女優・須藤茉麻、その活躍が暗示するもの ~【観劇レポ】 眠れぬ夜のホンキートンクブルース in 新宿紀伊国屋ホール (やや短め)~

はじめに

先に新グループのお披露目イベントに参加して、夏焼雅さんが、その姐御肌がとっても良い感じに進化していて、「頼れる姉御」から「後輩を慈しむ先達」へと成長している様を目の当たりにして、いろいろ叱られるかも知れないどころか、自分でもそう思ってしまったことにビックリして戸惑ったことをお伝えしたことがありました。ええ、メンバーたちの成長のためにこそ、Berryz工房の活動停止は正解だったのではないか、と。

一方で、今でもBerryz工房とその思い出を、大事に大事にしてくれている熊井友理奈さんのこともあるので、あんまり安易に「活動停止は正解だった」とか言いたくないのが本音ではあるんですが。もっと率直に、そうは思いたくないというのが正直なところなんですけど。
それでも、そう言わないわけにはいかない例に、またひとつ、出会ってしまいました。
そうです、舞台女優、須藤茉麻です。

大女優の片鱗 須藤茉麻

これまで、長年その活動を見守ってきた気安さから「茉麻」と記述してきましたが、今後、私が投稿する記事では、きちんと「須藤茉麻さん」と記したいと思います。
℃-ute の舞美ちゃんについて、実際に面と向かうと「矢島さん」としか言えないように。オーディションの頃からずっと見てきたのに、どうしても「さゆ」とか「さゆみん」とか「ちゃゆ」とか「たう」とは言えず、こうして文字で書くときですら「道重さん」としか言えないように。敬愛する気持ちのうちの「敬」に重きが置かれてしまって、気安く呼びかけられないように。
今、それこそ安易に「長年その活動を見守ってきた気安さ」とか書いちゃいましたけど、「見守ってきた」わけじゃなく、その活動を「鑑賞することを許容してくれた」と言うべきですよね。そこまで言っちゃうと、そりゃ謙虚が過ぎて逆に嫌らしいとも思われかねないところながら、実際、ほんまに敬して仰ぎ見る見事な女優っぷりでした、須藤茉麻さん。
すばらしかった。

眠れぬ夜のホンキートンクブルース第二章~キセキ~

須藤茉麻さんは、水木英昭プロデュース『眠れぬ夜のホンキートンクブルース第二章~キセキ~』の座組に参加し、8月末から小劇場の聖地である紀伊國屋ホールの舞台を踏んでいます。
はい、見てきました。前から2列目のVIP席で。

ホンキートンクといえば、ある世代にとっては筒井康隆の小説でお馴染みかと。
その楽曲の範疇を名指す単語なのか、その範疇に属する楽曲を売りにする形態の飲食店を名指す言葉なのか、結局のところ不明ながら、このお芝居においては、ホンキートンクは舞台となるホストクラブの名称。このホストクラブを舞台に主要な登場人物が共通する脚本で、主要な俳優も固定で、水木英昭プロデュースが11年にわたって継続してきたお芝居の、今宵はその第二章。

こちら、非常に練られたお芝居であり、見ごたえのある座組であり、登場する俳優さんたちも、ちょっとした所作の一つ一つに、その背景での鍛錬が伺えて、まことにすばらしい舞台だったわけですが、そちらについて(すでに何名か、すっかり魅せられている俳優さんがいたりするんですが、それらについて)も詳述し始めると終わらないので、あくまでハロプロ関連で、須藤茉麻さんに焦点を絞った記事である点、ご了承くださいね。
(つまり、触れてないからといって、お芝居そのものはどーでも良いわけじゃないってことです。)

須藤茉麻さんが紀伊國屋ホールの板を踏むのは、ファンクラブのバスツアーにもVTR出演してくれたモト冬樹さんとも共演した前回の『昆虫戦士コンチュウジャー』に続いて2回目。「モト冬樹」という一般的な知名度の上でもビッグな大先輩と共演どころか、たいへんに気に入られ、可愛がっていただいたことも周知されている須藤茉麻さんですが、今回は、山田邦子さんとの共演です。また東京キッドブラザーズであったり、座長(?)の水木英昭さんがスーパーエキセントリックシアター出身であったりと、演劇方面に疎い者(← 私ね)すら「あ、知ってる」といったレベルの方々とご一緒している須藤さんです。
どころか、この舞台においては、過去に『刻め、我ガ肌ニ君ノ息吹ヲ』に出演していた役者さんであったり、『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE』で共演していた超イケメン俳優さんと再び共演していたり、舞台を踏むたびに、座組を渡り歩くたびに、しっかりと、顔見知りと共演者が増えていくあたり、須藤茉麻さんは着実に【舞台女優】として、あるべきキャリアを正しく積んでいる模様です。

