【短報】道重さゆみ、自分の名前だけを背負う強さが眩しくも可愛い SAYUMINGLANDOLL~希望~

はじめに レポしにくいオリジナル公演 その概要

道重さゆみさんのオリジナル公演第四弾となる『SAYUMINGLAMDOLL~希望~』が、2019年11月9日の土曜日に、とりあえずの千秋楽を迎えました。こちらに参加してきましたので、その様子をお伝えしたいなと思うんですが、どうにも “レポ” が難しいステージです。

というのも、この『SAYUMINGLAMDOLL』の公演形態が理由です。
もちろん、来年2020年に追加公演がアナウンスされているので、ネタバレが望ましくないとも思うところですが、実際のところ、ネタバレは、あんまり大きな問題じゃないかもなって思っています。2020年の追加公演は “リニューアル公演” とも銘打たれており、その意味で、内容の大きな変更が予測されるところでもあるし、公式に「『コンサート』でも『ミュージカル』でも/『ディナーショー』でもない、/音と光、そして映像とイリュージョンが/織り成す、新感覚のパフォーマンス」と押し出されている公演自体のオリジナリティから、”演劇” としての内容があらかじめ知られていても、実際の公演に参加した際の驚きや感動が損なわれることはないとも思えるからです。

一方、その “公演自体のオリジナリティ” のために、むしろ、いつものように “レポ” するのが難しかったりして。

今般の、第四弾となる『SAYUMINGLAMDOLL~希望~』のストーリーラインは、たとえば物販グッズのビジュアルブックから引用すれば、次のとおり。

アジア初のオリンピックに沸く<1964年>の東京。
56年ぶりのオリンピック開催に盛り上がる<2020年>の東京。
2つの時代を生きた、2人の少女(希と望/ノゾミ)の物語。

この、1964年の望さんと、2020年の希さん、ファッション業界に進みたいという同じ夢を持って異なる時代を生きた2人を道重さんが演じます。
夢が形になりかけたところで、望さんは、住んでいたアパートの裏手にあった木に、自分の名前を彫り込みます。時代が変わって、裏手の木はそのままに、アパートがワンルームマンションとなった時も、その場に住む希さんの夢が新たな展開を迎えたところで、裏手の木に残されていた彫り込みを真似て、自分も刻印を残し、それぞれの彫り込みが「希」と「望」ということで、”希望” を形作って、その先の展望に明るい兆しを読み取って…物語は終わります。

…と、まとめてしまうと上記のような公演なんですが、基本的に通常の演劇のようなセリフとかは、まったくありません。部分的に、道重さん扮する「望」や「希」の内面の声、さらには、ダンサーとして参加してくれた “HiKARU☆” さんや “MoMoco*” さんが、狂言回しとして演じた猫たちの声が、”読む” 状況の説明としてステージ上のスクリーンに投影されることはありますが、通常の演劇のようなセリフはありません。

楽曲のハイレベルな難しさ

状況の説明、場面展開、それらに応じた登場人物(道重さん扮する「望」や「希」)の思いや行動といったものの全てが、道重さんがステージで披露する “楽曲” に託されて、SAYUMINGLANDOLL というステージが進行します。

極端に喩えるなら、勇ましい場面で勇ましい楽曲が流れたり、登場人物が悲しいと思っている場面で悲しいという歌詞が歌われたりするっていうのを、もう少し抽象的にして洗練した形で、物語の進行が、全て、ステージ上の楽曲で “表現” されるのです。

というわけで、今公演のセットリストを、ここで掲載(いくつかの楽曲は配信されています|UP-FRONT WORKS:道重さゆみ「SAYUMINGLANDOLL~希望~」配信中!)。

SAYUMINGLANDOLL~希望~ 11月9日 夜公演
01.MY OWN LIFE!
02.Sayutopia
03.AGE1-ROOM
04.I Have a Dream
05.ラリルレロンリー・ルーム
06.君の代わりは居やしない(モーニング娘。)
07.瞬間Watcher
08.WHO IS BABY
09.笑顔の君は太陽さ(モーニング娘。)
10.オレンジブルー
11.DESTINY(タピオカモード)
↓↓↓アンコール↓↓↓
12.OK!生きまくっちゃえ
13.ラララのピピピ(モーニング娘。)

