃってから青海にやってきたので、この日のライブの様子も一層響いた次第です(後述)。
この日の嗣永さんを送るという、ただそれだけのためであっても、この愛らしい後輩たちには(この日、ステージに登壇しなかった者も含め)「いてくれて、ありがとう」と、そう思わざるを得ないところです。

梁川奈々美さんのこと

そして、正統後継者とか面白がってしまったこともある梁川奈々美さん。

ここ数本のDマガで、その印象を大きく刷新しています。
これまで、年齢と経験に見合わぬ饒舌と語彙の豊富さに注目されていた梁川さんですが、その得意のお喋りを ももち先輩に掣肘されて困り顔…という場面だなと思っていたところは、自分で自分のトークを制御できない意外な不器用さを、ももち先輩が上手にフォローしてくれていた場面だったのだと、今になって、はっきりわかります。
Dマガ Vol.7 で自転車に乗れない梁川さんをメンバー全員で教えているところも、上述の Dマガ Vol.8 で、部屋の飾り付けにあたって山木お嬢の指示に従ってオーナメントを壁に貼り付けてるところも、ぶっちゃけ、やなみん、めちゃくちゃ不器用です。
で、その不器用さを、お得意の饒舌で煙に巻いて誤魔化そうとするんですよね、やなみん。何と言うのか、極端に喩えてみるなら、「大人からは一目瞭然」な感じで。

だから「空気を読まないで朝から話しかけるな」とか、厳しいご指導をいただいちゃって梁川さんはすっかり困り顔…ってわけじゃ全然なくて、そうではなくて、やなみんは、自分でも上手にコントロールできない自分の個性を適切にアピールできるように、いっぱい嗣永先輩に助けてもらっていたのだと、今になって、はっきりわかります。

そんな先輩を送り出すラストのライブ。そして、ひょっとしたら、このメンバーで立てる最後かもしれないライブで、梁川奈々美さんは、ときに歌いながら、ときにトークの場面で、はっきりと確認できる大粒の涙を頬にスーーッと流していました。まだまだ年若く、幼く、大舞台の経験も少ないのに、そのように大粒の涙をスーーッと流しながら、決して声を詰まらせず、決して歌割りを飛ばさず、しっかりステージをつとめていました

梁川奈々美さん、立派だったし、健気だったし、そして、可愛らしく、美しかったです。
もちろん、他のカントリーのメンバーもみんな。

ハロプロ全ユニットによるオープニング・アクト

話しが前後しちゃいましたけど、開場してから人の流れに沿って客席に流されます。
投稿者は「り」の10ブロックで、会場のブロック表で確認した段階では、正面ステージ上手(かみて)の端に寄りすぎだと天を仰ぎますが、席に着いてみれば、意外にもステージから近くて、しかも見やすかったりして。
この日のライブに寄せられた関係者からの花束など鑑賞しつつ、知人のベリヲタのみなさんと遭遇しつつ、会場に水分補給用の売店が設置されていることに驚いたりしながら、そうこうするうち、オープニング・アクトです。

オープニング・アクトの登場順とメニューは、こんな感じで。

01.アンジュルム 次々続々
02.つばきファクトリー 初恋サンライズ
03.こぶしファクトリー シャララ!やれるはずさ
04.Juice=Juice Wonderful World
05.モーニング娘。’17 青空がいつまでも続くような未来であれ!

アンジュルム中西香菜さんが美しいですよね。アンジュルムのパフォーマンスを見ていて、かななん、はっきり目に飛び込んできます。遠目に見ていても目に飛び込んでくると言えば、室田瑞希さんの『次々続々』に特徴的なステップでの膝の高さ。この中に、これから兼任で参加していく船木結さん、どう化学反応を起こすか、楽しみです。
元ベリヲタ仲間で現アンジュルムをメインに参加してる知人が「アンジュルムにいらっしゃい」と誘うので、破産の危機に瀕する投稿者でした。