そんな舞台にあって、須藤茉麻さんはホンキートンクに客として通うキャバ嬢(だよね?)の樹里亜役。劇中、かなりメインとなるだけではなく、後述するように、このお芝居の終盤で大事なところを担う役どころです。

…触れないと言ったけれど、ネタバレにならない範囲でひとつだけ。メインテーマである「キセキ」の斉唱はすばらしかった。W主演で現役ホストでありながらオーナーでもある政秀役の津田英佑さんのラストの斉唱は、ほんとうにすばらしかった。
なるほど、人の心を動かすのは人の声なのだな、と。
こうしたことに「すばらしかった」と喜べるのも、私の場合は、先にハロプロを知っていたからこそかな、と。

須藤茉麻 内実の伴った重厚な演技

須藤茉麻さんの扮する樹里亜は、登場の段階では、夜の女たちを癒すホストクラブ「ホンキートンク」の新人ホストを追っかけて店を渡ってきた Sッ気たっぷりの豪快なキャバ嬢といった役どころ。
この豪快で蓮っ葉で享楽的な夜の女といった役どころ、一見すると、先にバスツアーのレポでも述べたように、心のどこかに、如何ともし難い「おっさん」を宿している豪放磊落な須藤茉麻さんであってみれば、その「うぇ~い」的な押し出しを、いっこも遠慮するところなく打ち出せば、役作り的には十分かとも思われ、事実、状況説明だったり登場人物の紹介を終える冒頭部分が終わるくらいのところで須藤さん扮する樹里亜が登場してくるタイミングでは、そうした ”茉麻「らしさ」全開でそのまま正解” と思える演技だったわけですが、これが物語が展開していくに連れて大きく裏切られます。それは、物語の展開に合わせた須藤茉麻さんの演技の変化だけでなく、終盤で明かされる、あるドンデンガエシにあたって、舞台上の須藤茉麻さんの様子には大いに驚かされることになります。
すばらしかった。

もちろん、詳細に物語の展開を追った上で、その終盤の須藤茉麻さんの様子を詳述したいんですが、演劇の内容に踏み込むと、これはネタバレ必至なので、後日発売されるDVDだけでなく公演日程そのものも残されている現状では、こちらは割愛させていただこうかと。
すみません。

ただ「豹変」するだけではなく

それでも、ある程度補足すると、かつての『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE』において、いよいよ追い詰められて「論破」され、それまでの人見知りキャラを豹変させ、サイコな本性を顕にしたあの演技は、その「豹変」それ自体が意表を突いた凄まじいものであった以上に(いや、その「豹変」が「豹変」であるがためにこそ)それまでの「人見知りキャラ」がしっかりと演じられていたが故に、「サイコな本性」の演じ別けが際立ったように、まさしく須藤茉麻さんの【演技】の本物具合が明らかだったわけですが、それは今回の『眠れぬ夜のホンキートンクブルース第二章~キセキ~』でも確かめられます。
むしろ、『ダンガンロンパ2』での「豹変」から、さらに進化して、『ダンガンロンパ2』での「豹変」をさらに凌駕して、そして「豹変」といった、わかりやすい変化ではなく、物語の展開に自然に従ったキャラの変化を、丁寧に演じています。

ってか、最後の大事な場面で、ちゃんと須藤茉麻さん、泣いてるんですよ
物語の展開に応じてそうなるだけでなく、須藤茉麻さんが演じている登場人物の(劇中における)来歴の上でも、非常に説得力のある形で、ちゃんと泣いています。客席で観劇しているこちらの気持ちも思わず動いてしまうくらい、ちゃんと【演技】が客席に響くレベルで、しっかり須藤茉麻さんは泣いています。
加えて付記しておけば、この場面は、それまで劇中で積み重ねてきたあるプロットが、まるごと「スカされる」場面でもあり、観客としても、感情移入して見ている登場人物によっては、思いっきりコケる場面でもあって、全般的にうっすらコミカルなテイストが基調となっております。そうした場面で、全体的な舞台のプロットとしてのスカしに、上手に絡みながら、自身が演じる人物の来歴に相応しい形で、きっちり「泣いて」みせる須藤茉麻、まことに「女優」でありました。
何度目かになりますが、すばらしかった。

