道重さゆみが(ひょっとしたら)ファンに与えてくれた最後の福音について

たとえば、現在無期限活動停止中のBerryz工房ですが、今なお、何人かのメンバーがファンに向けて笑顔を見せてくれています。その姿を見ることができるのは、本当に嬉しいことです。彼女たちの明るい表情、温かい眼差し、そしてこれまで長い時間をともに歩んできたファンへ向けられる変わらぬ愛情。それは、ファンにとって何よりの幸せであり、心を満たしてくれるものですよね。しかしながら一方で…、一抹の寂しさもあったりしませんか。いや、あくまで “たとえば” の話として。

というのは、このコラムを記している報告者は、メンバーたちよりもずっと年上だから。
今尚、ファンに向かって、客席に向かって、誠実に笑顔を見せてくれるメンバーたちが、「これからも一緒に歳を重ねていきましょうね」と語りかけてくれるのは、本当にありがたいし嬉しい。しかし、彼女たちよりずっと年上の私にとっては、いつか必ず訪れる未来に対する現実が胸に迫りもします。彼女たちが成長し、年齢を重ねた美しくも淑やかな笑顔を、この目で見届けられなくなる日が、いずれ必ず来るという現実が。

昨今の経済的な問題や、それに対する政治的な無策によって、ライブやイベントへ赴くためのリソースを確保することが難しくなるという懸念もあるけれど、しかし、それ以上に避けることのできない現実として、いつか生物学的に、未来を共に歩むことができなくなる日が訪れます。時間は誰にとっても平等に流れるというのは嘘ですよね。年齢によって、愛する対象との年齢の開き方によって、時間の流れる意味は変わります。だからこそ、彼女たちと過ごせる一瞬一瞬がいかにも貴重であることに思い至るという次第ですが、大事なことは、いつか必ずこれ以上の未来を見られなくなる日がやって来るということ。

だからこそ、メンバーたちが「これからも一緒に歳を重ねていきましょうね」と言ってくれることは、とても嬉しく、ファンでいて良かったと心の底から実感するものの、一方で、いつまでも一緒にはいられないという切実な現実を強く意識します。それが、いつの日にか必ず訪れる未来であるということを。

そんな中、元モーニング娘。6期メンバーであり、8代目リーダーを務めた道重さゆみさんが、2025年の夏のライブをもって、すべての芸能活動を終了することを発表したことは、記憶に新しいところです。

道重さゆみさんは、たとえばリリースイベントの現場や、グループ卒業後に復帰してからのソロのバスツアーのイベントなどでも、自分の思い描いた理想の形にこだわり、徹底した姿勢を貫く方でした。だからこそ、そんな道重さんが、ステージを降りた後に抱えていたという “不安感” については(ファンとしても)思い当たるところが、ないではありません。それは、単なる推測ではなく、彼女のファンへの想いの深さを知っているからこそ理解できるものかも知れません。イベントや企画に参加したファンならば、彼女がファンに向ける愛情や感謝の念を知っているがゆえに、道重さんが不安を抱え、精神的に追い詰められてしまうことについて、「もしかすると、それは自分たちファンのせいなのではないか」と思ってしまう部分もあるほどです。

かつて地上波のバラエティ番組を席巻するほどの活躍をみせた道重さんであれば、復帰後の活動領域も、かなり自由に選べる立場にあったと思われます。それでも、一部からは “これだからアップフロントは内向きだって言われるんだよ” と心無い(無理解な)声が出るほど、道重さんは、従来からのファンに向き合う活動を選んでくれました(記事末関連リンク参照)。

だからこそ、道重さんのメンタル的な不調について、繰り返し、私たちは「もしかすると、それは自分たちファンのせいなのではないか」と思ってしまう部分もあるほど。

もちろん、そのことについては、道重さんは、芸能活動終了の告知からしばらくして更新されたブログで、自分の不安はファンのせいではないということを明示しており、こうしたお互いの思いやりの循環もまた、道重さゆみさんが22年にわたって培ってきたファンとの関係を示して余りあります。

しかして、道重さんの引退告知からしばらく時間を経て思うことは、むしろ、何よりも “一切の芸能活動を終了する” ということを明らかにしてくれたこと、そのこと自体が、一番にファンに対して示してくれた愛情なのかも知れないな…ということです。

ずっとステージから客席に向かって笑顔を届けてくれることは、本当に嬉しいことです。私自身、可能な限りリソースと “寿命” が続く限り、彼女たちの笑顔を受け止めていきたいと心から願っています。しかし、それでも、年齢的に私が彼女たちよりもずっと年上である以上(場合によっては、彼女たちの父親よりも年上である可能性さえある以上)、”いつか必ず、彼女たちの笑顔を見届けることができなくなる日が来る” ことは、すでに述べた通り。

その意味で、道重さゆみさんは、区切りをつけてくれたのだと思います。

その意味で、道重さゆみさんは、ファンに “最期まで” ちゃんと見せてくれたと言えるのではないかと思うのです。

もちろん、道重さんが活動を終了するまでには、まだまだ時間もあるし、もちろん最後のライブツアーにも参加するつもりですから、当欄で道重さんについて発言するのも、これが最後ではないでしょう。しかし、この余裕のあるタイミングで、このことを言っておきたかった。

活動の “最期” を明示してくれたからこそ、アイドルであり、タレントであった道重さゆみの最初から最後までを、私たちは追うことができました。この事実こそが、道重さんがファンに向けて与えてくれた最大の贈り物だったのではないでしょうか。

もちろん、アイドルでもタレントでもなくなった私人としての道重さゆみさんの幸せを心から願いながらも、ファンとして、彼女が私たちに託してくれた思いをしっかりと受け止め、その証として、自らの気持ちにも区切りをつけるべきなのかもしれません。

ええ、もちろん、実際には、立ち上がれないほど寂しいのですけれどね。

(文=kogonil)

道重さゆみ SAYUMINGLANDOLL関連記事

道重さゆみ 再生までの軌跡

エンタメアライブでは、皆様からの投稿を募集しています。
詳しくはこちらを御覧ください『寄稿について

Sorry, the comment form is closed at this time.