つばきファクトリーは、浅倉樹々ちゃんを除く8名でのパフォーマンス。『初恋サンライズ』の樹々ちゃんセリフの代替は小野瑞歩さん。
こないだデビューしたばっかりのグループのデビュー曲だってのに、すっかり鉄板化してるのは、すごいことです。
新沼希空ちゃんが可愛く、小片リサさんが愛らしくて美しいんですけど、このところ、つばきメンバーのブログで「明日のハロプロを担う気概」がいろいろと宣言されているのを見て、とても嬉しくて、頼もしくて、愛らしくて、この先の つばき が心から楽しみです。
樹々ちゃんも、みんな待ってるから、焦らず、ゆっくり療養してね。

こぶしファクトリーの『シャララ!やれるはずさ』って、サビの「たいむ、りみっとが」のところって、実に耳に残りますね。
田口夏実さんが可愛いのも、井上玲音さんが美しくて睫毛が長いのも、スクリーンに抜かれずとも遠目にステージを望んで、それが明瞭にわかるのが不思議。

Juice=Juice は、名曲『Wonderful World』を持ってきます。
前述したように、黄昏迫るセピア色の夕焼けを背景に、パレットタウンの観覧車や ゆりかもめ をバックにして、お台場近辺のビルの窓に点々と灯るフロアの明かりを望みながら「このせかいはすばらしいよね」と歌われると、また独特の感慨があります。
普段、ライブハウスやホールの中に ”籠もって”、いわば「現実から逃避」したような格好でこの楽曲を聴いていたときとは異なって、人間の力で築き上げてきた「社会」が実際に稼働中の現実世界のただ中で、その大きな背景となっている人為及ばぬ自然が黄昏迫るセピア色の夕焼けに象徴されもして、その中で「このせかいはすばらしいよね」と歌われると、しかも、高木紗友希さんと宮本佳林さんの斉唱で、そう歌われると、それだけで涙が出そうになりますね。

そして、スクリーンに抜かれずとも遠目にステージを望んでいるだけで明瞭にわかるといえば、植村あかりさんの急激に成長している美貌ですよね。あーりー、美しい。
そんな中に、やなみんが参加するわけですから、うっかり気を緩めると Juice の現場に通ってしまいそうになるから困ります。

モーニングは、なんと『青空がいつまでも続くような未来であれ!』を。
横に広いステージを、そのまま横一直線に広く展開して使用するモーニングですが、曲の前半と後半で、上手側と下手側の5名と6名を入れ替えてパフォーマンスします。
ここで、どうしても目立ったのが、牧野真莉愛さんと加賀楓さん。ルックスが、ではなく、ステージ上の佇まいが美しいです。
ここに、今後、カントリーの森戸知沙希さんが兼任で参加するとなると、投稿者は本気で破産を心配しなければなりません。

*****

総じて、上述のとおり、ゆりかもめ は定期的に音を立てて特設ステージの後ろを通過しています。現在、絶讃稼働中の現実の世の中ですから、様々な生活音が響きます。
そして野外です。ホールのように、音響の響きを制御できません。

そんなただ中にあって、こぶし、つばき という経験の乏しい若いグループであってすら、こんなパフォーマンスをやり切って…これは凄まじいことです。
それは、これから始まる本編ライブの期待を高めるという意味で正しくオープニング・アクトであった以上に、ハロプロの、ハロメンの、パフォーマンスのレベルは真面目に世界レベルであると、これは、本気で思います。
アップフロントは、アイドル事務所じゃなくて、音楽事務所なんだ、と。

本編ライブのラスト近辺、マイクまわりで音響が一瞬「?」となるところもあったけれど、かえって、そこを乗り越える嗣永さんのプロの技も見せてもらったり。

開演前 会場点描

オープニング・アクトが終わってもライブ本編がスタートするまで、しばらく間が空きます。

ここで、会場から「ももち」コールが自然発生
そんな会場では、みんなベリーズハンマーだったり、ももちペンライトだったり、さらにはお手製の嗣永提灯だったりと、思い思いのハンドメイドまで、いろいろな「ももちへの愛を象徴させ凝縮させた」持ち物をかざしています。
それが、メインステージ左右に設営された大画面スクリーンに、的確に抜かれていきます。
映像を見る限り撮影の斜角はそんなに大きくないので、ほとんど客席で手を掲げる高さと同じ目線で撮影されており、あの青海特設会場の客席で、個々の参加者の掲げる持ち物をスクリーンに抜くとは、いったいどうやって撮影してたものか、わたくし、その場にいたのに、皆目見当がつかない次第。

