Berryz工房がつき切れなかった嘘 ~伝わる「らしさ」と不思議なアイドルたち~

はじめに

Juice=Juice の宮本佳林ちゃんさんが、反抗期とも一部にいわれる謎の ”はっちゃけ” をステージで見せ始め、好意的に受け止められつつあるようです。

ポニーテール一本だった髪型を変えて、ストレートの黒髪を下ろしたカントリー・ガールズの森戸知沙希さんは、あまりの美少女ぶりに斯界に大衝撃を与えている模様です。

その番組タイトルとは裏腹に、すっかりハロプロ専門チャンネルと化し、開始当初は「どうやったら視聴できるんだ」と右往左往した『アイドルもういっちょ!』ですが、前後編を通して小川麗奈さんとの確執話に終始した こぶしファクトリーの田口夏実さんの自由さも話題です(2016年4月8日,11日配信分)。可愛かったですよね。

そんな こぶしファクトリーと「こぶつば」と称される つばきファクトリーは、ついに専門として追っかけていたファン以外の DD系のハロヲタにも、小片リサさんの謎の美しさが周知されつつあるみたいですね。
こぶつば」と称されるだけではなく合同のイベントなども企画され、どうも Berryz工房のスピリットだけじゃなくて「ベリキュー」という在り方そのものまで継承しようとしているようで、しかも、どうやら多くのファンもそれを好意的に受け入れようとしている模様です。

なんだか、ほんとうに楽しみですね
投稿者は、道重さゆみさんを待ち続ける「さゆヲタ」兼「ベリヲタ」なんですけれど、かつての「さゆヲタ」仲間、「ベリヲタ」友達が、それぞれに Juice=Juice や、こぶしファクトリーや、カントリー・ガールズの現場に流れていって、そこからお知らせしてくれる個々のグループのあれこれを、ほんとうに喜んで聴いています。
歴の若いユニットの現場でのあれこれから、それらを好意的に受け止め、ステージに跳ね返して、個別の現場「ならでは」の雰囲気を醸成するに大きな力になっているヲタ側の積極的な関与までも含めて。

伝わっていくハロプロ「らしさ」

このように、いわば「若い」メンバーたちが、やはり可愛くて美しくて、個々の魅力にあふれていながら、それぞれに独特の固有の魅力を放っていながら、同時に、ちゃんとハロプロしている様子というか、言葉が拙くて申し訳ないんですが、しっかり伝統を継承している様子もまた、あまりにも明らかで、だからやっぱり「なんだか、ほんとうに楽しみですね」と思います。

長らくハロプロの歩みに併走してきた多くのファンが、Juice=Juiceに、カントリー・ガールズに、こぶしファクトリーに、つばきファクトリーに、やっぱりそれぞれの現場で魅せられていくのは、個々のメンバーの魅力に加えて、ちゃんと歴の浅いユニットが、しっかりハロプロをやっているからだろうと思っています。
若いユニットであっても、しっかりとファンがつくのは、「アイドルのファンなんてもんは、可愛くてロリロリな若い女の子なら何でもOK」だからではなくて、そうではなくて、ステージと客席の間でなんとなく醸成されている「ハロプロらしさ」が、若いメンバーにも、ちゃんと伝わっているからだと、投稿者は思っています。

というわけで、じゃあ、その「ハロプロらしさ」って何なの? ということについて、少し。

Berryz工房がついた嘘

かなり昔のことですが。

あれは、2014年8月2日の中野サンプラザ昼公演で無期限活動停止が発表されてから少し後の、8月後半に開催された Berryz工房の個別握手会でのこと。浅草橋のヒューリックホールだったかな(ちょっと自信なし)。

2015年の春で無期限の活動停止に入りますとアナウンスされた時点で、すでに2014年の秋ツアーは告知されていました。2014年の春ツアー『Real Berryz Kobo』の段階で、10周年を大々的に記念して「別の季節にもライブやっちゃって良いんじゃない?」とか何とか、ライブのMCでメンバーからの煽りもあった上で、4年ぶりとなる秋ツアーは堂々と告知されていたもんだから、何回かループした握手で、投稿者も「秋ツアー楽しみにしていますね」とは、メンバーに話しかけておりました。
そして、そうした握手の最後に、ちらっと「来年の春ツアーもね!」と付け加えて。
もちろん 2015年の春ツアーは期待していましたし、2013年11月29日の初単独武道館以来、2014年の春ツアーの「本気のリアルBerryz工房」の凄まじさを目の当たりにしていたもんですから、有終の美を飾るであろうラストのツアーがどれほど素晴らしいものになるかと、これは真剣に本気で楽しみにしていました。

が、「秋ツアー楽しみにしていますね」と話した時には屈託のない笑顔で「わあ、待ってますね」と応じてくれたメンバーたちは、「来年の春ツアーもね!」と付け加えた時には、微妙に、笑顔を凍らせて、なんとも困ったような顔をしていたのでした。
佐紀ちゃんも、茉麻も、熊井ちゃんも。
たしか浅草橋だったと思うので、この時は、千奈美ちゃんも。

