アップフロントの音楽の力/『ハレルヤ』 (Bitter & Sweet ミニアルバム『#ビタスイ』より)に託して ~少しでも明るい明日へ~

前口上

みなさま、こんばんは。
「報われなかったとしても、私が待ちたいから、だから、道重さゆみさんを待つ」だとか、「Berryz工房は不世出にして唯一無二の空前絶後のグループだった」だとか、さんざん大げさなことを言いながら、モーニングのツアーに通い、℃-ute のツアーに通い、カウントダウンライブからハロコンにも参加するどころか、あちこちのイベントに顔を出している投稿者です。つばきファクトリーの現場を心待ちにしています。
熊井友理奈さんに再会できた感激を綴ったかと思えば、山木梨沙さんのソロブルーレイ購入記念イベントを楽しみにして、矢島舞美さんと中島早貴さんの(大量の)握手券を大事に握りしめている昨今ですが、みなさま如何お過ごしでしょうか。

なんと浮ついたDD野郎だと思われたところで、それでも呆れるのはまだ早いのです。
投稿者は、昨年梅雨明けくらいから、毎月、秋葉原のハロショで開催されている Bitter & Sweet のインストアライブに通っています。

自分でも呆れているとこがないわけではないDD街道まっしぐらな日々ですが、そんな中で、Bitter & Sweet 初となるミニアルバム『#ビタスイ』から、『ハレルヤ』をご紹介することを通じて、呆れたDD野郎という評価を、もう少し生暖かい方向へ誘導する試み。

Bitter & Sweet ハロショ インストアライブ

Bitter & Sweet は、アップフロントクリエイト所属の、田﨑あさひさんと長谷川萌美さんによるツインボーカルユニット。
2015年には、毎月一回、秋葉原のハロショでインストアライブを開催していました。毎月定例のインストアライブは、毎回2回公演で行われ、ライブ終わりの握手会と撮影会がセットになっています。年が改まって2016年の1月は、毎回1回公演ながら、1月13日、20日、27日の水曜日に、3回のインストアライブが。
他にも、あさひちゃんや長谷川さんの地元である長崎や新潟でも、各地のCDショップなどでも、あちこちのイベントやフェスでも、精力的にライブ活動を続けています。

2015年末には、3回目となるライブハウスツアーを敢行し、そこでは名古屋や大阪までツアーの規模を拡大しています。
投稿者は、2015年末には、原宿のミュージックレストラン La Donna でのライブにも行きましたし、3rd showcase ライブには、田崎あさひさんの誕生日でもある初日に大塚へ、千秋楽の12月末には渋谷へ足を向け、全部の機会に握手までしてきちゃいました。

Bitter & Sweet のライブに足繁く通うのは、あさひちゃんと長谷川さんのボーカルが(きっとまだまだ発展途上なんだろうけれど)すばらしく、歌っている様子がとても楽しそうだから。その楽しげな様子に、やっぱり心打たれるからです。
どこに惹かれてライブに通っているかについて、こちら(アップフロントの歌の力 Bitter & Sweet ハロショ秋葉原インストアライブに通う3つの理由)も参考にして頂けると嬉しいです。(※1)

  1. その意味で、「楽しげに歌っている」という点では、上のリンク先の記事でも紹介した、こちらを改めてお薦めしないではいられない。
    どうして彼女たちが「楽しげに歌っている」という、それだけで、こんなにも心が揺さぶられるんでしょうね。それから数年を経て、さらに美しく成長した2016年現在からふり返っても、このライブの舞美ちゃんと愛理さんは、実に愛おしい。

真っ直ぐにテーマを歌う Bitter & Sweet 幼いからこその未来

そんな Bitter & Sweet は、初となるミニアルバム『#ビタスイ』も発売しています。
そのミニアルバムには、あさひちゃんのソロインディーズ時代の楽曲が Bitter & Sweet バージョンとしても収められたりしています。

ハロー!プロジェクトにおける、つんく♂ さんの楽曲は、その旋律もリズムも噛めば噛むほど味が出るだけでなく、歌詞も、非常にメッセージ性の強いものが多くて、思った以上に若い男女の恋愛未満のきゃっきゃうふふを歌うものが少ないのが特徴です。そして、その歌詞に現われるメッセージ性に気付くや、たいへんに深くて、もはや抜け出すことができないのは、みなさまご存じの通り。
(こちらも参考にしてくれると嬉しい:世界を「愛」で埋め尽くそうぜ(つんく♂がハロプロ楽曲に仕込んだ「大作戦」)

一方で、Bitter & Sweet の楽曲は、若い女性の恋愛未満の感情を、わりとストレートに歌っています。このあたりは、つんく♂さんの楽曲とはテイストが非常に違っています。
だから楽曲にはあまり感心しないかと言えば、これがそうでもなくて。
メッセージ性が強いからこそ、その情景がどちらかといえば抽象的なつんく♂さんに対して、Bitter & Sweet の楽曲は、とても具体的でストレートです。
この「具体的でストレート」というのが、楽しげに歌う二人の様子に、あまりにもピッタリだったりすることに驚きます。