女優 須藤茉麻と、あの「茉麻」と

迫力の演技と、その演技にこちらの心が正しく揺さぶられたことから、もはや「須藤さん」と記すほかないほど、演者として尊敬せざるを得ない須藤茉麻さんですが、それだけではないところもお知らせしないではいられないところです。

カーテンコールでは、たくさんの俳優さんたちと並んで、座長(だよね?:水木英昭さん)が提示する話題にあれこれと面白おかしく応答する俳優さんたちのお話を、目を輝かせながら聞いている須藤さん。お隣の俳優さんの発言に、何やら客席に聞こえない範囲で、こしょこしょと内緒話し風に応答している須藤さん。そのひとつひとつが、その大きな目がキラキラとして、ほんとに嬉しそうな様子を発しているところも、若干はにかみ気味に微笑んでいるところも、そして、客席前列のVIPシートに、自分を応援してくれている、かつてのベリヲタの懐かしい顔を見つけて、そっとアイコンタクトしているところも(残念ながら投稿者にあらず)、そこは、やっぱり、愛らしい「茉麻」のまんまで。

「どこにも行かないよ」と熊井ちゃんは言った

それは熊井友理奈さんのディナーショーでのこと。熊井ちゃんが、世界的なブライダルショーのランウェイデビューを果たしたことで、熊井ちゃんのブログには「熊井ちゃんが遠くへ行っちゃうようだ」とのコメントが殺到したのだとか。このこと自体、当の熊井ちゃんがお話してくれたことなんですけど、そんなコメント類を受けて、熊井ちゃんは、「私はどこにも行かないよ」「タレントをやろうがモデルをやろうが、どんな活動をしようが、私のホームはここだから。緑のペンライトが輝く、ここが私のホームだから」と、明るく、でも真剣に話してくれました。
そうした「熊井ちゃんが遠くへ行っちゃうようだ」とのコメントをした当のファンがディナーショーに参加してくれていれば、この熊井ちゃんの気持ちが伝わっているだろうとも思うんですが、必ずしもそうとも限らないので、ここでしつこく展開して繰り返してみる投稿者なんですが(コメントした人に届きますように)、まったく同様にして、上述したような、圧巻の演技っぷりばかりであれば、それこそ【茉麻が遠くへ行っちゃうようだ】という感じにもなりかねません。事実、投稿者も、敬愛のうち「敬」が優って、思わず「須藤茉麻さん」としか呼べなくなっているように。
でも、これまた熊井ちゃん同様、カーテンコールで、ステージ上でアドリブで展開していくあれこれに反応して、あるいはステージから客席に懐かしい顔を見つけて、そうした一瞬一瞬に見せてくれる表情は、やっぱり、あの「茉麻」のままで。あれほど美形な上に、目鼻立ちのパーツが、どれも強くて、ビジュアル的な押し出しには「圧」すら伴う一方で、どことなくはにかんだような様子が、とっても可愛くて。
あの愛らしい茉麻は、やっぱり茉麻でした。

キッズたちの明日を展望しながら

須藤茉麻さんのレポから大きく逸脱するようですが。

誰しも「いつかは」と覚悟しながら、それでも急な展開に驚き、率直に「残念だ」と嘆いてみせて良いものかどうかすらファンは戸惑っている ℃-ute の来年6月での解散告知
活動停止ではなく「解散」であることから、一部、非常に深刻な予測も飛び出していたりして、しかも、なかなかの信憑性があったりします。

ですが、それでも。

須藤茉麻さんの舞台女優としてのキャリアの積み方も、その内実の伴った重厚な演技の技量も、そして、それにも関わらず、私たちにとって「あの茉麻」と言い得る、愛らしい人柄が折に触れて感じられるところも。
こうしたすべてが、「解散」後のメンバーたちの先々の行く末を暗示しているようではありませんか。
よしんば、私たちファンには知り得ないところであっても、そうであっても、必ず彼女たちの愛らしさは息づき続け、彼女たちの歩んでいく先で、彼女たちの周囲には笑顔が溢れているだろう、と。それが私たちに知られない領域でのことであったとしても。

Berryz工房の「活動停止」が正解であったならば、彼女たちの歩む道筋に、そもそも「不正解」なんて、あるはずがないんですから。

そのことを、須藤茉麻さんの舞台上の姿が示してくれているかのようです。迫力の演技の女優としても、にも関わらずの「あの茉麻」が見え隠れするところも。

(文=kogonil)

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