「前代未聞ってこういうことか」と全世界が納得した モーニング娘。’21 コンサート Teenage Solution ~佐藤優樹 卒業スペシャル~

はじめに あたりまえの単独公演のように圧巻の武道館を

360度全方位からの視線が集まる中央ステージでのフォーメーションは凄まじかった。

日本武道館の中央にステージが設えられ四方にサブステージが展開する構成。
これを余すところなく使い倒して、ある時は長く縦列して、ある時は横に広く整列して、中央のセンターステージに集合するに際しても、ある場合は細かく場位置を入れ替えて、ある場合はセンターから四方へ向き直って広い武道館全体に目線を投げて… 一瞬たりとも目が離せない圧巻のパフォーマンスでした。たとえば、デコ出しの上にカリブなドレッドヘアも鮮烈なヘアアレンジで登場してきた牧野真莉愛さんの、バランスの取れた肢体と迫力のパフォーマンスに眼が釘付けになったかと思ったら、メンバーのくるくるとした場位置移動のために、あまりにも痩身ながら、しかし、愛らしく可愛らしく、その上でモーニングのパフォーマンスを全身で引き受けている山﨑愛生さんに眼を奪われ、かと思ったら目の前でしっかり絞って割れてる腹筋も見せつける腹出しで、同時にニッコニコな野中美希さんに視線を持っていかれます。その持っていかれたまんま野中さんを追っていたら、メンバーが交錯する瞬間、心ごとガシッと掴みに来るようなストレートな視線を投げてくる小田さくらさんに注意を奪われて… …って感じで、文字通り、右往左往して、全部のメンバーの全部の瞬間があまりにも魅力的なもんだから、心が少しも落ち着かずに、だから、凄まじかったという印象のみで、細部を覚えていない始末。

つばきファクトリーの武道館が素晴らしかったので、明日のハロプロに希望しか見えなかったり、アンジュルムの武道館が圧倒的だったので、立った鳥肌を収めるのに忙しかったり、Juice=Juice 横浜アリーナの組み立てが見事過ぎたので、自らのリソースの乏しさに天を恨んでみたり、そういうことをやっていて、うっかりモーニング娘。のことが念頭から消えかねないほど。それほど、この秋口から各グループの大きなステージが次々と開催されて、しかも、どのステージも素晴らしくて、それこそファンの心は少しも落ち着かずに、文字通り右往左往していたこの2ヶ月少々だったわけですが。

しかしながら。
さすがにハロー!プロジェクトのフラッグシップです。
やはりモーニング娘。のステージは素晴らしかった。従来であれば、さすがに他のグループに比べて踏んでるステージの数が違うと言いたいところですが、この2年弱は、個々のグループの単独公演が封じられたような日々だったこともあって、とりわけモーニング娘。のみが、他のグループに比べて練度を高められるような状態にあったわけではないというのに
実に、素晴らしいステージでした。

もちろん、2021年12月13日の月曜日に、九段下の日本武道館にて開催された『モーニング娘。’21 コンサート Teenage Solution ~佐藤優樹 卒業スペシャル~』のことです。次々と追加になるライブビューイング会場での視聴も合算して、過去最高の動員だったとの報道もあり「マジでドームが実現できたんじゃないか?」との声もあります。そう、このコンサートは、10期メンバー佐藤優樹さんの卒業コンサートでした。

でもね。
佐藤さん本人が、当たり前の普通の単独ライブをやりたいと希望していたとのことで、そうした希望というか表明に相応しい、しっかりとした “普通の” モーニング娘。の単独ライブでした。自身の卒業だというのに、変にセレモニーに時間を取って、せっかく温まった会場が冷めるようなこともなく、むしろ(後述するようにちゃんと涙もあったけど)あっけらかんと、佐藤優樹らしく、いろんなものを期待するファンの予測を裏切るというか肩透かしするというか、ほんとに まーちゃんらしく、でもだからこそ、しっかりと、圧倒的な、モーニング娘。単独の堂々たる武道館公演でした。

佐藤優樹 そのドタバタをモーニング娘。の核として

この日、2021年12月13日をもって、10年と3ヶ月ほどになるモーニング娘。としての時間に、10期メンバー佐藤優樹さんは区切りをつけました。加入してきた当時から、その天真爛漫というなら、あまりにも天衣無縫な、その縦横無尽というなら、あまりにも奔放で自由な佐藤優樹さんは、モーニング娘。の核であり続けてきました。

まーちゃんの加入当初、モーニング娘。には、それこそ伝説の6期メンバーが所属していました。当時、自らをして “過去最強” を自負する5期メンバーがゆっくりと抜けて行っても、その卓越したパフォーマンスの水準は維持したまま、田中れいな道重さゆみ が率いるモーニング娘。には、今に通じる “幸せの風景” が展開されていました。 “もっと互いに切磋琢磨すべきである” といった初期の先輩たちの声をものともせず、れいな や、さゆ が、9期10期という後輩たちを優しく迎え入れている様子は、今尚、みなさまの脳内に鮮明かと思います。でも、思えば、先輩たちのそんな母性というか慈性を引き出していたのは、むしろ佐藤まーちゃんの方だったのではないかと。佐藤優樹さんの、あまりといえば、あまりな天衣無縫さこそが、多くの先輩方に作用して、モーニングの “幸せの風景” を導いていたのではないかと思えませんか。

自らが先輩の立場となっても、時にあまりにも自由奔放であった佐藤優樹は、あちこちの後輩たちにいろんなお世話をしてもらうことで、後輩たちが後輩であることに甘えることなく、それぞれに独自のモーニング娘。となって行くことを促していた触媒のようなところがあるわけで、やっぱり、ここでも佐藤優樹さんの存在が大きかったことは外せないと思うのです。

バックステージを追ったDVDのドキュメントなどでは、時に、佐藤まーちゃんの天真爛漫と自由奔放さが、見方によっては一部の後輩を傷つけたりするように見える場面もないではありませんでした。同期の10期メンバーの証言では、とりわけ先に卒業して行った工藤遥さんや飯窪春菜さんからは、はっきりと(加入当初のハワイでの喧嘩も含め)”迷惑を被った” エピソードも拾うことができます。最後まで一緒に活動する同期となった石田亜佑美さんとも、時に、いろいろ衝突しているような場面がDVDに残されちゃったりしています。

しかし、そうしたエピソードを耳にし、周囲とぶつかっているかのような場面を(DVDを介して)目にしても、不思議と、それを決定的なトラブルとすることは少なかったように思います。同期の工藤さん、飯窪さん、石田さんから、上に述べたようなことがあったからと言って、佐藤さんに対する決定的な苦言が出てきたわけではないように。そして、上に「被った」としたように、佐藤さんの自由さで迷惑をかけられたかのような後輩たちも、それに怒ってるとか困ってるわけではなく(いや、困ってはいただろうけど)むしろ、佐藤まーちゃんの自由さと、それによる自分たちの迷惑をパッケージで楽しんでいるようなところもあって、そんな後輩たちの在り方も含めて、”まーちゃんが引っ掻き回すモーニング娘。” には、独特の味わいが醸し出されていました。まーちゃんが居ることによるスリル感がたまらないというか何というか。

上に述べたことを総合して、この10年、見方次第では、佐藤優樹さんこそ、モーニングの核だったのではないかと思えます。というか、佐藤まーちゃんに引っ掻き回されるドタバタこそ、”幸せの風景” に次ぐ、ファンの心に欠くべからざる “モーニングの風景” であったかと。

そんな佐藤優樹さんは、この日の武道館をもってモーニング娘。から卒業します。そんなメモリアルなライブの模様はページを切り替えて。

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