J-POPバラードのカバーで魅せるハロコン Hello! Project 2020 Summer COVERS 〜The Ballad〜、王道のステージで思わぬ魅力も鮮明に

7月25日 仙台サンプラザホール 後半戦

アンジュルム 船木結/大阪で生まれた女 (BORO)

段原さんの『見上げてごらん夜の星を』もそうだったんですけど、若き令和のアイドルが再生することで、改めて知っていたはずの楽曲の素晴らしさが再認識できるってことがありますね。それは船木さんの『大阪で生まれた女』こそ。ってか、船木結さんのハスキーな声質が、実にマッチしていて、良い響きを轟かせます。

過去のハロコンのシャッフルパートなんかで、かつての松浦さんや藤本さん、メロン記念日や、ベリキューの楽曲を若く新しいメンバーが歌うことで、メンバーたちの新しい魅力も、再生されるハロプロの楽曲遺産の魅力も、いずれも再認識してきたりして、その都度、感動してきた次第ですが、メンバーたちが再生させるのは、ハロプロの楽曲遺産ばかりではなかったということで、いかに “歌い手” として、ハロプロのメンバーたちが真剣に育てられているかということが如実かと。

モーニング娘。’20 羽賀朱音/もしもピアノが弾けたなら (西田敏行)

自粛期間中のお家時間でフランス語を始めたという羽賀ちゃん、なんと西田敏行さんの往年の名曲を歌います。

これまで、Juice の松永さんであれ、井上さんであれ、希空ちゃんも、そして段原さんは当然、なんだかんだ、そのスキル的なところは認めていたわけで、そりゃあ、何を歌おうとも、それなりに聴かせるものにはするだろうと、そう安心していたりもしたんですけど、はっきりと明確に認識が変わったのが、この羽賀ちゃんの楽曲披露でした。そう、単なる企画ものじゃないんだ、って。コロナ禍で余儀なくされた窮余の一策じゃないんだ、って。ハロプロは、メンバーを本気で育てているし、昭和の歌謡曲を、真剣にカバーしてるんだって。

率直に、羽賀ちゃん、すばらしい歌唱でした。

モーニング娘。’20 加賀楓/楓 (スピッツ)

段原さんが唯一、ステージを広く左右まで使ったと書きました。そうなんです、多くのメンバーが、ステージの中央で、ほとんど直立して、担当の楽曲を朗々と歌いあげる … そんな形式に終始することになります。でも、加賀ちゃん、ダンスを封印してもカッコ良いんですよ、マジで。

音域の広さに苦労したとおっしゃる加賀ちゃん、ステージの中央で直立してるようでありながら、音域の高低に合わせて身体全体が伸び縮みしてるようで(そんな様子がバーチャルに見えるようで)、ダンスを封印しても、やっぱり身体全体で表現してる加賀ちゃんだったのでした。素晴らしかったです。

BEYOOOOONDS 小林萌花/私はピアノ (サザンオールスターズ)

こんなゆっくりでも、ちゃんとサザンであることに驚きます。いや、既に、段原さんや船木さんについてコメントした通り、本気で、それぞれの担当楽曲を “甦らせて” いることに驚きます。それが、まだまだ経験の浅いメンバーによる(BEYOOOOONDS は初の単独ライブツアーがコロナ禍で中止になっているから、小林萌花さんらオーディション組は、まだ単独のステージすら踏んでいないわけで)ものだと思えば、ここら辺りで、この企画が途方もない大冒険であることや、それにも関わらず踏み切った事務所の自信や、この企画を成り立たせたメンバーたちの力量などに思い至って、いろんな体液を漏らし始めます。

ファルセットや、声の出し方が難しかったと笑っている小林さんですが、本来は、「いや~~、難しかったです」で笑ってられるようなことじゃないわけですから。

モーニング娘。’20 譜久村聖/僕は君に恋をする (平井堅)

よく楽屋で平井堅のモノマネをしていたという譜久村さん、だからこそ、この楽曲披露では、平井堅のモノマネをしてるように見えちゃ駄目だということを強く念頭にステージに挑んだと言います。

楽屋でモノマネをしてる譜久村さんは、Dマガでも何でも良いから是非見せて欲しいと強く要望しつつ、モノマネに見えちゃいけないと自戒していたステージは、素晴らしかったです。いや、小田ちゃんや佐藤のまーちゃんがいるから、後景に引いちゃって目立たないけど、譜久村さん、立派な歌唱メンでもありますもんね。何より、その歌詞の世界をちゃんと声にのせようとしている譜久村さんは、ほんとに美しかったです。

BEYOOOOONDS 高瀬くるみ/Time goes by (Every Little Thing)

ゆっくり時間が流れることに慣れた報告者のような おっさん からすれば、Every Little Thing なんて、つい先日、みたいに感じられるところですが、高瀬さん曰く「お母さんが好きだった」んですって!