投稿者が思うキーワードは、「幼さ」と、幼いからこそ、期待できる「明日」ということ。Bitter & Sweet の楽曲は、テーマが具体的でストレートであるだけでなく、そこで歌われるテーマが、歌い手である Bitter & Sweet の二人に実に見事に重ね合わされています。

『真夜中のLonely』という曲では、愛する人に会えない寂しさが歌われます。
ところが、その愛する人というのが、ちゃんと成熟した恋愛関係にあるのかどうかは、歌詞からはわかりません。主人公の女の子が一方的に片想いをしているのかもしれない。
「会えない」のも、どうやら主人公が「強がって」いるからであるように解釈できるところもあって、ある意味で「幼さ」がほの見えるような歌詞だったりします。

『泣いて 泣いて 恋してる』という曲では、別れてしまった恋人への惜別の思いが歌われます。それでも、そこで嘆かれているのは、別れてしまったあの人への気持ちが残っていることだったり、もっとやさしくしてあげれば良かったという後悔だったりではなく、ストレートに「別れてしまった」こと、そのこと自体の苦痛です。
きっと、初めてのお別れだったんでしょう。
そして、初めてのお別れという経験に戸惑って、ただ嘆いているだけで、まだ自分の気持ちや相手をいたわる余裕はないような、そんな幼い別れです。

初めて自分たちでフリツケを考えてみたという『バイバイメトロ』では、どストレートに恋愛未満のじれったさが歌われます。相手が降りてしまう駅が近づいてくることを残念がって、もっと二人でいたいと思っているけれど、それを言い出せない女の子の内面の声が歌われています。

繰り返し、あくまでストレートに若い女性の「恋愛」が、その「幼い」側面にフォーカスして歌われているミニアルバム『#ビタスイ』です。

さてところが、「幼さ」を、恋愛「未満」として歌われているばかりでもないのが、『オレンジライン』。この曲では、鈍感な幼なじみの同級生へのもどかしい気持ちが歌われています。自分の気持ちをわかってくれないどころか、「『恋人みたい』って笑ってるあなたはイジワル」とあるように、恋愛未満のところでじゃれ合っているような、懐かしい情景が、よしんば聴く者の記憶にそんな経験はなかったとしても、それでも「懐かしい」(だからこそ「恋愛未満の理念型」とでも呼ぶべき普遍的な)情景が、恥ずかしく、こそばゆく歌われます。
しかし、「遠く離れても あなたの思い出に わたしもいたいよ」とあって、実はその恋愛未満の感情を、歌の主人公は、必ずしも恋愛に育てていこうとは思ってはいないようなところもあって、それは、その恋愛「未満」という部分での登場人物たちの「幼さ」が強調されているのか、それとも「懐かしい情景」は「懐かしい」ところにこそ意味があると達観しているのか、かなり難しいところ。
それはまた、歌手として、歌い手として、まだまだ発展途上の二人の、「幼い」部分が投影されているのか、それとも淡い恋愛未満の関係も含んだであろう人間関係を離れて、今こうして、歌手として、歌い手として、地元から「遠く離れて」自分の夢に向う二人のこの先を投影しているのか、微妙なところです。
というのも、以下(↓)。

『DREAM GIRL』と、そして『ハレルヤ』

『DREAM GIRL』という曲では、夢に向って、第一歩を踏み出す気持ちが歌われています。自分が踏み出す一歩の先が見えずに少し怖がっているような、そして自分が一歩を踏み出すために別れなければならないことがあることへの悲しさを歌っているような歌詞です。
「サヨナラ 大好きな街 心はもう決まってる」とか、「サヨナラ ずっと友達」とか、自分の夢を選んだことで他の多くのものを選べなくなったことを少し悲しいと思っているような、あるいは、他の多くのものを後にしてでも、それでも自分はこの一歩を踏み出すという雄々しい決意を胸に秘めているような、そんな歌詞です。

田﨑あさひさんは、長崎県の出身です。
高校在学中の2012年に、『第2回FOREST AWARD NEW FACE オーディション』でグランプリを獲得し、東京に出てきました。大好きな歌を歌うことを夢見て、地元を離れて東京に出てきました。

長谷川萌美さんは、新潟県の出身です。
ずっと歌が大好きだった長谷川さんは、地元でも「NHKのど自慢」に出たりして、歌の道を模索していたようです。『第3回FOREST AWARD NEW FACE オーディション』でグランプリを獲得し、東京に出てきました。

「金の卵」が上野駅に降り立ってからこの方、東京に出てくることが地方の若者にとってのステータスを失って久しい昨今です。高度成長とバブルを経て、失われた20年が、そろそろ30年になりそうなこの時代に、地元の慣れ親しんだ環境を離れて、自分の意思で、夢を追って、若い二人は東京に出てきました

