切り取られた断片に刻まれた人生の記録 その5 ~ハロプロ DVD Magazine ご紹介『カントリー・ガールズ Vol.2、Vol.3』~

はじめに

ハロプロの DVD Magazine (以下、Dマガ)から、メンバーの成長の軌跡だったり、唯一無二のその時だけの魅力だったりを感じ取るとしても(「しても」って、そりゃ感じ取っているわけですけども)、基本的には、Dマガ のコンテンツが推してくる中身を、こちらは受動的に受け取った結果であって、精々、こちらが能動的に出来ることといえば、あらかじめ網を広げて、受け止めたコンテンツをできるだけ多様な(ハロプロ的)文脈に位置づけることくらい。このように、ライブやイベントへの参加と比べると、Dマガ を鑑賞することのファン活動的な実感は薄いのが当たり前とも思われるところです。
しかしながら、こと、カントリー・ガールズにおいては、Dマガ を通じて、その時々のメンバーたちの姿を脳裏に焼き付けておくことが、むしろ積極的なファン活動となりかねない、そんな激動の背景に想いを馳せねばならないのは、これは僥倖なのか痛恨なのか。(後述)

はい、そんなわけで、Dマガ ご紹介記事、カントリー・ガールズ編です。

カントリー・ガールズの Dマガ といえば、Vol.1 が、増刷されるたびに売り切れるという大好評でファンに迎えられたのも記憶に新しいところですね。

熟成してきた阿吽の呼吸 カントリー・ガールズ Dマガ Vol.2

Vol.1 に引き続き、ももち先生の引率シリーズ雪遊び編。
冒頭から、ももち先輩以外は行き先を知らないパターンが踏襲されて、ももち先生による行き先クイズからスタートします。行き先クイズについても「ボケつつね!」という厳しい指導が入り、ももち先輩が上司だったら、投稿者ならメンタルが持たないところです。諸々、いろんなものを ”狩りたがる” 山木梨沙さんといい、ロケバスの窓から外の景色を見ることが禁止されるや、GPS で場所を特定できるとか言い出す森戸知沙希さんといい、達者な受け答えを見せる梁川奈々美さんといい、かくも過酷なプレッシャーのなかで、よくも自分なりのテイストを押し出せるもんだと感心しきりな冒頭のロケバス移動シーンです。「かわいい寝言」強要事件など、ももち先輩の傍若無人と、それに対応し切るメンバーたちの華麗な技は、とてものことに記述が追いつかないということで。

しかし、見てるうちに、ももち先生の厳しい指導は、だからこそ、メンバーたちにリアクションの方向を与え、年齢も経験も隔ったカントリー・ガールズのメンバー相互のコミュニケーションの基盤として機能していること、と言うか、むしろ、山木さんも、森戸ちゃんも、稲場さんも、小関の舞ちゃんも、ももち先輩が “先輩然として” 大きな顔をすること(そう演じること)が面白くてしょうがない様子で、上手に乗っかって自分なりに前に出るのに利用してることに気がつきます。このあたりの呼吸は、結成当初から見事でしたが、Dマガ も Vol.2 を数え、良い具合に熟してきています。
ももち先輩の厳しい指導を甘んじて受けているからこそ「先輩としての義務」を強要する後輩たち…といった図も、ところどころで見られ、一方的に ももち先輩が傍若無人に振る舞っているわけではなく、ときに 自分のキャラを活かそうとするからこそ、そこに上手につけ込んでくる後輩たちを排除できずに困っている ももち先輩という場面もあって、なかなか奥深い構図を見せてくれるカントリー・ガールです。

ももち先輩に愛を届けるという「雪合戦」の型式が徐々に崩れていく様子も、経験があるという ももち先輩(そーいえば Berryz工房の Dマガ Vol.41 で、茉麻と一緒に室内スキー場で遊んでいましたもんね)が、自撮りしながらスキーする案外上手な様子も、達者な受け答えを示す梁川やなみんが時々空振る(ももち先輩によって、空振りさせられる)様子も、「ももち の太ももち」に後輩たちが群がる様子も、リフトに微妙な位置で座ってしまう船木結さんも山木梨沙さんも、しかもそれに気付いちゃう山木さんも、メンバー相互の会話の背後に隠されたメタな意味合いを端から指摘しまくる ももち先輩(「さあ、ハードルを下げ始めた山木梨沙です」とか)の容赦無さも、雪遊びという企画のフォーマットにのっかった場面のあちこちで、見所満載です。

