2018年夏のハロコン、よみがえる20年と今に生きる伝説

2018.8.25 東京 中野サンプラザ

乙女 パスタに感動  加護亜依・鈴木愛理
タンポポ 【2000/7/5】
作詞:つんく/作曲:つんく/編曲:永井ルイ
  • タンポポ、5枚目のシングル
  • 加護亜依が加入して最初のリリースとなる
  • 2011年にスマイレージが『ショートカット』のカップリング(通常盤)としてカバー。その際の編曲は板垣祐介
加護亜依は、モーニング娘。の4期メンバー。
モーニング娘。を卒業後も芸能活動を継続していたが、いくつかの大きな不祥事を重ねてしまい、一時は芸能活動を休止していた。芸能活動を再開してからも、プライベートの人間関係を原因とするトラブルや、所属事務所関連のトラブルに相次いで見舞われ続け、厳しい状況に翻弄され続けていた。
そうしたトラブル続きであることに加え、アップフロントとの契約解除後はハロー!プロジェクトとは絶縁状態だと見られていたところ、2018年の20周年記念の夏ハローにゲスト出演するとアナウンスされ、ファンの間に激震を呼んでいた。

もうね、楽曲がどうだからとか、どのOGメンバーが歌ってくれるとか、そんなことは些末なことであって、ハロプロの懐かしい楽曲が今に甦ってパフォーマンスされる、それだけで素晴らしいんだって、この企画自体を否定しかねない考えに導かれるほど、それほど、このゲストOGの登場シーンだけを集めているDVDは強力です。

ついに、ここで加護ちゃんが登場します。 いろんなことがありましたが、ほんとにいろんなことがありましたが、登場してくる加護ちゃんの変わらぬ表情に射貫かれます。

この記事は、映像化された商品のレビューではあるんですが、この時、現場に臨席していたので、どうしても記しておきたいことがあって。それは、夏の暑い最中だというのに、かつての加護ちゃんの刺繍も目立つ法被を着込んだ往年のファンが大勢、中野サンプラザに集まっていたということ。そして、加護ちゃんの「ただいま」の声に接して、そんな “いかつい” 往年のガチファンたちが、もう耐えられないといった風に涙を流したこと。

ロッタラ ロッタラ  鈴木愛理
Buono! 【2008/11/12】
作詞:岩里祐穂/作曲:井上慎二郎/編曲:西川進
  • Buono! のシングル
  • アニメ『しゅごキャラ!!どきっ』エンディングテーマ
鈴木愛理は、2017年に解散した℃-ute のメンバー。2017年には、同時に参加していたBuono! も(おそらくは)ラストライブを終えている。
℃-ute 在籍中から、℃-ute を越えてハロプロのエースと目され、その全音域にわたって心地よすぎる圧倒的なボーカルには定評がある。℃-ute 解散後は、ソロシンガーとして2018年にソロ単独武道館ライブを大成功させている。
一方、その “圧倒的ハロプロエース” であることの重圧に悩んだ哀切なエピソードもファンに周知され、生真面目で真っ直ぐな性格も含めてファンに愛された。その生真面目さから、かつては率先して「おふざけ」に走っても加減がわからずボケ倒し、活動の後半期にいたっては、あまりにも嬉しそうに楽しそうにボケるものだから逆に周囲が突っ込めないでボケ倒すという陥穽に陥り、結局、どうあってもボケまくるという、その謎の動きもまたファンに愛された。
グループの解散後も、後輩と共演するラジオなどでは、徐々にアイドル時代を脱皮するかのような言動も多くなっているが、圧巻のボーカルと謎のボケは健在であると云う。

参考:直近の鈴木愛理 関連記事

愛理さんが空気を読んでいましてね。MCなんかでも、ここは加護ちゃんが主役でしょとばかりに、自分は一歩下がっているどころか、”私の話なんか3秒で大丈夫” みたいな感じで、一生懸命、加護ちゃんを前に出そうとしています。