そのメンバーの困ったような顔を見て、私は「あ、春はツアーはないんだな」と悟ります。
「なんとなくだけど、来年の春ツアーは、ないっぽいよ」と報告する私との間で、「いやいや、いくらなんでも、そこまで収益機会を犠牲にしないでしょ。最後の花道に、大々的に春ツアーはやるでしょ」と主張するヲタ友が大激論になったのも懐かしい思い出です。
もちろん、みなさんご存知のとおり、2015年の Berryz工房 春ツアーなどというものは存在しなかったわけですが。

ここで取り上げたいのは、「どうだ、俺はわかってたぜ」みたいな話ではなくて、「春ツアーも!」とか無責任に言い出すファン(← 私のことね)に、なんとも困ったような顔をしていたメンバーたちの表情のこと。

漏れ聴こえてくる真偽不明の情報によれば、実はそれに先立つ10周年記念のツアーこそが、2014年春の『Real Berryz Kobo』こそが、10周年目の3月3日にあわせた最後のツアーになるはずだったのだけれども、さすがに、いろいろとラストへ向けての準備ができておらず、最終的な「活動停止」は、一年順延していたのだとか。
Berryz工房のラストのステージは、2015年の3月3日に順延したけれど、すでに、おそらく、2014年の8月後半の時点で、その日程を含むような春ツアーは行われないことが決まっていたのでしょう。

あのとき、「春ツアーも!」とか困ったことを言い出すファンに、メンバーは何を思って、苦笑いのような表情を向けてくれたのだろうかと、今でも時折考えます。
率直に「ごめんね、春ツアーは、ないんだ」と言ってくれても良かったのに、どうして、ただ困った顔をして微笑んでくれたんだろうか、と。

もちろん握手会で下手にファンに語ろうものなら、どこに、どんな風に漏れ出すかわかったもんじゃないので、公式なアナウンスがあるまでは秘密にしておくってことなら、それはそれで、めちゃくちゃ理解できるところです。
でも、それなら、すっとぼけて「あはは、来てくれるの待ってますね」と言ってくれても良かったのに、どうして、ただ困った顔をして微笑んでくれたんだろうか、と。

だって、もう活動停止が決まっていた 2014年の春ツアーの段階で、いや 2013年の年末から 2014年の年頭にかけて、Berryz工房のメンバーは「これからも応援、よろしくお願いします」ってファンに語りかけていたじゃないですか。
この先、その「応援」する機会があるかどうかもわからないのに、「これからも応援、よろしくお願いします」って言ってたじゃないですか。

Berryz工房がつき切れなかった嘘

ファンは、長らくハロプロを応援してきたわけだから、ちゃんと「お約束」はわかっています。そんなにナイーブでもありません。

自分たちのリアクションが、「お仕事」をしているメンバーたちの、その「お仕事の部分」に乗っかってのものだと、ファンは理解しています。
「生身の○○ちゃん」ではなく「演じられたアイドル」を応援する「ファン」として、その「現場の風景の構成要素」として、自分たちがどのように振る舞うべきかくらいは、ファンは弁えています。このあたりの詳細なところは、ファンごとに、人によって、それぞれ微妙なグラデーションはあるでしょうけれども、大枠としての「適切な距離感」は、正しく共有されています。
情報解禁云々だとか、事務所の運営方針とメンバーの個人的な希望のズレだとか、実際のところを詳細に知り得ているわけではないとはいえ、そういう面倒な事情があるということ自体はわかっているわけですから、「言ってることが違うじゃないか」みたいに、子供じみた一貫性に拘ってみたりすることも、基本ありません。
実際のところを詳細に知り得ているわけではなくとも、そういうものだという暗黙の了解があるという点では、自分たちが応援している「アイドル」と、そのアイドルをやってくれている当の生身の女性が、別のものであるということもわかっている。
そして、もっと言えば、ファンがわかっているということを、当の「アイドル」をやっているメンバーも、わかっている。いわば、ファンと、「アイドル」を引き受けている側が、共に、一緒になって、かりそめの「ステージ」を共犯的に創り上げている。

個々のパフォーマンスを越えて、一般論としては、このように「アイドルのステージ」それ自体が、客席との阿吽の呼吸の上に成り立っているわけですよね。
一般論としては。

それでも、あの時、ないことが決まっている春ツアーを楽しみにしているファンに向って、テキトーな言葉でその場を誤魔化すのではなく、Berryz工房のメンバーが困ったように微笑むことしかできなかったのは、いったい、どういうことだったのだろうか。