自然にスキーを軽やかに操る森戸ちゃんが、いかにも身体能力が高そうで、今後のステージにおいても期待大ですよね。芸歴と年齢からはギャップがありすぎる達者な受け答えに注目が集まる梁川やなみんですが、アップになったシーンでは(メンバーが一列になって無言でラーメン食べてる場面など)実に美形であることも鮮明だったり。

あえて「アイドル」として演技しているのだと、そのこと自体をネタにしたような寸劇なんかも、みんな正しく ももち先輩を学んで、きちんと「演じることが出来ている」カントリー・ガールです。末恐ろしいですよね。(例:あえて転んでから「立てな~い」とカメラ目線で甘えてみせて、映像としての尺が足りたと判断したら、スッと自分で立ち上がって去って行くところまでがカメラに収められているような寸劇とか)

また、そうした具体的な見所よりも何よりも、全般を通じて、役割的にもお姉さん組と年下組になんとなく別れていくその様が、一番の見所かと。

ロケバスでも雪山のリフトでも、しっかりお姉さんの山木さんが、梁川やなみんと組まされているのは、実は やなみん の達者な受け答えと大人びた佇まいの ”危うさ” がわかっているスタッフさんによって、山木さんのフォローを期待してのことだったりするのかもしれません。ふなっき結さんが稲場さんと組まされているのは、大阪娘の、興が乗ったら止まらないトークを、稲場まなかん ならば、懐深く受け止めてくれると期待されてのことかもしれません。
そして、ときに牙を剥く年下組(森戸、小関)を ももち先輩が引率し、新メンバー二人を、それぞれにしっかり者のお姉さん組(山木、稲場)が引率して、こんな形でも、ももち先輩のスキルと面倒見の良さが、山木さんや稲場さんに継承されてるようなところも、きちんと形にして目に見えるところこそが、この Dマガ の大きな見所のひとつですね。

徐々に自由さを増し始めている(というか、メンバーから「猫をかぶってる」と言われ続けて、ついに本性を出し始めた?)森戸ちゃんが、ひたすら可愛い DVD でもありますよ。
個人的には、あざとく可愛い子ぶりっこしてる小関の舞ちゃんをナチュラルに邪魔する ももち先輩の様子を見ていると、嗣永さんにとっての大好物という点で、天然ナチュラルなリアクションが癒やし効果満点であった熊井友理奈さんを思い出さずにはおれず、このため、森戸ちゃんのように、やがて自由に本性を出し始めるであろう小関の舞ちゃんに、そんなところも期待したかったりして。

深刻な劇団ももち化 カントリー・ガールズ Dマガ Vol.3

ついに「劇団ももち」化は、新人メンバーにまで及ぶどころか、時折抵抗を示していたかに思える森戸知沙希さんや小関舞さんまでもが、喜々として「劇団」化しているカントリー・ガール DVD Magazine Vol.3 。
これを評して、投稿者に残された言葉は「手遅れ」としか。

この Vol.3 は、高級住宅街のモデルハウス?と思しきロケーションにて、メンバーがカレー作りに興じるという趣向。

エプロンに着替えて改めてメンバーが再登場して自己紹介という場面、「劇団ももち」の面目躍如という場面であって、めっちゃ面白いっす。後になればなるほど、そこに「天丼」というか「かぶせ」の面白みも加わって、登場してくるメンバーたちが、先に登場したメンバーの “登場時の周囲の家具や造作を使った動き” を再現し、あるいは上乗せし、山木梨沙さんや小関舞さんあたりは、見ていて、ついに声を上げて笑ってしまうほど。そして梁川奈々美さんへと至るオチ(ネタバレ回避のため言及せず。しかし必見ですよ!みなさま)
カントリー・ガールズの「劇団ももち」化は深刻です

