捕まえようとすると “スルり” と逃げていくリアル猫娘 ~新沼希空さん卒業~

はじめに はじめて推しを失う日

タレントの主戦場はテレビ… といった常識が崩れて、個々に発信する手段も多様化した結果か、アイドルやタレントという活動がずいぶんと(一時期に比べて)息の長いものとなって久しい。そうした傾向を、あるいは主導するかのように、ハロプロはメンバーが卒業しても、引き続き活動を続けてくれる例は多い。

以下しばし、あくまで個人的に… ということになるが。
道重さゆみさんは、2014年の11月にモーニング娘。を卒業して長い休養期間に入ったが、しかし、今尚、日々可愛い自分をネットに溢れさせてくれており、この2024年の夏も単独ライブの予定が告知されている。
(参考 → エンタメアライブを「道重さゆみ」で検索

Berryz工房は、2015年の3月に武道館公演をもって無期限活動停止に入ったが、熊井友理奈さんは、入籍の報告をファンにしながらも、活動を継続し、バスツアーまで開催する始末。(入籍どころか懐妊の報告をした元℃-ute 矢島舞美さんも、その後で、敢えて新しくSNSを始めたりもしている)
(参考 → エンタメアライブを「熊井友理奈」で検索
(参考 → エンタメアライブを「矢島舞美」で検索

やや衝撃的な顛末で、不本意な形でグループから離れることになった小片リサさんも、ソロとなってから、かつてのアイドル時代以上に活き活きと魅力的に愛らしさを爆発させて(私個人の見方だけでなく多くの小片さんファンの一致した見方かと)充実した日々をファンと共有してくれている。
(参考 → エンタメアライブを「小片リサ」で検索

上に、個人的に心酔している “推し” を例示したけれど、ハロプロだけに限定しても、それこそ初代の姐さんからスピンアウト的な周辺シャッフルユニットに至るまで、一時的な沈黙や、それこそ結婚から出産まで経ていようとも、息の長い活動を継続してくれているメンバーは多い。

そして繰り返し、道重さんも、熊井ちゃんも、小片さんも、(中には一方的なファン側の思い込みや誤解も含めて)いろいろあったし、すったもんだがないわけじゃないけど、今でもファンに笑顔を見せてくれるし、個別系のイベントだったり、あるいはディナーショーでのお見送りなんかでは、グループに所属していた頃と比べて、驚くほど個々のファンにフレンドリーに接してくれてもいる(← いや、ほんまに驚くよ!)。熊井友理奈さんなど、2024年3月のライブ(@横浜ランドマーク)では「いっしょに年を取っていきましょう♪」と客席に呼び掛けてくれたほど。

そんな趨勢の中、やはり、当たり前だが、アイドル卒業と同時に芸能活動そのものを引退してしまうメンバーもいる。いや、ほんまに、当たり前だが。

2024年6月10日の武道館公演をもって、つばきファクトリーの新沼希空さんが芸能活動から引退する。

いかにも想像力に乏しかったと言われたら返す言葉がないところだが、上に述べたように、道重さんも、熊井ちゃんも、小片さんも、ファンの前に立つことを続けてくれているので、実は、投稿者のそれなりに短くないファン歴にあって、”推しとの本当のお別れ” は、これが初めてのことになる。

たとえ推しが結婚しようとも

かつて、こんな記事を投稿して公開いただいたことがある。

カントーロヴィチじゃあるまいにと自分でも思うけれど(参考|『王の二つの身体』)、アイドル活動中の恋愛については可能ならば隠して欲しいけれど、それでも推しのタレントが結婚することそのものは、そのタレントへの愛情に大きな影響は及ぼさない場合もある(私の場合ね)。

かつて活動停止直前の Berryz工房が2015年に開催した沖縄バスツアーの初日夜のイベントで、メンバーが客席に “自分たちと本気で結婚したいと思っている人はどのくらい居るのか” というテーマで挙手を募ったことがあった。結果、メンバーとガチの交際や結婚を望んでいるファンが、実は、意外と少ないことに、問いかけた Berryz工房のメンバー自身が驚くという場面へと展開した。つまるところ、ガチ恋から単なるファンまで、いろんなグラデーションがある中で(一部、信仰の対象として崇拝する者{=わたくし}も含む)、一般に流布しているような「ファン」という在り方への(半ば蔑視にも似た)共通理解とは異なって、あくまでも演じられた役割に即して、そして、その役割を演じてくれた(役割の向こうの)一人の女性に対して、どこまでも感謝するというスタンスのファンも意外と多いことは、みなさん、日々の推し活動の中で実感していることかと思う。たくさんの(その演じてくれている役割を介して)幸せな時間を過ごせたこと、そのことを率直に感謝する気持ちは、思った以上に多くのファンが共有していると思う。