でも、そんな嗣永提灯や、お手製の ももちボードなんかがスクリーンに抜かれてる中、会場に響く「ももち」コールが醸す雰囲気は最高であって、ハロプロは、ハロメンのパフォーマンスのレベルだけじゃなく、応援するアイドルのステージを誠実に盛り上げにかかるハロヲタの作法もまた世界のどこに出しても恥ずかしくないのではないかと思います。
いや、まじで。

着ぐるみカントリー劇場 桃太郎

さて、そうこうするうち、メインステージから長い花道で接続されたセンターステージに、なにやら動きが。

カントリー・ガールズのメンバーが着ぐるみで登場しています。
猿の着ぐるみが目に入ったので『行け!行け!モンキーダンス』あたりからスタートして、コミカル路線で押すのかなとか思ったら、近辺の客席から「山木さんが雉だ!」とか声が聞えます。
どうやら、カントリー・ガールズは、着ぐるみで桃太郎を再現している模様。

個々のメンバーの着ぐるみは、こんな感じ。

山木梨沙: 雉(きじ イメージがピッタリですよね)
森戸知沙希: 犬(真っ白で、顔だけ真っ赤で可愛かった)
小関舞: 猿(動きが忠実に「猿」していて、この場面のMIPかと)
梁川奈々美: 青鬼(また「ぎこちない」のが可愛くて)
船木結: 赤鬼(悪ガキ大賞を差し上げたい)

5人が可愛らしく花道を駆け上がってメインステージに到着すると、メインステージの中央には大きな桃が膨らんでいます(風船)。
桃が炸裂すると、そこにはアイドルな衣装に身を包んだ嗣永桃子さんが。

ライブスタート 嗣永桃子 ソロ オンステージ

桃から出てきた嗣永さん、いよいよライブ本編のスタートです。

着ぐるみカントリー劇団のみなさんは、いったん舞台袖に引っこんで、ここからは嗣永桃子さんがソロでステージをつとめます。嗣永桃子、オンステージです。
これが、実にすばらしかった。

青海の特設会場を、たった一人で、小さな “ももち” が縦横に駆け巡って歌いあげて、それで少しも会場を「大きい」と感じさせないパフォーマンス。野外のステージなのに、高音域から低音域まで響かせて不足のない安定したボーカル。たった一人で全歌割りを引き受けながら、息切れひとつせず、終始、嬉しそうに、楽しそうに、待ってましたと、さあ楽しむぞと、満面の笑みの “ももち” です。
この、嗣永桃子オンステージ、真面目に、すばらしかった。

このパートの披露曲は次のとおり。

01.恋はひっぱりだこ(Berryz工房)
02.もしも...(ハロー!プロジェクト モベキマス)
03.愛のスキスキ指数上昇中(Berryz工房)
04.マジ グッドチャンスサマー(Berryz工房)
05.世の中薔薇色(Berryz工房)
06.ライバル(Berryz工房)

知人のベリヲタさんが、ライブ終わりに言ってました。
ベリヲタで良かった」って。

いや、「ベリヲタで良かった」という、このフレーズ、”思わず” といった体で、なんだか絞り出すようにして言ってました。私もそう思います。
このパートの「あの」名曲たちを、それこそ多彩な解釈を許容するベリの鉄板曲を、等し並みに「楽しく明るい」方向に大ぶりして、嗣永桃子さんは、嬉しそうに歌い切ります。
かつて夏焼雅さんが担当したパートを、かつて菅谷梨沙子さんが末っ子であるからこそコケティッシュに歌いあげたあのパートを(『マジ グッドチャンスサマー』とかね)、ベリのラストとなるライブで、本来の楽しげなテイストに加味して、メンバーたちが朗々と慈しむようにして歌いあげたあのパートを…全部の歌割りを引き受けながら、息切れひとつせず、終始、嬉しそうに、楽しそうに、満面の笑みで、”ももち” は、明るく歌い切ります。