他にも、カレーのトッピング争奪のゲームでの激しいリアクションを、デザートの甘いもの争奪でキッチン用品を使った一発芸的なネタ披露を、【強いられる】メンバーたち。この全編にわたって、「明示的な演技プランのレクチャー」だけではなく、「暗黙の目線による強要」まで、あらゆる局面で ”ももち先輩の指導” が入ります。
繰り返し、率直に言って、投稿者がカントリー・ガールズのメンバーであったならばメンタルが持たないレベルです。あの「達者」な梁川やなみんも、ももち先輩が想定しているであろう正解を探しあぐねて苦慮している場面すら。

それでも、ノリノリで ももち先輩の責めを受けて立つどころか、ときに ももち先輩の想定した正解を超えるほどの結果を出す、山木梨沙さん、稲場愛香さんのお姉さん組。とりわけ、稲場さんの、ももち先輩の振りを受けての「待ってました感」だったり、無洗米を丹念に洗浄してしまったという「オチ」の前に「ももち先輩が想定しているであろう受け答え」を懸命に探り、それに添おうとする山木さんだったりは、実に見所です。
さらに、ももち先輩に微妙な抵抗を見せていたはずの、森戸知沙希さんや小関舞さんが、今や、むしろ、きゃっきゃと喜んで劇団化しているところも。お姉さん組が、ももち先輩の想定をなぞろうとしすぎる一方で、森戸ちゃんや小関さんは、どこか楽しんで劇団化している模様。目を必要以上にパチクリさせて、それをもって「はい、私がボケてる場面はこれで終わりですよ」の合図にしようとして、しかし軽くその意図が流されてしまう森戸ちゃん、可愛らしすぎて卑怯なレベルです。
そして、新人さんたちも。大阪娘の面目躍如と、ぐいぐい前に出る船木結さんも見所ならば、「私、バラエティも行けますよ」とばかりに達者すぎる立ち回りを見せる梁川やなみんが、ももち先輩からのすげないリアクションに、ときに戸惑い、ももち先輩の想定を読みきれず、ときに立ち往生している様子こそ、カントリー・ガールズ Dマガ Vol.3 の一番の見所かと。
ええ、カントリー・ガールズの「劇団ももち」化は深刻です

「ももち先輩の指導」と、指導を超える弟子たちと

さて、そんな深刻な劇団化ですが、上述のそうした場面の逐一に、細かく配慮された「ももち先輩の指導」が入っていることは、やっぱり特筆すべき。

これが非常に刮目で、かつて Berryz工房時代であれば、夏焼雅さんからのツッコミであったり、徳永千奈美さんからのノリの上乗せだったりビジネス・ツッコミだったり、清水佐紀さんの呆れ顔だったり、菅谷梨沙子さんの冷たい視線だったり、熊井友理奈さんが笑ってる姿だったりという、他のメンバーからの(意図したものであっても、そうでなくても)フォローがあってこその、ももち先輩のキャラというかネタだったわけですが、カントリー・ガールズにおいては、こうしたメンバーからのフォローが期待できず、あまりに露骨にキャラに走ると、それこそ「暴走」と取られかねず、厳しい部分もないではないところです。
これが、「後輩たちへの指導」という体裁を取ることで、というか、そういう体裁を「発見」することで、従来の Berryz工房時代からのキャラも、新しいカントリー・ガールズというグループのテイストも、双方を活かして両立させるという、これは嗣永桃子さんの実に見事な熟練の技といって良いかと思います。しかも、そのような体裁を取ることで、山木さん、稲場さんらお姉さん組にとっても、上手なリアクションの方向性が与えられているというおまけつき。繰り返し、年齢も経験も隔ったカントリー・ガールズのメンバー相互のコミュニケーションの基盤として機能していること、ここは、素直に「さすが」と言うべき場面かと。

そして、お買い物組(稲場、小関、船木)を待つあいだ、ちょっとした寸劇に挑む場面など、時折、こうした「ももち先輩の指導」を超えて、ももち先輩への後輩からの「攻撃」が、ももち先輩がやろうとした寸劇のプロットに乗っかって、繰り出される場面があることも、こうした体裁の発見による効果かと。すばらしい。