上に Berryz工房の熊井友理奈さんや元℃-ute の矢島舞美さんに触れたが、だから、交際していたことや結婚したことや懐妊したことそれ自体は、推しへの気持ちに、意外と(ほんとに自分でも意外なほど)影響しなかったりもする。

でも、引退されちゃうのは、初めてのことなのだ。

たとえ「アイドルを」応援していることに自覚的であっても

たった今、アイドルを演じてくれている生身の女性ではなく、その女性が演じてくれている役割にこそファンは反応しているのだ… とも取れるようなテキストを記したけれども。

しかしながら、そのようにアイドルという文字通りの「偶像」をこそ愛しているのであっても、それでも、その偶像を通じて、ファンと共犯的に偶像を成り立たせているその向こうの一人の人間に気持ちが届くということは、ないわけではなかったりもする。

かつて、こんな記事を投稿して公開いただいたことがある。

握手会だのお見送り会だの、いかにミニライブであっても、それなりのステージの後に、何百人もの見知らぬ大人との連続した応対は、身体が疲れているという以上に、精神的に疲弊するだろうと、かつては、そうしたイベントの開催それ自体に批判的でもあった。

しかし、演じてくれている役割であるアイドルにお見送りされ、アイドルと握手する、そんな中で、時折、アイドルという役割を超えて、その向こうに、こちらの声が届いたと思えるような瞬間がないわけではなかった。どころか、あくまで時折、アイドルという役割の向こうから、そのアイドルを演じてくれている一人の女の子の肉声が届いていると思える場合も、ごくわずかだけど、まったくないわけではなかった。

さらには、かつて、こんな記事を投稿して公開いただいたことがある。

お仕事としてのステージと、その「お仕事」を “やってくれている” 一人の人間とを切り分けて見るべきであることは、ファンとしての礼儀でもあるとまで思っているが、同時に、お仕事としての場面に、そのお仕事をしている個人としての幸せが皆無というわけではないのは、それはアイドルやタレントというお仕事に限ったことではなく、どこでどんな自己実現が叶うかは、それこそ(客席のこちら側も含めて)様々だし、そして、様々であって良い。

だから、ファンの見えないところで恋愛があろうとも(さらに、ひょっとして見事な演技でファンは騙されているのであって実はグループがめっちゃ仲悪くとも)、そして、よしんば、結婚しようとも、出産しようとも、それが「偶像を愛しているファンとしての気持ちや振る舞い」に思った以上に影響しないことと同時に、長年にわたって推していると、時折、その本来は別であるはずの役割と演者の壁を越えて、言葉や気持ちが届くことが、まれに、ある。

でも、それは、アイドルを卒業してもタレントとしてステージに立ってくれている限りにおいて、ごく稀な幸運として降ってくるものだ。芸能活動そのものを引退されてしまうと、そんな幸運は、言うまでもなく、期待すべくもなくなる。

とらえどころのない愛されリアル猫娘 ~つばきファクトリー 新沼希空~

自分のことを未来少女だと思ってオーディションに応募して、大好きなモーニング娘。の石田亜佑美さんと同じチームで椀子そばにチャレンジして嬉しくて静かに泣いていて、つばきファクトリーに抜擢されて2代目のリーダーにもなった新沼希空さんは、2024年6月10日の武道館公演をもって芸能活動から引退する。

新沼希空さんの魅力を語ろうと思うなら、いくらでも文字数を重ねることができるだろう。

困り眉から「おもしれー女」まで

上述の卒業公演となる武道館チケットの売り上げについても、SNS などを介して希空ちゃんが声をかけるや、多くのファンが自主的な拡散に動いたことや、武道館公演に つばきファクトリーの過去の全メンバーが勢ぞろいすること(参考)について、個別イベントの現場で「わたしだから呼べたんだからね」と発言していることも、全部含めて、ファンだけでなく、関係者全員に愛されたメンバーであった。

印象深いのは、ほとんど “こぶつば” のお披露目でもあった NEW FESⅡにて、途中のトークコーナーで自己紹介的なお話を、こぶし、つばきの半分ずつのメンバーが(公演替で)担当するところで、前列に折りたたみ椅子で こぶしメンバー、後列に、すこし背の高いストゥール風の椅子で つばきメンバーが並ぶ中、背の高い椅子だから足がつかないけれど、みんな、おしとやかにスカートの裾を気にして、ちゃんと両手で抑えて足を揃えているのに、希空ちゃんだけ、足をぶらぶらさせて遊んでいたこと。

