モーニング娘。’21 譜久村聖、KANの『エキストラ』をカバー ~静かに歌い上げる歌詞に重なる矜持~

モーニング娘。’21 の譜久村聖の MV が公開されている。
その MV は、譜久村がKANのアルバム『23歳』に収録されている「エキストラ」をカバーしたもの。この楽曲の譜久村によるカバーは、2021年6月20日の M-line Special のステージにて披露され、配信されることもお知らせされていた。

譜久村聖(モーニング娘。’21)「エキストラ」が配信スタート!
iTunes Storeは6/21から、レコチョク・moraは 6/28 から配信開始予定です。
  1. 6/21(月)~
    【iTunes Store】https://itunes.apple.com/jp/album/1570419094?app=itunes
  2. 6/28(月)~
    【レコチョク】http://recochoku.jp/album/A1017557206/
    【mora(ハイレゾ)】https://mora.jp/package/43000030/UFDL-1484-HR/

現役メンバーが、グループの活動を超えてソロの楽曲を “持ち歌” にするということは、昨今、時折見られる傾向で、このところの M-line の充実ぶりと併せて、アップフロントは、アイドルを続けてきたメンバーの “アイドル以降” を真剣に模索し始めているのではないか、その一環としての譜久村のカバー曲配信ではないかと見るファンもある。

しかしながら、この「エキストラ」という楽曲が、いかにも譜久村に相応しいものであることに驚きの声こそが上がっている。

モーニング娘。’21 の譜久村聖は、これまで多数リリースしている写真集などで注目される大人びた魅力でファンにも刮目されてきたメンバーだ。ファンの注目だけでなく、ハロプロのメンバー内においても、その “もちもちの肌感” が話題になるだけでなく、譜久村当人も、そうした自分の魅力に自覚的であり、メンバー内の需要には積極的に応えてきた経緯もある。しかし、言うまでもなく、譜久村の魅力は、そうした “もちもちの肌感” だけではない。

第一に、ダンスから歌唱から絡み難いMCまで、いかにも多彩な技が乱れ飛ぶモーニング娘。のステージにあって、個々の技に突出して引っ張られてしまわぬように、常に全体をバランス良く底支えしている要(かなめ)こそ譜久村であった。それには、ダンスにも歌唱にも、しっかりしたスキルが必要であることは言うまでもないが、それ以上に、全体のバランスと構成に配慮できる鳥瞰的な視点こそ必要で、その点でこそ、譜久村のバランサー具合が高く評価されている(その鳥瞰的視点については、ステージ上で “かくれんぼ” をしてメンバーから隠れおおせたことからも明らか)。何より、リーダーを継承してからの7年もの月日にわたって、この地味ながら難しい重要な仕事を、高いレベルでこなし続け、モーニング娘。のステージを支え続けていたことは、特筆されるべきだ。

第二に、メンバーでありながら、自ら長年のハロプロファンであることを隠さずにいることも大切な点だ。そのファン具合たるや、Berryz工房のバックステージを追ったDVDマガジンなどでも、Berryz工房の公演を観に来て、ステージ裏で Berryzの強面のお姉さま方に、嬉しそうに囲まれている映像なども確認できるほどだ。そうした “自らハロプロのファンであること” こそ、譜久村のステージを支える大きな力になっていることは見やすいところだが、何よりも、9期メンバーとして加入して以降、リーダーとなってからも、様々な経緯で加入してくる後輩たちを、懐深く迎え入れ、”モーニング娘。メンバー” として成長していくことを支えているのが譜久村であること、その大きな原動力となっているのが、この「自分自身がハロプロのことが大好きだから」というところにあることは外せないポイントだ。譜久村の脳裏に鮮明に描かれているであろう “ハロプロのあるべき姿” こそが、ファンが渇望し、称賛するハロプロの姿でもあるということも含めて。

譜久村聖は、正式なオーディションには落選しており、バックダンサーを務めるつもりでやってきたハロコンの舞台で、サプライズとしてメンバーに加入したという経歴を持つ。自分の名前が呼ばれたことにビックリして涙を流していた愛らしい女の子は、リーダーとして、新メンバーに選ばれて涙を流す女の子たちを堂々と迎えている。その姿もまた、いつしか “ハロプロのあるべき姿” を形作る一つの風景となっている。

第三に、譜久村個人の控えめな愛らしさを挙げないわけにはいくまい。
後輩たちを暖かく迎える譜久村は、しっかりとステージを支える譜久村は(2019年の代々木でのリハーサルで、メンバーに立ち位置を注意する場面なども、バックステージを追ったDVDマガジンに収められている)、同時に、後輩にイジられ、ステージを終えて楽し気に楽屋に引き上げてくる譜久村でもあり、カメラがまわっていようと構わずに自由に振舞い、時に後輩にたしなめられる譜久村でもある。メンバーの実家からの差し入れやケータリングに喜ぶ率の高さこそ(編集担当者の取捨があることこそ踏まえて)その愛らしい内面を語っていると見る向きは多い。

さて、以上に3点にわたって(本来ならば要約など出来ようはずもない)譜久村の魅力を列挙してみたが、こうしてみれば、これらに通底して一貫するその魅力の傾向というものがあることに気が付く。それは、表立って目立つ魅力というよりは、影でひっそりと控えめに咲く魅力であるという点だ。

たとえ主役級の登場人物ではなくとも、「私はエキストラ」であっても、「あなたがいるシーンに少しでも写り込んでいれば」それでいい。

そう歌う譜久村は、しかし “切なく歌うのではなく、むしろ静かに、しかし堂々と” こう歌う。「大好きです」と。
通じぬ想いを切なく歌うのではなく、通じようが通じまいが、私はよしんばエキストラに過ぎなくとも、揺るぎなく、だからこそ静かに、「大好きです」と歌う。

譜久村聖の魅力は「影でひっそりと控えめに咲く魅力」であると述べた。しかし、その控えめな魅力は、静かに、しかし、だからこそ揺るぎない
譜久村の瞳に写る “あるべきハロプロの姿” が、ファンの眼にも揺るぎないように。そんな譜久村にとって、この「エキストラ」という楽曲はいかにも相応しいのではないだろうか。

(文=kogonil)

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