演者の成長を体感するという新体験/レポ:つばきファクトリー演劇女子部 「遙かなる時空の中で6 外伝 ~黄昏ノ仮面~」

ダリウスを演じ切った岸本ゆめの

岸本ゆめのさんのダリウスが、おっさんである私から見てもカッコ良すぎたことは、先行するレポでも取り上げたんですが、取り上げ方が足りなかったと思うので改めて。

最終決戦の地で遭遇した “嬉しい誤算” にあって、むしろ鬼の一族こそ俺たちに手を貸せと言われて、それに対して放ったセリフ、「いいねえ、喜んで!」が、毎公演、ほんまに鳥肌もののカッコ良さだった(かつ最終決戦のアガる感じを見事に表現していた)ことは先のレポでも触れたとおり。それだけじゃなく、せっかく奪った梓を帝国軍に奪還される際の乱闘シーンでは、冷静に恐るべき選択肢を提案する本条政虎との応答でのセリフ、「なんだい?いま、けっこう忙しいんだけどね」とか、「ずいぶん、面白いことを言うねえ」ってあたりのセリフ回し、貴公子然とした様子も、余裕のある実力者然としたところも、いろんなところをセリフの放ち方それ自体で表現していて、このあたりは、岸本さん、お見事でした。

そのように、しっかり表現された貴公子にして実力者であるダリウスが、鬼の一族に代々継承されてきた仮面について、自らの自信と、そして恐れとを、”同時に” 抱いていることまでも、ちゃんと(セリフで説明するのではなく)観客に伝えていたのは、繰り返し、本当に岸本さん、お見事でした。

そしてカーテンコールでのキャストのご挨拶なんですけど、投稿者が観覧できた限りで、ある程度は誰もが演技してきた劇中の役柄を引きずりながらのご挨拶(たとえば小片さんだったら、完全に つばきファクトリー サブリーダー小片リサとしてのご挨拶というよりは、どこか高塚梓っぽさを残した小片リサとしてのご挨拶)になっていたのに対して、急に、そのまんまの “無理やりはっちゃけ大阪娘” 岸本ゆめのとしてご挨拶するもんだから、この点でも、まことに見上げた演者っぷりだったかと思います。

ルードハーネ(小野田紗栞)の淡々とした落ち着き

小野田紗栞さんのルードハーネは、初見時では “少し演技が固いな” と思っちゃうくらい、なんだか事態から距離を置いているような冷静な感じがありまして。この冷静さっていうか淡々とした感じが、ダリウスとの主従関係があるルードくんと、雇われている虎(須藤茉麻)とのコントラストにもなっていただけじゃなく、ラストの最終バトルシーンでも良い感じに効いてきます。

すなわち、最終決戦に挑もうとするダリウスのもとへ駆けつけようとする梓を前にして、虎がルードくんに梓の護衛を指示する場面、「あなたに指示されるいわれはないんですが…」と、鬼の一族の指令系統を踏まえた冷徹な応答をしておいてからの「いいでしょう!」という受諾。この一場面に表現されるルードハーネの主体的な関与と梓への(崇拝にも似た)感嘆の想い(「あなたって人は…」みたいな)が、それまでが冷静で淡々としてたからこそ際立っていて、だとしたら小野田さおりん、ものすごくしっかり演技してたんじゃん!とか思いましたよ。

そのご挨拶やブログの内容から、演技についての演出家さんからの駄目出しを受けながらも毎回の舞台に挑み続けたことが、ファンに爽やかな感動を呼んでいる小野田さおりんです。そのことも含めて、ほんとうによく頑張ったと思います。

本条政虎(須藤茉麻)のフィジカル

須藤茉麻さん、つばきメンバーに交じると、めっちゃ背が高いのに(Berryz工房では熊井友理奈さんという方が存在するため、背が高い印象はさほどなかったりして)、腰が低いんですよ。比喩的な意味で “腰が低い” んじゃなくて、物理的に、ステージ上での移動や劇中歌のダンスでの骨盤の位置が低い、ってことね。

殺陣の最中だけじゃなく、「暴れるぜーー!」とか、「やっと準備体操が終わったところで、暴れ足りねぇよ」とか言う場面も、見得を切るかのような所作とも相俟って、実に腰が低いんですよね。投稿者は格闘技の経験があるんですけども、腰を低く維持するのは、けっこう足腰の筋肉的にキツイので、これは凄いなと思ったところでした。他にも、鬼の一族ってことで、ルードくんの小野田さんと一緒に(説明的な)ダンスをする場面も多かった須藤さんなんですけど、小野田さん背がちっちゃいのに、小野田さんと同じくらいのところまで腰を落としてるんですよね。

何が言いたいかというと、セリフまわしや表情といった演技の部分だけじゃなく、しっかりと身体全体で本条政虎というキャラクターのフィジカルの強靱さを表現していた須藤茉麻が凄いってことが言いたいのです。

*****

主人公を演じる小片リサさんが、召還されて間もない段階で右も左もわからないで戸惑っている様子から、鬼の一族に掠われて、ヒトに忌み嫌われながらもヒトを傷つけようとしない鬼たちに気がついてからの別種の戸惑い、そして「私は黒龍の神子!」と自ら自覚して積極的に状況に関わろうとするところまで、劇の進行に合わせて、いろんな梓のスタンスをしっかり表現したように、鬼の一族の3人も、あまりにカッコ良いダリウス、淡々としたルードくん、暴れたくてしょうがない虎、といった個性は一貫させながら劇の進行に応じて主人公梓への態度を微妙に変化させていく様子も、きっちり演じていて、いや、何度も繰り返しますけども、ほんとに演劇って凄いよね。

と、そんな鬼の一族と敵対する帝国軍の精鋭分隊(これも「部隊」じゃないんだよね)の面々は次のページにて。

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