そういうわけで、まずは、これらの “楽曲の難しさ” に感嘆することになります。
というのも、この『SAYUMINGLANDOLL~希望~』で披露されるべく製作され提供された楽曲は、(1) 物語の適切な展開をしっかり託されるに足るだけの、特定の場面展開に即した内容になっていなければならない上に、(2) 同時に、その楽曲単体だけで(物語から切り離されても)楽曲それ自体として、道重さゆみの持ち歌として、成立していなければならない…というわけで、製作・提供にあって課せられたハードルの高さに、門外漢ながら、開いた口がふさがらないレベルですよね。

楽曲に歌われる「望」や「希」と、そして道重さゆみ

そんな具合に、”ずいぶん凝った演出で物語りを語るもんだなあ” と感嘆しながらステージを見ているうちに、あることに気がつきます(気がつく仕掛けになってる?)。

誰の力も借りず、自分たちの力だけで、自分が夢見た世界に飛び込もうとしている登場人物(道重さん扮する「望」や「希」)が、そのまんま、道重さゆみさんに重なることに。

それは、山口県の中学生が右も左もわからぬまんま、モーニング娘。になりたい一心で上京してきたこと…に重なるだけではありません。むしろ、アイドルグループという枠組みに庇護されて、定型的な動き方やリアクションが、自分たちにも見ているファンの側にも共有されていた(だから “何が正解か” わかりやすかった)モーニング娘。のメンバーであったころよりも、ソロとなった今現在の道重さゆみさんに重なります。「モーニング娘。」という看板を背負っていることは、大きなプレッシャーであると同時に、その看板に守られて(その庇護の元で)ある程度の動き方がディレクションされるってことでもあります。その点、そうした看板を持たぬ、”道重さゆみ” その人としての現在の活動は、何が正解なのか、どうすれば良いのか、何がいけなかったのか、すべての結果を自分一人で背負わねばなりませんから。

今般の『SAYUMINGLANDOL』で歌われた各楽曲に、自分の夢に向って、何が正解かわからないなかで試行錯誤した結果をすべて自分一人で背負うというモチーフが(力点と観点を変えながら)歌われています。今般の『SAYUMINGLANDOL』に参加せずその楽曲を知らない向きには、たとえば、物語の中に組み込まれている『君の代わりは居やしない』といったところが上記の点を納得しやすくするのではないでしょうか。

このように、物語の中で表現されるテーマと現実の道重さんの境遇のシンクロ具合に気付かされるや、目の前で可愛く、コケティシュに、うさちゃんヘアーで、ことさらに可愛こぶって、愛らしく微笑んでいる 道重さゆみというタレントが、いかに強い女性であるかに思い至ります。

30歳を迎えたバースデーライブに参加して、道重さんはカッコ良かったし、美しかったし、何より、とんでもなく可愛かったと、そういった感想をレポしたこともありましたが(参考|道重さゆみ、30歳を迎えて余裕の “うさちゃんヘアー” に驚きが連続して理解が追いつかない SAYUMINGLANDOLL~BIRTHDAY LIVE 2019~)、それ以上に、目の前でこれ以上ないくらい可愛くステージをつとめている女性は、誰よりも強かったと、そう今更にして気付くのでした。

*****

こうしたことを以て、”道重さゆみの新しい魅力に気付けるオリジナルなステージ” と言って良いのかどうか、私は自信がありませんが、少なくとも、楽曲に託して物語る体裁と、その演出を通して現実とシンクロする物語は、あらかじめわかっていようとも、その感動はいささかも削がれることはないどころか、現場で臨席してみないと、その実際の所は体感できないと思います。ですんで、まだ未体験の方は、”来年のリニューアル公演を是非!” と声をかけて、短いレポというか感想文を終えようかと。

そんな道重さんは、コットンクラブが大好きで一ヶ月くらい公演を続けたいと言います。「わたしは、毎日コットンクラブに来て、美味しい楽屋飯を食べさせてもらって、可愛い私を見せて、みんなに “大好きーーっ!” って言ってもらって…、最高じゃない?」と。そう言う道重さんに客席から賛同の声が飛ぶや、「実現したなら、みんな、いっぱい来てよね」と、ちゃっかり付け加えて。

道重さゆみさんという女性の、本来ならばもっと以前に気付いて然るべき “強さ” に気付かされたオリジナル公演の第四弾、どうやらファンに向けて放たれたもっと可愛くなるね」という宣言は、着実に果たされたようです。

(文=kogonil)

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