そんなどこか幼い印象は活動の全期間を通じて鮮烈だった。
最近のつばきファクトリー冠番組でも、愛らしく幼く見えるところは多く、楽曲のタイトルやテンポがシャッフルされた企画(「#22 つばきファクトリーランダムダンスチャレンジ」)では、フォーメーションの中で迷子になる様子、迷子になってしまったことを責められ釈明する様子があまりにも愛らしかったし、メンバーのイメージ調査結果がクイズになった企画(「#52 登って答えろBEST3!つばきイメージランキング」)でも、問題が切り替わる都度、お立ち台(©谷本安美)からメンバーの並びに駆け戻る際のテトテトとした駆け足が異様に可愛かったりと、昔のフワフワした雰囲気は変わらずに希空ちゃんの中に活き活きと息づいている。とりわけ微妙に脱力した拍手姿が印象深い(っすよね?)。

変わらず息づいているというなら、かつて困り眉と称された希空ちゃんの困った表情、どこか口角が下がっているところも含めて、全体的にいつも “困っていた” 希空ちゃん、販促イベントで個別にお話しする機会がある際には、改めて、なんとなく困っているような雰囲気もあって、消え入りそうな感じも含め、多くのファンが、変わらない新沼希空を感じることができただろう。

さて、そんな清楚でおっとりした印象だった希空ちゃんの破天荒な自由さの一旦に触れたのは、どこかのライブハウスでのMCだったか記憶は定かではないが、客席に向かって「(ファンは)“ふぅ~~” とか言えば、(メンバーが)やってくれると思ってるんだよ」と言い捨てた時だったか。

霊視鑑定(「#7 霊視鑑定ランキング」|「#17 つばきファクトリー アイドル天職診断ランキング」)で、なんと冠番組のシーズンを跨いで連続して最下位になったときも、いつしかファンからも冠番組のスタッフからも「おもしれー女」と呼ばれるようになったときも、思えば驚異的なことなのだが、愛らしく消え入りそうな雰囲気を保ったまま、コミカル… と言うにはあまりに自由な様子を見せていた。

とらえどころのない魅力 リアル猫娘

などと特に字数制限のない Web の記事であることに甘えて、いろいろ書き連ねてきたけれど、個々の魅力は、それこそ初発の印象から活動の途中で大きく別の魅力が顔を出したところまで含めて、いろんなメンバーのファンが、それぞれに、個々の “推し” に対して抱いているところだろうし、それこそ個々のファンがそれぞれに、何万字でもテキストを重ねて行けるだろう(私もまだまだいけるけど自粛中)。

ただ、そんな中でも、新沼希空さんに特有のものではないかと思えるものがある。

それは、“非常に魅力的なんだけれど、どこがどう魅力的なのか、明確にしようとするとスルリと逃げて行ってしまう” その魅力それ自体の捉えどころのなさではないかと思う。

希空ちゃんを慕う後輩の豫風瑠乃ちゃんも希空ちゃんを指して「にゃんさん」と呼ぶように、猫に似ているとして(しかし当人は動物が怖いらしいが)”リアル猫娘” と呼ばれていた新沼希空さん。

その称号は、希空ちゃんが猫に似ているから… ではなく、希空ちゃんの魅力それ自体が、どこか捉えどころがなく、文字にしたり言葉にしようとして、その魅力を明確にしようとすると、するりとスリ抜けて逃げて行ってしまうような、そんな捉えどころのなさを如実に示したものであったかとも思う。

卒業公演に伴って芸能活動を引退する新沼希空さんの、私たちを魅了したその魅力を、広く世間に知らしめ、この場を借りてしっかり記録に留めておこうとしても、希空ちゃんの魅力は、あたかも揮発するかのように、スルリとこちらの手を潜り抜けて逃げて行ってしまう。かといって、それでは新沼さんの魅力がまったく散逸してしまうのかというと、そうではなく、逃げて行った先でこちらを振り返って「べー」と舌を出しているような、追いかけて来ないのかと、こちらを誘っているような、どこかイタズラっ子のような印象もあって、逃げた先でこちらを挑発するような印象もある。

そんな、ほんとに奔放な猫のようなところが、いかにも新沼さんらしいと思える… と記述して果たして伝わっているだろうか。

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その奔放な魅力だけでなく、アイドル新沼希空それ自体、2024年6月10日の武道館公演をもって、私たちファンの前から、あたかも遊んでいる猫のように、スルリと逃げて行ってしまうことになる。

さて、希空ちゃんは逃げて行った先で、呆然とするファンを振り返ってくれているだろうか。

(文=kogonil)

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