エクストラの特典映像として、Vol.2 に収められなかった雪遊びシーンでのソリ対決が収録。この「ソリ対決」における罰ゲームには、正直、かなり笑ってしまったことをお伝えしつつ、未だ通販期間中であればこそ、ネタバレ回避として詳述しないところながら、上記の、「ももち先輩による指導という体裁を発見したからこその効果」として、小関舞さん大活躍です。重ねて、すばらしいです。

今、カントリー・ガールズの Dマガ を鑑賞すること

今から述べようとすることは、きっとお叱りを受けるだろうなと覚悟しつつ。

DVD Magazine には、ステージで見せてくれる以上の、メンバーたちの成長の記録であったり、細部に光る魅力が収められていると主張している投稿者ですが、そうした「意図しない細部」が記録されてしまうのと同様に、ときには、そんなつもりなんか全然なかった「歴史」をも刻んでしまうことも。そして、そんな「そんなつもりはなかったのに歴史を刻んでしまった」のは、わずか Vol.3 の履歴しかないはずの、カントリー・ガールズにおいてこそ顕著です。

誰もが驚いたスタートダッシュの強力な起爆剤となったメンバーは、カントリー・ガールズの Dマガ には、その姿を止めていません(異例尽くしながら、結成直後に開催されたバスツアーのFC限定DVDに、その姿を残してくれています)。
そして今、カントリー・ガールズに、様々な点から多大な貢献をしている「劇団ももち主演女優」は、一時活動休止中です。

上記に、「劇団ももち化」などと冗談めかして、”グループの移籍” と ”年齢が離れたメンバーとの活動” という難しい課題に挑みながらの、八面六臂の嗣永桃子さんの大活躍を絶賛してきました。しかるに、その、ももち先輩の大活躍が、まさしく大活躍であったのは、そこに、反応剤として極めて優秀だった「劇団主演女優」の存在があったからだ、というのは見やすいところなのではないでしょうか。
ハロプロ屈指のダンスに、グループを超えて演劇女子部で見せてくれた心に届くパフォーマンスに、マシュマロとも評された愛くるしい表情にと、そのアイドルとしての美質には枚挙に暇がない稲場愛香さん。そうした「アイドルとしての卓越した才能」以外にも、この ももち先輩を正しく「ヒール」として見立てられるだけのやり取りを、「ベビーフェイス」として「受け」てみせた、その空気を読む機敏さもまた、得難いものであったかと思います。カントリー・ガールズの Dマガ の「面白さ」に、どれほど貢献していることかと、改めて思います。

Juice=Juice の金澤朋子さんが、体調の問題を公表しながらも、それでもグループ活動に踏みとどまった例からすれば、もしかしたら稲場愛香さんの状態は、公式なお知らせが伝えてくれる以上に厳しいのかもしれません。自己免疫性の疾患というのは、一人一人状態が微妙に異なるようで、こうすれば一刀両断というような万人に適用できる療法が、特定の個人については適用が難しいってことも多いとか。
こうした事柄に軽々に言葉を連ねることは、慎重であるべきという以上に、できれば当人や関係者への配慮として、避けるべきところかもしれないとは認識しながら、それでも、最後に。

だからこそ。
投稿者は、「だからこそ」と書くべきであると確信中なわけですが、だからこそ、今、カントリー・ガールズの Dマガ を目に焼き付けるべきであろうと、そう思っていたりします。

DVD Magazine には、メンバーたちの、ライブやコンサートやイベントのステージだったりでは、あまり前面に出てこない、愛らしい魅力が記録されています。そうした DVD が積み重なって行くことで、いつしか、メンバーたちの、唯一無二の、かけがえのない、貴重な履歴が、そこにまるっと記録されてしまうということ。もちろん、そこは編集され、公開しても問題ない部分だけが選ばれてはいるとはいえ、それが積み重なることで、誰も意図しなかった記録が作られてしまうこと。まさに、切り取られた断片に、人生の記録が刻まれているように。
そして、私たちの前から(一時的にであれ、本格的にであれ)去っていったメンバーのことや、やがてステージに登るであろう、今はまだ見ぬ未来のメンバーのことまで、ハロー!プロジェクトの「歴史」を通覧する視座に立ってみる時、目の前のひとつひとつの DVD が記録しているものに言及するにあたって、投稿者は、この言葉を選ばないわけにはいかないところです。
珠玉、だと。

(文=kogonil)

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