この辺りも、非常に(勝手な想像経由で)胸が熱くなるところで、いろんなことがありましたが、ほんとにいろんなことがありましたが、それはきっと、バックステージのメンバーたちにも陰に陽に影響したはずなんだと思うのですよ。自分は何も悪くないのにって思うことだって、きっとあっただろうと思います。具体的な悪影響があったわけじゃなくても、多感なお年頃であることに加え、それでなくとも過酷なアイドル稼業ですから、いろんなことがあるその都度、いろんなことを、残った者も、去った者も、それぞれにバックステージで思ったはずだと思います。その上で、こうして加護ちゃんを前に出そうと愛理さんが空気を読んでいることは、ほんとうに、いろんなものが詰まった、素晴らしい場面だと思う次第です。

もちろん、MCでこそ空気を読みながらも、Buono! の楽曲披露では、いっこも手を抜かないんですけどね、愛理さん。この20周年企画の只中だからこそ、”幸せになるために産まれ、誰かを幸せにするため生きているんだ” という歌詞の響くことったら!もう!

恋ING  加護亜依
モーニング娘。 【2003/11/6】
作詞:つんく/作曲:つんく/編曲:鈴木Daichi秀行
  • 20枚目のシングル『Go Girl 〜恋のヴィクトリー〜』のカップリング
  • 今尚、後輩メンバーのイベントなどでカバーされ続ける

加護亜依さんのハロプロのステージへの復帰にあたって、多くのファンが熱望した “人生ってすばらしい” あの楽曲は、別の公演日程で披露されますが、そちらは共演していた別のOGの不祥事によりお蔵入りすることになってしまいます。

でも、かえって、この『恋ING』が映像化されて残ったことは良かったかもしれません。恋に向う気持ちの揺れ動きを丁寧に歌詞にしたこの曲は、長らく不在にしていたハローのステージに帰ってきた加護ちゃんの、その “いろいろあったこと” を過去として、改めて前を向こうとする現在の加護ちゃんに、思いの外マッチしていて驚かされます。

それこそ、上にも述べたとおり、ハロプロの楽曲が多様な解釈を許す(客観的)力を備えているからなのか、ハロプロの20年に帯同してきたファンの(主観的)思い入れが入っているからそう思うのか、やはり判然とはしませんが、繰り返しどちらであっても、それはハロプロの20年という積み重ねがあってこそのものであることは明らかであって、そこにファンとして参加できていることを純粋に喜びたいし、加護亜依の中野サンプラザのステージに臨席できたことを感謝したいと、そう思います。

歌い終えて、笑顔をキープしたまま、落ち着いた声で客席にご挨拶したその「ありがとうございます」には、実際には、どんな想いが込められていたんでしょうか。実に、この20年を通覧しても屈指の名場面になったかと思います。

スクランブル  後藤真希
後藤真希 【2003/6/18】
作詞:つんく/作曲:つんく/編曲:鈴木Daichi秀行
  • 後藤真希のシングル
  • 後藤真希自らの主演映画『青春ばかちん料理塾』の主題歌
後藤真希は、モーニング娘。の3期メンバーで、モーニング娘。の、いわゆる “黄金期” の立役者。
その圧巻のタレント性は凄まじく、後藤さんに一目会いたくて、とハロプロのオーディションを受けたと後日述べる後輩も多く、モーニング娘。が国民的アイドルとして認知された黄金期を招来しただけでなく、その後のハロプロそのものすら、後藤真希なくしてはあり得なかったとされるほど。
いわゆるスキャンダルや不祥事といったものとは異なって、後藤本人の責任ではないところでのトラブルも多く、しかし、そうしたトラブルすらも受け止めてタレントとして屹立している姿には、またある種、聖性をすら帯びた後光を見る者もある。識者に寄れば、昔日、身内の不幸にあって喪服姿に身を包んでいる映像の、その横顔すら、鳥肌がたつほど美しいと評されるに至っては、その “栄光と桎梏” をまるごと引き受ける “タレントという孤独と苦しみ” に加えて、だからこそ “衆に秀でた者” としての誇りと神々しさまでが感じられたと云う。

