キャスト変更の功罪の「功」、小片リサと岸本ゆめの/レポ:つばきファクトリー演劇女子部 「遙かなる時空の中で6 外伝」

最初に結論から。
いろんなことがありましたけど、そんな “いろんなこと” を受けて、しかし、こんなにも素晴らしい舞台を創り出している つばきファクトリーは、もう愛らしいばかりのユニットではありません。明らかに、つばきファクトリーはプロフェッショナルとして、腰の座った仕事ぶりを示しています。もう、初々しいだけの若いユニットではありません。その「もう、初々しいだけの若いユニットでは」ないことに、若干の寂しさを覚えつつ、しかし、満腔の賞賛を送りたいと思います。素晴らしかった。

はじめに 全日程終了前にレポを投稿する理由

本来ならばネタバレ回避のため全日程を終えてから所感を投稿しようと思っていましたが、非常に素晴らしい舞台なので、6月の8日、9日の週末4公演分に参加してきた段階でのレポを投稿させてください。

今般の つばきファクトリー主演の演劇女子部『遙かなる時空の中で6 外伝』については、メンバー降板によるキャスト変更がありました。このことによって、舞台そのものに対する期待についても一部に熱が冷めたかのような雰囲気もあり、ネット上でも(まだ舞台が開幕してもいない段階で)残念な揶揄が散見されていました。

しかし、だからこそ、”今回は見送ろうかな” と思っている方に、力強く “い~~や、是非とも観に行った方が良いよ” と伝えるべく、日程を残している舞台公演のレポに及んだ次第です(ネタバレは極力避けますね)。

愚痴はここだけでオシマイ

最初に明示しておくと、わたくしは新沼希空ちゃん推しです。

ですから、今般、希空ちゃんが降板してしまったことは痛恨であることは言うまでもないんですが、このことについては、ここで言及するだけにして本文では触れないつもりです(レポの最後にもう一度触れますけど)。もちろん、希空ちゃんの演技は観たかったけど(ほんとに、実際の舞台が素晴らしかったからこそ希空ちゃんのコハクは観たかった)、そればかり言っていたら、代役の演劇女子部 小野田暖優さんにも失礼だし、一方で、実際の舞台を絶賛すればするほど、それはそれで、希空ちゃんに申し訳ない気持ちもあったりして複雑です。

同じことを、しかし一回り大きめに指摘できるのが、浅倉樹々ちゃんと小片リサさん。

主人公梓(樹々ちゃんが小片さんへとキャスト変更になった)が、とある登場人物(希空ちゃんから小野田暖優さんへとキャスト変更になった)に、その人物が記憶を失っているので、”コハク” と名前をつける場面があるんですけど、これは “コハク” と名付ける樹々ちゃんを観たかったな…って思います。

…でも、そういう繰り言はもう言いますまい。以下に、小片リサさんの演技から何から絶賛していますが、その絶賛にあって(往々にして意図を超えて読み込まれがちな)樹々ちゃんに対して含むところは一切ありません。って、はい、そういう愚痴めいたことは、これでオシマイです。

要するに 素晴らしい舞台でした

主人公梓(小片リサ)が異世界に召喚されて、元の世界に戻る戻らないといった終劇間際の決断について、開幕早々のシークエンスで(時間的な制限から難しいだろうけど)召喚前の元の世界での梓の日常がもう少し丁寧に描写されていたら、(結局どうなったと解釈するにせよ)梓の選択が一層感動的なものになったのに…惜しい!とか。

黒龍の神子である梓と対になる白龍の神子である千代(山岸理子)が(ちなみに「巫女」じゃなくて「神子」なんですね)、梓の元の世界でのお婆ちゃんと同じ名前だっていうシーンがあって、これはエンディングで、宮部みゆき『蒲生邸事件のラストシーン的な展開があるのかと思ったら特に何事もなくて、同じ名前設定は放置で…惜しい!とか(この辺は原作の方でフォローがあるのかな?)。

サブタイトルにもなってる鬼の仮面は、最後に結局、どうなったの?的な、語られなかったあれこれも、いろいろあるけれども。

そういった作劇上のあれこれが、一切まったく気にならないほど、実にすばらしい舞台だったと思います。おそらく、それは部分的には(触れないと言いつつ触れるけど)主演である つばきファクトリーを襲ったアクシデントが、多くの観客にも踏まえられているって側面もあるんじゃないかと思っています。

演劇女子部に限らず、生身の俳優がその場でパフォーマンスする演劇にあっては、演じられる演目と演じる演者を切り分けることが難しいのは言うまでもなく、観客は(ファンであろうとなかろうと)演じられる “劇” を鑑賞すると同時に、演じている演者の、その “演じている” ことそのものも鑑賞しています。その意味で、今般の開幕に至るまでの試練を背景として、一層、ステージの迫力も増したという部分は否定できないところです。

という上の段落をパラフレーズすると。
本人たちのせいではないところで様々なアクシデントに見舞われた今般の演劇女子部公演にあって、それでも、先輩の清水佐紀さんがトークショーで語ってくれたように、弱音を吐かず必死になっていたという つばきファクトリーのメンバーが、舞台の上で示してくれた気迫も、眼差しも、動きも、セリフも、歌も、すべて、非常に見応えがありました。

要するに、素晴らしい舞台でした。

と、前口上はここまで。実際のあれこれは、次のページから


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