ももち が、嗣永桃子さんが “一人で全部引き受けた” のは、きっと、個々のメンバーが担当していた歌割りだけじゃなかったから、だからこそ、一人でベリの名曲を楽しげに歌い切る嗣永桃子さんから青海特設野外ステージに集ったファンが受け取ったものは、単なる旋律や単なる歌詞を越えて、響くことになったんだと思います(記事末後述)。
嗣永桃子ソロステージは、すばらしかった。

映像MCその1 懐かしのあの映像をおつまみに

衣装チェンジのため、”ももち” は一旦、引っこみます。
そして、入れ替わりにメインステージ左右に設営された大画面スクリーンに “ももち” が登場して、なつかしいデビュー前の(Berryz工房結成前の)映像が流されます。
流された映像は、次の三つ。

  • 『仔犬ダンの物語』の一シーン
  • 藤本美貴『ブギートレイン’03』のミュージックビデオ
  • キッズオーディションの映像

『仔犬ダンの物語』は当然、嗣永さんがキッズに合格してから、いきなり出演した映画ですし、藤本美貴さん『ブギートレイン’03』では、キッズ選抜組がバックダンスをつとめており、嗣永さんも、その一人でした。
キッズオーディションの映像は、あの有名な「精一杯の力を出すから、みんなにそこを見て欲しい」と決意を語ってるシーン。

いずれも、個々の映像が流された直後に、現在の “ももち” が映像に登場しては、当時のことを軽めにぶっちゃけて、関係者に「申し訳なかった」と謝るという、きっちり構成された映像芸です。
最初に『仔犬ダンの物語』に触れて当時の「映画関係者」に申し訳なかったと謝ってから、続けて藤本さんのMVが流されて、再び映像に登場してきた現在の “ももち” が、藤本さんに「ごめんなさい」するという「天丼」を見せてくれた時には、思わず声を出して笑ってしまいました。さすがの一言に尽きます。

嗣永桃子15周年記念メドレー

かつて Berryz工房にあって恒例となっていた7月7日の七夕ライブ。
最後の2014年に開催された七夕ライブでベリメンが身を包んでいた、ファッション番長の雅ちゃんがデザインに参加させてもらったという、着物仕立てのファンシーな衣装を覚えている同志も多かろうと思われますけども。
その着物テイストな七夕ライブを彷彿させるような衣装に身を包んで登場してきた嗣永桃子さんは、やっぱりこちらも2014年の七夕ライブの「お祭コンセプト」を踏襲したものか、やぐらに乗って会場通路を移動しながら、嗣永桃子15周年記念メドレーへ。

このメドレーで披露された楽曲は、次のとおり。

07.ピーナッツバタージェリーラブ(カントリー・ガールズ)
08.ソラシド~ねえねえ~(Buono!)
09.恋泥棒(カントリー・ガールズ)
10.大人なのよ!(Berryz工房)
11.アジアン セレブレイション(Berryz工房)
12.初恋サイダー(Buono!)
13.一丁目ロック!(Berryz工房)
14.本気ボンバー!!(Berryz工房)
15.Bravo☆Bravo(Buono!)
16.ジンギスカン(Berryz工房)
17.ホントのじぶん(Buono!)
18.素肌ピチピチ(Berryz工房)
19.スッペシャル ジェネレ~ション(Berryz工房)
20.あなたなしでは生きていけない(Berryz工房)
21.白いTOKYO(ZYX)
22.恋をしちゃいました!(タンポポ)

正面のメインステージで『ピーナッツバタージェリーラブ』を披露してから、上手(かみて)に駆け寄ってやぐらに乗り込みます。
ソラシド~ねえねえ~』から数曲かけて、やぐらに乗って、ステージ上手側から中央のセンターステージへと移動します。センターステージで、また数曲披露。『ジンギスカン』で、再度やぐらに乗り込んで、今度は下手(しもて)側へ移動し、最後に客席に向って右側からメインステージの中央へと駆け込んでくる ”ももち” です。
まさしく、会場を縦横に駆け巡った、という表現が正しいかと。