ハロコンのゲスト出演などで広くお披露目されながら、しばらくソロで活動していた あさひちゃんは、長谷川さんと出会って、Bitter & Sweet というユニットを組むことになります。先だって最終回を迎えた『GREEN ROOM』や大きくリニューアルする『MUSIC+』で、事務所の先輩でもあるプロデューサーに、厳しくレッスンを受けている様子も目にすることが出来ます。
「グランプリを獲得し、東京に出てき」たのに、大きなステージでパフォーマンスする先輩たちを横目に、CDショップなどでのインストアライブから、ライブハウスツアーを続け、ようやく先頃、ライブハウスツアーも東名阪に拡大することができました。

アイドルではなく、歌い手として、ようやく一人前へと登り詰めるための緒に就いたばかりの二人は、まだまだ自分たちの可能性と、自分が夢をつかんだことを前向きに捉えているのでしょうか。それとも、「こんなはずじゃなかった」と、後ろに置いてきたものを懐かしく思い返すことが多くなっているのでしょうか。

ミニアルバム『#ビタスイ』の最後を締める『ハレルヤ』では、二人はこんな歌詞を歌います。とても、楽しげに

迷いもあるし 不安もあるし
泣きたい日もあるけど
なんとかなるさ 頑張ろう
自分らしく ハレルヤ
上を向けば ハレルヤ

少しでも明日を良くするために

ミニアルバム『#ビタスイ』に収録された『ハレルヤ』は、真面目に名曲なので、本気でお薦めしております。

自分たちの夢を叶えようと、つかんだチャンスを偶然とは言わせないと、前を向いて進んで行く「幼い」二人の前には、今ようやく夢に向って確かな足取りを踏み出したばかりだからこそ、その先の明るい「未来」が待っています。
こうした、自分たちが将に夢に向って、明るく、楽しげに足を踏み出しているその様そのものが、観る者に力を与えるのは、実に体感できるところです。

よく言われる「○○に力をもらった」というのは、こういうことかと。

冒頭に記した呆れたDDっぷりにあるように、ハロプロは、みんな、そのファンに大きな力を与えてくれます。そして、Bitter & Sweet は、楽しげで明るい刻苦勉励が観る者をどこか励ますという、そんな構図を、やっぱりストレートに示して見せてくれるのでした。
ほんとうに音楽の力は素晴らしいですね。

*****

さて、上に Bitter & Sweet のライブに「足繁く通う」と述べた投稿者ですが、投稿者が参加していないライブへも皆勤であろう熱心なファンには遠く及ばないことを自覚しつつ、ハロショのインストアライブには、平日なので会社帰りにネクタイしめたまま駆けつけています。
そうすると、同じようにネクタイにスーツ姿のおじさんたちが、けっこういっぱいいるんですよ。しかも「いつも」。

雪が降って電車が遅れても会社に行かなきゃいけない毎日です。なんだか労働者にとっては厳しい情報ばかり飛び込んでくる昨今です。
にもかかわらず、残業を振り切って、インストアライブに出向くと、投稿者と同じようなネクタイにスーツ姿のおじさんたちが、いつも、います。

終電間際まで残業することも珍しくなく、投稿者の場合、けっこう出張があるので、その埋め合わせというか、出張中にたまった仕事を片づけるため土日に出社することも少なくありません。「あー、明日もまた仕事かあ」というため息は、ぶっちゃけ出ます。
それでも、ハロショのインストアライブには通えています。
そこに集う「ネクタイにスーツ姿のおじさんたち」と、もし投稿者が世を忍ぶ仮の姿で出会ったならば、まずは名刺を交換し、予算だ工数だと難しい顔をして眉間に皺を寄せていろいろ折衝し、結果次第では叱責されたりすることもあるんじゃないかなとか思います。
それでも、ハロショのインストアライブでは、みんなニコニコして手拍子して拍手しています。

若い二人が、ときに苦しみながらも、それでも自分たちの夢に向って、自分が「歌い手」としてステージに立てていることが嬉しくて仕方ないと言っているかのようなその姿に、いつの間にか励まされ、力をもらった、私たちおっさんたちも、明日からもまた、自分の持ち場で、将来自分の夢を追いかける若い人たちが、この先、少しでも走りやすいように、もういっちょ頑張るべかな、とか思います。仕事は嫌だけれども(笑)。

ほんとうに音楽の力は素晴らしいです。

*****

Bitter & Sweet のライブでは、グッズを買ったら握手会に参加できます。
これが、他のあらゆる握手に比べても、圧倒的な長時間で、粘れば30秒くらい余裕でお話しができるという、「何を話せば良いか困る」というレベルのしろもの(この握手会は、自分が握手を終えてもハロショ店内で待機していることができるので、他の人が握手してる時間を数えてみました。ので、30秒くらいってのはガチです)。

ある時、ほんまに話すことに困ってしまった投稿者は、あさひちゃんに「歌っているときの様子が楽しそうですね」と、いつもなら言わないような「語りかけ」をしてしまったことがあります。
それに応じてくれた あさひちゃんの言葉は次のようなものでした。

「それが、私の生き甲斐です」

……最後に、本人たちも拡散してくれとか言っているので、楽しげな二人の様子を。

(文=kogonil)

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