改めて、この企画の途方もない大冒険であることに思い至るところですが、やっぱり繰り返し、そんな企画をしっかり成立させているメンバーの力量、この場合なら、高瀬さんの歌唱力に、もう一回、驚かないではいられないところです。

つばきファクトリー 小片リサ/明日への手紙 (手嶌葵)

小片さん、声が震えていて泣きそうな感じです。これ、意図的にそんな声を出してるですよね。小片さんの声…っていうか発声、震えてるようで泣いているようでもあって、これが実に素晴らしかった。

このブロックは、やっぱり段原さんが素晴らしく、そして報告者にとって伏兵的な意味で意外だったモーニングの羽賀ちゃんの素晴らしさなど、目立つところでスキルが冴えるメンバーが複数いたことで、残念ながら後景に引いちゃうところがありますけれど、小片さんの声の出し方は、それ単独で素晴らしいものがありました。

って、この報告者は つばきヲタだから(← その通りです!)つばきメンバーへのコメントは割り引いて見ないといけない … そう思ってらっしゃる方も多いかと。でも、合間のMCで、矢島舞美さんも、小片リサさんの歌唱に対して、こう言ってましたよ。「合うなあ」って。

モーニング娘。’20 石田亜佑美/なごり雪 (イルカ)

往年の楽曲を正しく甦らせている点について、何度も言及してきましたけども … 石田さんの楽曲披露、ちゃんと『なごり雪』で、驚いた次第です。

汽車を待つ君の横、動き始めた列車 … だけじゃなく、ちゃんと “君が去ったホームに残” って、それでも春が来て君は綺麗になったという余韻を、しっかり歌っている石田さんです。ってか、すごく言い方が難しいんですが、汽車を待ってるときに「綺麗になったなあ」と思ってるのと、動き始めた列車の窓越しに「綺麗だなあ」と思っているのと、君が去った後のホームで、綺麗になった君の余韻を味わっているのと、ちゃんとテイストが違うんですよ。君が去った後のホームの切なさたるや!
これを、ちゃんと歌い別けていた石田亜佑美さんに感嘆する次第。

つばきファクトリー 秋山眞緒/春なのに (柏原芳恵)

秋山まおぴんは元気者です。つばきファクトリーの中だけじゃなく、グループを越えて、いろんなメンバーに愛されてます。そして、当欄でも何度かコメントしたように、矢島舞美さんの誰かと戦ってでもいるかのような鋭いダンスの後継者であろうと見込んでおります。

驚くべきことは、そんな、元気者で、愛されキャラで、鋭い飛び跳ねっ子である秋山さんが歌う『春なのに』が、ちゃんと切ないこと。これは楽曲の歌詞が持つ力なんでしょうか、それとも、そんな歌詞の力を、正しく引き出したメンバーの力量を褒め称えるべきなのか。

アンジュルム 川村文乃/未来へ (Kiroro)

いつかまたちゃんとライブをやりたいと、そうおっしゃる川村文乃さんですが、ちゃんとフォーメーションを組んだパフォーマンスじゃなくとも、しっかり聴かせてくれたのは、これまで何度も言及してきた通り。

それで、やっぱり凄いのは、多くのメンバーが、こうした昭和歌謡から近年のJ-POPまでをそれぞれにカバーするというこの企画であれば、やっぱり少数でも何人かは、客席で聴いていて「?」と思うようなことになっちゃうメンバーが出ても不思議ではないところですけども、誰一人として「あ~あ…」って思うような者がいない、ってことです。本当なんですよ、奥さん!

この企画自体は、コロナ禍での急遽対応ってところがあったとしても、メンバーが育てられているってことは、しっかり長年の蓄積の結果かと。

*****

スタッフも参加人員を絞っていることから演出もないことには既に触れましたが、エンディングも特にはなしで、そのまんま終了します。

引き続き、報告者が参加できた8月後半の中野公演については、次のページにて。

エンタメアライブでは、皆様からの投稿を募集しています。
詳しくはこちらを御覧ください『寄稿について

コメント

名前*必須