そうやって披露した楽曲、なんと、無慮16曲に及びます。いかにメドレーとはいえ、嗣永さんが駆け抜けてきた15年が、実に濃厚な15年であったことを物語っているようです。
嗣永桃子15周年記念メドレーと銘打っただけあって、披露する楽曲は最近のものから年代を溯る形で配列され、メインステージ左右の大画面スクリーンには、楽曲名と同時にそのリリース年も表示される趣向。

で、『スッペシャル ジェネレ~ション』にあっては、その左右の大画面スクリーンに、いきなり黒字に鮮やかな赤のゴシックフォントで「スッ」とか表示されて、音楽に合せて会場が一体となって「スッ!、ペッ!、スッ、ペッ、シャッ、ル、ジェネレ~ショーン!」とコールして、『スッペシャル ジェネレ~ション』の楽曲披露は、それだけで終了と。
これが「笑うところ」なのかは現場にありながら悩みつつも、それでも、メドレーの良いアクセントになりました。

前にも書いたことあったかと思うんですが、元来は「さゆヲタ」であった投稿者は、たとえば『白いTOKYO』なんて、リアルタイムでは、ほとんど「知らない」はずなんですけどね。なのに、いつの間にか、どちらかといえば好きな曲だったりして、ほんとにハロプロの楽曲は不思議ですし、繰り返し、嗣永さんの15年というものが、いかに濃厚であったかと。

それに『アジアン セレブレイション』とか『初恋サイダー』なんて、ついこないだみたいな気がするのにね。

そしてキーボードの生演奏をバックに

怒濤のメドレーを会場一周してやり切った “ももち” は、また衣装チェンジのためか舞台袖に一旦引っこみ、ステージは暗転します。そこで、スタッフが何やら設営してると思ったら、ここからキーボード(ピアノ)生演奏での楽曲披露となります。

キーボードの生演奏を背負って披露された曲は、この2曲。

23.VERY BEAUTY(Berryz工房)
24.I NEED YOU(Buono!)

この選曲は「卑怯」なレベルですよね。

Berryz工房の『VERY BEAUTY』、「ステキな女性になりたくて」と歌うこの曲、どうして、あんなチビっこい頃から、こんな曲をもらっていたんでしょうね。
みんな、きれいになった。嗣永さんのスクリーンに抜かれる横顔の端正で美しいことったら、ありません。きれいになった。
みんな、すてきなお姉さんになって、そして、自分の「人生を見つめる」ようになりました。
嗣永さんも、自分の「人生を見つめ」て、これまでの15年を総括します。

その上で、Buono!の『I NEED YOU』です。

「またね」って言葉だけが好き
ほんとは2度と会えないくせに
忘れるなんて無理だけど

鮮烈ながらも透明なキーボードの生演奏で、すっきり整った「大人」の横顔から麗しいボーカルを響かせて。
この選曲は、はっきり「卑怯」なレベルです

映像MCその2 ギャグ100 MV セルフパロディ

で、『VERY BEAUTY』から『I NEED YOU』へと持ってきて、会場に集まったファンに「泣く」準備をさせたかと思えば、これですよ。

映像の中で嗣永さんは何やら手紙を書いています…と、書き終えて封筒に詰めて…って、それはかつて『ギャグ100回分愛してください』の MV で登場したあの封筒。
というわけで、『ギャグ100回分愛してください』の MV と、現在の嗣永 “ももち” が重ね合わさるセルフパロディVTRです。

さすが、会場に集まったファンに「泣く」準備をさせたかと思えば、いきなりのコミカル路線への急展開です。急すぎて、ついていくのに息切れするほど。
…とか思いながらも、実際には、『VERY BEAUTY』から『I NEED YOU』への流れにも匹敵しかねないほど、このセルフパロディで「昔と今を重ね合わせる」という演出が、そして嗣永桃子によるコミカル路線推しそのものが、かえって泣けるという不思議。

ギャグ100 の MV に重ね合わせられる現在の “ももち” の左右の脇を固めるベリ猫ちゃんら着ぐるみの中身は、やなふなの2人(梁川奈々美、船木結)であったことも重ねて涙腺に厳しい仕様だったかと。