さすがのオーラに驚きます
往時、まだ幼かった後藤さんもアイドルオーラは甚だしいものがありましたが、こうして大人になって、スッキリとした横顔で(背も伸びました?)登場してくると、改めてその圧巻のタレント性に驚きます。マジで、登場してきただけで空気が一変しますから。

しかし、さすがにパフォーマンス自体は少し辛そうだなって思って見ていたところ、間奏やサビの斉唱部分、むしろ現役時代を大きく凌駕するかのような圧倒的な声量で腰を抜かしませんでしたか。わたくしは抜かしました。さらに、そんな斉唱を終えてMCに移ると、さすがに息が荒いかと思ったら、その荒くなった息に合わせて、トークをフレーズ毎に切れ切れに発して、息が荒くなっていることを上手に(トークしながら!)リカバーしてることにも、そんな息に合わせた切れ切れのフレーズがちゃんとトークになっていることにも、仰天した次第。

そんなトークが、”私がハロプロにいた頃に来てた同じ人が、今日もまた居る” というものだったことも響きます。 途中浮気をしていたのか、それともずっと待っていてくれたのかはわかりませんけど、でも、居てくれることが嬉しい、と。

抱いてよ! PLEASE GO ON  後藤真希
後藤真希 【2003/8/27】
作詞:つんく/作曲:つんく/編曲:鈴木Daichi秀行
  • 後藤真希のシングル
  • 速いテンポのダンスナンバーだが、この時期の楽曲リリースペースも、非常に早かった

後藤真希の鉄板というも愚かなアップテンポな楽曲なんですけど、現役メンバーがバックダンサーを勤めます。 バックを勤めるのは、上國料萌衣(アンジュ)、川村文乃(アンジュ)、梁川奈々美(カントリー・Juice)、小関舞(カントリー)、井上玲音(こぶし)、岸本ゆめの(つばき)の6人。

で、これまで、こぶし井上さんについて、なんとなくどこか引っかかるところがあったんですけど、それが氷解したような気がしています。あくまで個人的な見解ですけど、井上れいれい、後藤さんに似てません?雰囲気が。もちろん、これは勝手に個人的にそう思っているだけですが、長い時間を隔てて、こんな符合を見いだせるのも、なんだか嬉しく感じている次第です。

もちろん往年のOGのパフォーマンスに現役メンバーがバックで華を添えることの感動と興奮については、もう言うまでもないだろうということで、言いっこなし。

2018.8.25 東京 中野サンプラザ

晴れ 雨 のち スキ ♡  加護亜依
モーニング娘。さくら組 【2003/9/18】
作詞:つんく/作曲:つんく/編曲:鈴木Daichi秀行
  • モーニング娘。さくら組のデビューシングル
  • 後に、どのメンバーによってカバーされようとも涙を誘う楽曲に

この楽曲そのものが、誰によって奏でられようとも涙を誘う名曲ですが、それが加護ちゃんによって奏でられます。

すでに登場済みということもあってか、この楽曲のイントロに合わせて上手側から登場してくる加護ちゃんの様子が落ち着いていて、しっとりしています(かつて、辻ちゃんと一緒に、矢口さんを “うるさいオバチャン” 呼ばわりして反抗していたのが嘘のようで、それだけで泣けてきますね)。”逢いたくないって、なぜ言っちゃったの?” の歌詞のあたり、客席からの「あいぼん」コールが起こって、それを一瞬、嬉しそうに受け止めてから、さらに一瞬、ほんの一瞬だけ、口元が震えて歪みそうになってるのは、決して私の見間違いではないと。

そして、加護ちゃんのこれまでには、もう今更言うまでもなく、いろんなことがあったわけですが、サビのフレーズの高音について、ああこの高音が出せるなら、この音色を途切れることなく響かせられるなら、もう加護ちゃんは大丈夫だって、そう思いました。