私は、いろいろ考えた挙句、こう結論しております。
Berryz工房のメンバーは、ファンを気遣ってくれたのだ、と。

お互いの「役割」を、お互いにちゃんと踏まえて、お約束に則って、その「場」を成り立たせられれば、それで事態は円滑に進捗するはずなのに。アイドルを10年以上やってきて、そうした呼吸は、第二の生理として、わかりすぎるほど身に染み込んでいたであろう Berryz工房は、それでも、その「お約束」を越えて、リアルな自分の気持ちに正直に、ファンを気遣ってくれたのだ、と。

そうですね。
そうかどうかはわからないし、投稿者の過剰な解釈が過ぎるかもしれません。でも、活動停止後に、このエンタメアライブに投稿させてもらった記事に書いたように、いくつかのイベントでのメンバーたちの印象を通じて(参考:こちら とか、こちら とか、こちら など)上の解釈は、ますます強まっている次第です。

ヲタがヲタであることを認め信頼する不思議なアイドルたち

テレビ番組だったり雑誌の取材だったりといった「外」の場面で、あの、いつもの面白さがどうして発揮されないのかと、ヤキモキしているハロヲタは多いとも仄聞するところ。
ですが、「ファンのみなさんは、何があっても私の話を聴いてくれる」と安心して、だからこそファンのみなさんが集まってくれている場面でこそ「面白く」はっちゃけることができたことを伝えてくれたのは、そのファンの人たちを「変な人たち」と喝破した道重さゆみさんでした。
芸能人は他にもたくさんいるのに、なんでみんな、さゆみを見つけてくれて、好きになってくれたの? 変なの、と。

好意的に受け止められつつあるという、Juice=Juice の宮本佳林ちゃんさんの謎の ”はっちゃけ” は、Dマガでは、わりと以前から見ることができたものでした。
そのストイックなまでの優等生な印象が強い佳林ちゃんさんは、Dマガでは案外自由で、思った以上に企画意図をスルーして、気ままに目線や話題をさまよわせていました。
そんな ”はっちゃけ” を、昨今、ステージ上のMCでも解禁しているのは、佳林ちゃんさんが、Juice=Juice の現場に足を運んでくれるファンのことを信頼し始めているということでもあるのかもしれません。

斯界に大衝撃を与えているのは、ストレートの黒髪を下ろしたカントリー・ガールズの森戸知沙希さんの美少女ぶりばかりでもありません。耳を赤くしてばかりで、ただただハニかむばかりだった頃から、昨今では、ももち先輩に果敢に牙を剥いたり、お姉さん組のメンバーにツッコンで、自分からコミカルな場面を演出しようとするところも見せてくれるだけではなく、少しずつ、キャラを顕わにし始めている森戸ちゃんです。

メンバーである小川麗奈さんとの喧嘩の話に終始する田口夏実さんもまた、自由なようでいて、そんなお話しこそが「求められている」ものであると、わかっているかのようです。
この意味で、「外」に向けて、こうした「求められている」話題を攻めまくる『アイドルもういっちょ!』は、ハロー関連の番組としても画期的かもしれません

こうした様子に、ちゃんとしたハロプロらしさが感じられるというのは、そこに、アイドルとしての定型のお約束を越えて、ファンを信頼する姿勢が感じられるからなのかも知れないなと思うのです。
自分の「はっちゃけ」を受け入れてくれると、自分がする話に耳を傾けてくれると、自分がキャラを出しても大丈夫だと、そのようにファンを信頼してくれて、それがアイドルとしての振るまい方に影響し初めていると。

道重さんが、自分をどこまでも信頼してくれるファンを、心からの信頼を込めて「変な人たち」と呼んだように。
コミカルなお約束をこそ最大の武器とした Berryz工房が、そのお約束を踏み越えて、ときに真心を示してくれたように。
そして、そんな先輩たちを見送ってきた若い後輩たちも、自分たちなりに、少しずつ、自分を応援してくれる人たちを、ゆっくりと、そして、だからこそ実感を込めて、信頼し始めているのかもしれないな、と。

生身の自分とは違うことを踏まえた上で、それでも自分を愛してくれるヲタたちを、現場に集まってくれるファンたちを、信頼すること
難しいことですし、何よりビジネスとしては時間がかかりすぎて効率が悪いこと甚だしいわけですが、これこそが、大事な「ハロプロらしさ」だろうなと投稿者は思うのでした。

そして各地から寄せられるファンの声に耳を傾けるなら、そうした「ハロプロらしさ」は、ちゃんと引き継がれているようだ、とも。

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ここで述べたハロプロらしさではない「らしさ」もあることも承知しています。ファンに向き合い、ファンを受け止め、誠実にファンと遊んでくれる、そうした「ハロプロらしさ」とはまた別のハロプロらしい部分にこそ魅せられているファンもまた多いことも。
でも、そちらの「らしさ」については、また別の機会に述べたいなと。
むしろファンを放り出して行くかのような疾走感で、あくまでステージのガチなパフォーマンスを追求する「らしさ」については、きっと ℃-ute に託して、いつか別の記事にて。

(文=kogonil)

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