そして 嗣永桃子 with カントリー・ガールズ

映像の後、ももち先輩として、カントリー・ガールズのメンバーを従えて登場する嗣永さん、なんと2年半ぶりに「ももち結び」復活です。
しかし、復活した「ももち結び」、おそらく嗣永桃子さんの人生にあっても最後となるであろう「ももち結び」は、ほんの数曲でお終い。『明日からはおもかげ』を後輩たちが歌っている間に衣装チェンジした嗣永さんは、再登場のときには、すでに「ももち結び」ではなくなっていたり。

この、ライブ後半の、いわばカントリー・パートとも言うべきセトリは、こんな感じ。

25.ももち!許してニャン体操
26.ももち!ずっとおとももち(カントリー・ガールズ)
27.cha cha SING(Berryz工房)
28.明日からはおもかげ カントリー山木、森戸、小関、梁川、船木のみ
29.愛おしくってごめんね(カントリー・ガールズ)
30.浮気なハニーパイ(カントリー・ガールズ)
31.革命チックKISS(カントリー・ガールズ)
32.リズムが呼んでいるぞ!(カントリー・ガールズ)
33.Bye Bye またね(Berryz工房)

途中のメンバーの MC によれば、このライブの前日に、メンバーたちは花火をしていたんだそうです。
ずっと約束していたのに出来なかったからと、ももち先輩といっしょに花火を。
なんでも、リハーサル終わりに、カントリーの5人は嗣永さんから「ちょっと来て」と呼ばれたんだそうで、メンバーたちは「あ~あ、また叱られる」「最後まで怒られるのか」とか思いながら、その嗣永さんの招集に応えたところ、それはリハのダメ出しではなく、前から「やりたいね」と話していた花火大会だったんだとか。

なんか余談すぎるかもしれませんが、この場面で「あ~あ、また叱られる」とか言ってる森戸知沙希さんが、なんか「あ~あ、また叱られる」ってセリフに実にピッタリで、いかにもこのセリフは森戸ちゃんに発言されるのを待ってたみたいで、あまりにマッチしすぎていて、森戸さん可愛すぎました。

そんな微笑ましくも「線香花火の火が落ちるのが寂しいよね」とか雰囲気に飲まれた一言も差し挟んだりしながら、『愛おしくってごめんね』では、見せ場のセリフを大人げなく後輩から奪う ももち先輩に、先輩から果敢に見せ場を奪い返す後輩たちと、お馴染みの寸劇を組み込んだりしつつ、『浮気なハニーパイ』から『リズムが呼んでいるぞ!』まで、ノリノリな、カントリー鉄板の流れが展開します。

そして最後に、後輩たちを下がらせて、嗣永桃子がラストに一人で『Bye Bye またね』を。

奇しくも、ライブ本編は、メドレーの楽曲も含め、33曲をもって編成されたことになって、この数字に何事かを読み取るのは、そりゃ過剰反応ってものでしょうかしら。

アンコールとダブル・アンコール

アンコールでは、まことさんも登壇して『アイドル卒業注意事項』が。

これ、船木結さんとか小関舞ちゃんなんて、もう、泣いちゃって “ぐちゃぐちゃ” なんですよ。梁川奈々美さんも、初めの方に述べたとおり、大粒の涙を思いっきり頬に流してるし。
でも、それでも(ふなっきだけ一瞬ヤバかったけど)、みんな、泣いちゃって歌えない、泣いちゃって朗読できないってことにはならず、しっかりステージをつとめ上げます。

34.アイドル卒業注意事項 カントリー・ガールズ with まこと
35.VIVA!薔薇色の人生(カントリー・ガールズ)

みんなで『VIVA!薔薇色の人生』で、「未熟者には将来がある、未来しかなくてごめんね」と歌って、そしてダブルアンコール。

嗣永さんは、ここで最後のスピーチをしてくれます。

自分を見出してくれた つんく♂さんに始まり、Berryz工房、Buono!、カントリー・ガールズなどに言及して、Berryz工房に対しては「世間からはすごく強烈だと言われた私のあのキャラクターが1ミリも浮かない。なかなかないと思うんですよ。ねえ?」と、その特殊な性格を面白く述べてくれます。最終的には「自分が大好きだ」と、だけど、そんなふうに「自分が大好き」になれたのは、自分に自信を持たせてくれたファンのみなさんのおかげだと述べて、「幸せになってね」とみんなは言ってくれるけど、私は運も持ってるから大丈夫なので、むしろ、みなさんこそ幸せになってくださいねと、最後まで、ちゃんと ”ももち” らしいご挨拶をしてくれました。