繰り返し、この楽曲は誰によって奏でられようとも涙を誘う名曲で、投稿者個人としては6期メンバー亀井絵里さんによる披露が、最高の『晴れ 雨 のち スキ』だったんですけど、この日の中野サンプラザでの加護亜依さんの『晴れ 雨 のち スキ』は、それを凌駕したかと思います。素晴らしかった。

恋のバカンス  加護亜依・福田花音
W (ダブルユー) 【2004/5/19】
作詞:岩谷時子/作曲:宮川泰/編曲:鈴木Daichi秀行
  • ザ・ピーナッツの楽曲をW (ダブルユー:辻希美/加護亜依)がカバー
  • W (ダブルユー) のデビュー曲
福田花音は、スマイレージ/アンジュルムの初期メンバー。
在籍時代から、ハロプロエッグからの昇格組として “恐いお姉さんたちが” と語ったり、シンデレラの産まれ変わりネタであったり、スマイレージとしてのレッスンなどのバックステージの様子からアンジュルムとしての後輩メンバーとの楽屋でのあれこれまで、いろいろ “ぶっちゃける” ことが多く、この意味で、現在に至るハロプロの、ある種のテイストの素地を固めた貢献メンバー。また、ハロプロ内の Berryz工房の熱心なファンであることも公言していた。
シンデレラの産まれ変わりネタが遠い歴史となったと見るや、自らを称するに「まろ」と云いだし、趣味に合う物事を形容するに「マロテスク」、ファンを「マロテスカー」と、オリジナルのセンスで周囲を固め始める点でも独自の道を歩んでいた。
2015年にハロプロを卒業してからは、作詞家として、いくつもの楽曲をハロプロに提供してくれている。

私もOGにカウントされていて嬉しかったと云う福田さん、なんか痩せてませんか?
いったいにハロプロのOGというものは、なんでこうも現役時代のイメージを良い方向で裏切ってくるのかと。

この楽曲披露にあって、加護ちゃんと福田さん、衣装も赤のドレス風で合わせてきていて、背格好も同じくらいで、まさしく(この日、妊娠中で登壇が叶わなかった)辻希美さんの役割を見事にやり切っていました。 このような場面を見せられたからには、やがて、いつの日にか、W (ダブルユー)の一夜限りの復活に期待を繋がないわけにはいきませんね…と、その福田さんによって垣間見せられたW (ダブルユー)復活の甘い幻想もそこそこに、続いての曲では、当の福田さんの身の上に、あの日のスマイレージが復活することになります。

夢見る 15歳  福田花音・和田彩花
スマイレージ 【2010/5/26】
作詞:つんく/作曲:つんく/編曲:平田祥一郎
  • スマイレージのメジャーデビュー曲

イントロで「おおっ!」という喝采が客席に広がりますが、イントロが終わりかける頃に、上手からアンジュルムの和田彩花さんが登場してきて福田花音さんのパフォーマンスに参加すると見えるや、会場からは悲鳴にも似た声が上がります。そこで奏でられるのは、かつてのスマイレージの名曲。

会場のスクリーンでも、2018年現在、今そこでパフォーマンスする和田さんと福田さんを抜きながら、同時に、当時のスマイレージ時代のパフォーマンス映像を並行してスクリーンに映し出すという趣向が展開され、これに心の柔らかい部分を攻撃されてしまったファンが、それこそ “なんて場面を見せてくれたんだ!” と心から血の涙を流したファンが多かったのではないかと。 改めて、現在のアンジュルムによってパフォーマンスされるものも含め、スマイレージには、とんでもない名曲が多かったのだと思います。

この直後のMCで、この演出に大泣きしてしまって、定められた進行ができずに、カントリー・ガールズの山木梨沙さんに代わってもらっていたシャ乱Qまことさんの様子は話題にもなっていましたが、しっかりこのDVDにも収められています。一緒に泣きたい気分ですよね。

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