そのスピーチは、こちらで全文が読めますけど、何より印象的だったのは、このスピーチの途中、一度、やはり感極まったものか、言葉に詰まり、危うく泣きかけるかのような場面があったんですが、しかし、気丈に持ちこたえて、”ももち節” を貫いたところ。

36.ありがとう!おとももち

最後の最後に『ありがとう!おとももち』を歌ってくれて、メインステージの中央に戻り、突き上げた小指を折りたたんで、ファンの皆さんからの愛を受信するアンテナを折りたたんで、嗣永桃子さんはステージを降りました。

私は大丈夫だから、みんなが幸せになってね

この日、2017年6月30日に開催された青海特設野外ステージでのライブは、嗣永桃子さんの15年の芸能生活を締め括る最後のライブでした。
でも、不思議と、悲しいとか寂しいといった印象は残っていないんですよ。

これで芸能活動そのものから引退する嗣永さんとは、もうほんとに会う機会はないんでしょう。それこそ、

「またね」って言葉だけが好き
ほんとは2度と会えないくせに
忘れるなんて無理だけど

という『I NEED YOU』の歌詞のとおりに。

でも、繰り返し、悲しいとか寂しいといった印象は残っておらず、あくまで、楽しいライブでした。ほんとに楽しいライブでした。

それは、嗣永さんが、最後まで ”ももち” をやってくれていて、最後まで涙を見せることはなかったからだと、そう思うのです。

いや、危うい場面はありました。カントリー・ガールズの後輩たちに引きずられるように、あるいは客席に向ってスピーチするときに、涙を目に溜めているような場面はありました。もっと直接に危うく、一瞬、言葉に詰まってしまう場面もありました。
個人的に思うには、嗣永桃子という献身的な女性が、この15周年を締め括るラストのライブに、気持ちを複雑に揺らせていなかったはずはありません。
繰り返し言及すれば、「嗣永桃子♡ 卒業メモリアル」DVDでは、大きく乱れる山木梨沙さんに影響される形で、私たちファンがこれまでの15年間で見たことのなかった嗣永さんの姿を見ることができます。
嗣永さん側に、揺れる心と、15年を締め括るにあたっての、切なく悲しい感慨がなかったはずはありません。

しかし、2017年6月30日に開催されたラストのライブは、悲しくなく、寂しくもなく、とても楽しい、最高に楽しいライブでした。

それは、きっと、嗣永桃子さんが、嗣永桃子として自身の揺れる内心を吐露することなく、あくまで ”ももち” であることを貫き通していったから。

ファンのみなさんは私に「幸せになってね」と言うけれど、私はビジュアルもあるし愛嬌もあるし運もあるから大丈夫。むしろ、みなさんが幸せになってくださいねと、そう最後のスピーチで述べたとおりに。
最後の最後までファンを気遣って、だからこそ、最後まで嗣永桃子さんはプロフェッショナルだったと思います。

2002年に、あんなにも「あどけなく」自分をアピールしていた小さな女の子は、ダンスレッスン中にお腹が痛くなって悔しくて泣いていた、あの小さな女の子は、自分よりもずっと年上だったりするたくさんのファンのことを最後まで気遣って、その15年におよぶ芸能のステージから降りていきました。

私たちは、それこそ嗣永桃子さんよりずっと大人であるからには、自分の足で自分の道を歩き始めた ”ももち” のこれからの日々を祈るよりは、ちゃんと自分が幸せにならないといけませんね。…でも、”ももち” が居てくれれば、それだけで幸せだったんですけどもね。

(文=kogonil)

エンタメアライブでは、皆様からの投稿を募集しています。
詳しくはこちらを御覧ください『寄稿について

Sorry, the comment form is closed at this time.